251103 よい職場の雰囲気をつくる チームのパフォーマンスや職場の雰囲気を、あるシンプルな法則で改善できる、まさにそれを可能にするフレームワークである成功循環モデルについて説明をしていきます。これを知れば、明日からの仕事がきっと変わるはずです。一度は考えたことあるのではないでしょうか。どうやったら、職場の雰囲気がもっと良くなり、働きやすくなるかということです。これはリーダーだけではなく、チームの一員なら、誰でも抱え、なかなか答えの出ない悩みでもあります。この問いに答えを示す理論があります。それが成功循環モデルということになります。組織にポジティブな変化をもたらすための、シンプルで、しかも裏付けのある、とても効果的な考え方のフレームワークであります。このモデルを提唱したのは、組織開発の専門家、ダニエル・キムであります。この理論のポイントは、とてもシンプルで、成功しているチームにはある共通点があるということを挙げております。 その共通点は、4つの大事な質が関わってきます。まるで歯車みたいに、がっちり噛み合って、お互いをどんどん高め合っていき、好循環が生まれる状態になります。逆に言うと、多くの組織がうまくいってない状況においては、この歯車のどこかがかみ合っていない、悪循環に陥ってしまうという状況にあります。 その良いサイクル、好循環を生み出す4つの質は、まず一つ目は、全ての土台になるのが関係の質であります。お互いをよりリスペクトして、信頼し合えるかということです。 2番目が成功の質です。安心できる関係があるからこそ、生まれる、前向きで、良いアイデアが創出されます。 3番目は、そのアイデアをただの思いつきで終わらせないための行動の質です。 4番目は、これらが積み重なって生まれる、目に見える成果、結果の質です。 この4つの要素が、成功への鍵を握っていることになります。この4つの質が、バラバラにあるのではなく、順番があり、前の質が次の質を高めていくということになります。この流れ、方向性を理解することが、このモデルを使いこなすための第一歩となります。まず、良い人間関係を築くことです。これが、心理的な安全性や信頼の土台を作るということになります。そうすると、メンバーがビクビクしないで、安心してどんどん新しい良いアイデアを出せるということになります。そして思考の質が上がっていくことになります。良い考えが浮かんだら、それは自然と良い行動につながっていきます。そして質の高い行動を行えば、当然質の高い結果も生まれてきます。結果が出たら、チームのモチベーションも上がり、さらに人間関係も良くなっていきます。 これが無限に成長し続ける、好循環の出来上がりになります。このモデルが示す一番大事なことは、結局、一番の起点が、組織の中における人と人の関係の質であるということです。多くの組織において、どうしても結果を出さなければならない状況にあります。でも、良い結果というのは、良い人間関係という土壌があって初めて実る果実のようなものです。いきなり結果から入ろうとすると、このサイクルで考えると、うまく回ることにはなりません。 このサイクルは、経営者自身やマネージャーだけが回すものではありません。私たち一人一人、自分自身から始めることができるものです。皆さんの職場にもいると思います。いつも周りから信頼されて、良いアイデアをポンポン出して、率先して行動して、しっかりと結果を出す人。そういう人たちは、このモデルのことは知らなくても、感覚的にこの成功のサイクルを自分で回して、チーム全体の良い流れを作る中心人物になっていることが多いです。 あなた自身はどんなスタンスで仕事をしていますか。周りの人たちとの関係の質を良くするために、明日からできることは何だと思いますか。チームの思考の質を上げるために、会議でどんな一言が言えるでしょうか。そして、自分自身の行動の質をどうやって高めていきますか。全部、あなた自身の選択に関わっていくことになります。これらを難しく考える必要は全然ありません。この大きな成功のサイクルは、普段、周囲の人に声をかける、ちょっとした前向きな一言から始まることもあります。会議で出たアイデアに、「それいいね」と声をかけること、そこから始まることもあります。職場の未来を変える力は、どこか遠くにあるのではなく、今日、あなたが起こすたった一つの小さなポジティブな行動の中に、もうすでにあります。
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魅力ある会社づくり
251102 魅力ある会社づくり 魅力ある組織を作り、多くの人は働きがいがあって、引き寄せられるような組織を求めています。その魅力について説明していきます。人が引き寄せられるのは、魅力に引き寄せられるからであります。多くの人は、雰囲気の良さや、福利厚生など、思い浮かべるかもしれませんが、魅力は、単純に心地よさだけではなく、将来があり、自分は物心両面の豊かになれるという確信があり、この確信を持てるということがポイントであります。漠然とした期待感ではなく、かなり強い信頼感であり、ここでなら大丈夫である、成長できる、という手ごたえをえることになります。 将来への希望、それから、経済的、精神的な豊かさ、その両方が得られることが、魅力の源泉であります。 雰囲気の良さだけではなく、豊かになれると信じられることが大事であります。働く人の視点から見て、裁量が与えられることや、自分のしたいことができる、また自分の価値観に合っている、ということが大事になります。無心両面の心の豊かさ、つまり精神的な満足感や充実感、これを得るためには、まずは裁量が与えられるということが大事になります。仕事を任されるということ以上に、組織から信頼されるという証であり、自分の考えや判断を生かして、主体的に仕事を進める自由があるということです。これが、自己考慮感や,責任感につながっていきます。 自分の意思で、仕事に関わるということが大事です。これが不足してしまうと、どうしても「やらされ感」という気持ちが出てきてしまいます。「自分のしたいことができる」ということにおいて、仕事の内容そのものに対する興味や情熱、それから、それを通じた自己実現への欲求、これを満たしていくものになります。全ての業務が希望通りとはなかなかいくこともありませんが、自分の強みや関心を活かせる領域があり、挑戦したいと思える課題に取り組める機会が増していけば、仕事に対する前向きな気持ちが大きくなります。自分のエネルギーを仕事に注入して、そして自分の価値観に合っているか、感じるようになります。 組織が目指す方向や、大切にしている文化、あるいは働き方そのものが、個人にとって重要だと考えます。価値観の一致、例えば、社会への貢献をすごく強く意識している人が、短期的な利益だけを追求するような組織にいたら、たとえ待遇が良くても、どこかで違和感を持ち、満たされないという気持ちが感じるかもしれません。逆に、組織の理念や事業内容に深く共感できれば、それが困難を乗り越える支えになり、日々の業務に意味を見出す動機になったりします。経済的な条件だけではなく、自分の判断が尊重され、裁量、興味や関心に合った仕事ができて、さらに組織の目的や文化に共感できる価値観がそろって、初めて、精神的な豊かさ、ひいてはここで働き続けたいという魅力につながっていきます。 経営者の役割については、働く人の立場に立って考えたら、魅力は作られるものです。経営者は常に働く人のことを考えなければなりません。これは、努力目標ではなく、必須の責務として持たなければなりません。具体的な行動としては、付加価値の高い仕事を追求して、そこで得た利益を分配するということです。そして、労働分配率をいかに高くするか、本気で考える必要性があります。単に給料を上げるというだけではなく、会社が生み出した付加価値の全体のうち、どれだけの割合を人件費として従業員側に分配するかということ、その経営判断そのものを意識を高めることが大事であり、無心両面の豊かさへの直結する話になります。 これを怠る経営者は、働く人から見て、魅力がないと、見下されてしまいます。そして、重要であることは、考え方の順番です。経営的にも、精神的にも、豊かにしてあげたいという思いから、仕組みが生まれてくるものであります。経営者は、社員の幸福を真剣に願う強い意志、そして思いがあって、それが具体的な制度設計、公正な評価、適切な報酬、そして労働分配率の向上へといった仕組みにつながって考えていかなければなりません。口先だけの従業員第一ではなく、本気の思いが行動や制度に表れて、それで初めて人は信頼して確信を抱くことになります。従業員を豊かにすることが、短期的なコストよりは、長期的な組織の繁栄の基盤構築に至るまで、つながっていきます。従業員一人ひとりの物心両面の豊かさを追求すること自体が、結果として、組織全体の持続的な成長や発展の原動力になっていきます。 経営者の能力としては、会社がなぜ世の中に必要なのかを語る力、いわゆるプレゼンテーション能力も魅力に関わっていきます。リーダーシップの質そのものが組織の魅力を根幹から支えていきます。経営者自身の能力が高いこと、自分が稼いで、自分の才覚である程度見通しを、自分がどれくらい持てるかが必要であります。これは、事業を成功させて、利益を生み出して、それを分配するための大前提であります。単純に稼ぐだけではなく、自社が社会に対してどういう価値を提供しているのか。この組織が存在する意義があるのか。従業員と社会に向けて情熱を持って語れる力。これが従業員の共感や誇りを,醸成して、この会社で働くことの意味を与えていくことになります。 「事業を成功させる能力」と、その意義を語って共感を呼ぶ力、それに加えて、利益分配への意識、そして、それは経営者一人の話ではありません。幹部も含めて、優秀であることが、魅力的な会社ということも必要です。幹部も、経営者のビジョンを理解して、それを各部門で具体化できる。そういう有能なマネジメントチームの存在も不可欠であります。現場でのリーダーシップを発揮して、部下を育成して、公正な評価を行うことで、経営者の思いが組織の隅々まで浸透して、従業員の日常的な経験として形になっていきます。これらが一体となって初めて、組織全体の魅力、その確信が生まれるということになります。 社員にとって会社の将来性に向けて、自分自身の毎年毎年の能力開発を向上させて、自分のマインド、ノウハウ、スキルが高まって、それに合わせて報酬もポジションも,上がっていけるという見通しが持てるかどうかが大事になります。これは将来性があって、豊かになれるという確信につながります。現在の待遇や仕事内容に満足している、または十分でないと考えるだけではなく、この組織にいれば、自分は着実に成長できる、そして、その成長がしっかりと認められて、報酬や役職といった具体的な形で報われる、そういう明確な見通しが持てるということが大事になります。これが、人を惹きつけて、組織への貢献意欲を高め続けることに、とても大事になります。まさに見通しが立つという感覚です。自分の努力が、成長が将来につながっていくのかが見えないということでは、やはり不安になり、モチベーションも維持しにくいものです。キャリアパスが示されていることや、必要なスキルを習得する研修機会が提供されることや、定期的なフィードバックを通じて、自分の現在値と次のステップが明確になる。そのような具体的な仕組みが、この見通しを支えていくことになります。 年功序列のような固定的な制度ではなく、能力や成果に応じて、早期に責任ある立場に挑戦できる機会があることも、意欲的な人材にとって強い魅力につながります。それに見合った評価や待遇が連動しているという見通し。これもまた物心両面の豊かさに関わってきます。スキルや経験といった心の側面が向上して、それに伴って報酬や地位といった側面も向上していくということが期待されます。 これまで、裁量、価値観、経営者の責任と利益分配、リーダーシップ、その成長の見通しと様々な要素を見てきました。これらを統合して、魅力的な組織の全体像について、どのように言えるか、考えていきます。個々の要素が単独で存在するのではなく、相互に連携して、一つのシステムとして機能している状態、それが魅力的な組織であります。 精神的にも経済的にも報われる会社で働きたいと人は思っています。働く人は、給料だけとか、やりがいだけとか、要素を切り離して考えているわけではなく、仕事を通じて得られる経験の総和、つまりトータルな面で精神的にも、経済的にも満たされたいという思いを持ちます。その総合的な期待に応えることのできる組織,それが真の魅力的な組織だということです。 何事も、人にしてほしいと望むことを、他の人にも、そのようにしなさい。自分が人々にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたも他の人にそのようにしなさいという考え方を持って、いわゆる「黄金律」という考えを目指して、考え方を豊かにしていかなければなりません。自分が従業員だったら、または経営者だったら、どう扱われたいか、何に魅力を感じるのかという視点に立ち返って、組織を設計して運用していく、その立場に立って考えるという極めてシンプルで、普遍的な原則こそが、実は魅力的な組織を作り出す上で、確信になるというものであります。 思いを実現する経営者が従業員に対して、また、従業員同士が互いにこの原則を基本的に捉えることが、結果として組織全体の魅力、つまり、個人の無心両面で豊かになれるという確信を高めていくことになります。 魅力というのは、単なる「満足」だけではなく、将来にわたって物心両面で豊かになれるという強い確信であります。そしてその確信は、個人の裁量や価値観が尊重される環境で生み出し、成果が公正に評価され、価値が公平に分配される仕組み、特に労働分配率への意識であります。それから、自分の成長や、それが、報われる明確な見通し、そして何よりも、従業員の幸福を本気で願って、それを実現する能力と、意思を持ったリーダーシップ、これが相互に連携し、全体として生まれるものであります。 組織が利益の追求だけを目的とするのではなく、そこに関わるすべての人々、従業員はもちろん、お客様、取引先、地域社会も含めて、その人たちを物心両面で豊かにすることを第一の存在意義として捉え直し、自分自身の周りで具体的にどのような行動や仕組みの変化が考えられるか、考えていきます。
イノベーションは知財から始まる
251101 イノベーションは知財から始まる イノベーションをどのように生み出し、そしてどのように育てて、最終的に企業の持続的成長につなげていくか、そのために知的財産戦略やマネジメント、そして,リーダーシップのあり方について考えなければなりません。研究開発や事業戦略に関わる人たちはもちろん、新しい価値創造のプロセス自体に目指している人にとって必要な話となります。 企業の持続的成長のためには、絶対欠かせないものがイノベーションであります。既存事業を伸ばすだけではなく、新規事業を創出して、この2つが車の両輪のように必要であります。イノベーションには2種類あります。1つは、既存のものをより良く改善していく考えに近い連続的イノベーションであります。もう一つが、全く新しい分野を切り開くような非連続イノベーション、いわゆるブレイクスルー型であります。非連続イノベーションにおいては、初期の段階では、既存の枠組みや、常識からすると想定外の考えかもしれませんが、また組織の外にあるように見えることが多いかもしれません。また突拍子もないアイデアにも思えてしまうことが多いです。ここに落とし穴となるものが存在してしまいます。コンピテンシートラップという考えです。 過去の成功体験や自分たちの得意なことに固執してしまうあまり、その想定外や範囲外に見える新しい技術やビジネスモデルの可能性をうっかり見逃してしまいます。柔軟な思考で考え抜くことがとても重要になってきます。柔軟な思考で捉えた新しい発想を既存の知見や技術と結びつける新結合によりイノベーションを創出していきます。これを社会課題の解決の目的につなげて考えていくこと、これこそがイノベーションの本質であります。しかし、誕生したばかりのアイデンティティは非常に壊れやすいという側面もあります。周りの風当たりが強かったり、なかなか理解が得られなかったりすると簡単に消えてしまうというような、そのような儚さを持っています。その壊れやすいイノベーションの種を企業としていかに守って、育てて、そして方向づけていくのか。そこで企業の理念や,ビジョンが重要になってきます。私たちは何のために存在して、どこへ向かうとしているのかという最も根本的な問いかけが必要になってきます。 このビジョンは、一度決めたらそれで終わりではなく、状況に合わせて変化していくし、常に語り継がれていくべきものであります。それが組織全体の羅針盤になり、戦略を進めていくことになります。その戦略を実行して競争優位を築いていくために、強力な武器として登場するのが特許です。特許の本質の力は排他性にあります。他者を排除できるという点です。これを戦略に活用することで、競合に対する参入障壁を築いて、自社の事業領域を守ったり育てたりすることが可能になります。単に発明を守るだけでなく、企業の戦略的な意味合いが持つことになります。他社との違いをどう作るかという点において考えていきます。 次に、コアコンピタンスについて説明します。コアコンピタンスは、他者が簡単に真似できない自社ならではの特徴を表し、強みということです。これをはっきりさせることが、独自性を打ち出す鍵になります。そのために、自分たちの本当の得意分野、技術、コア技術、これが何かということを深く客観的に理解していくことが必要不可欠になります。そして、そのコアコンピタンスやイノベーションの根源には常にサイエンスがあるということを忘れてはなりません。 ここでいうサイエンスは、実験の科学という意味だけではなく、もっと広い意味で捉えます。社会課題の解決につながる本質的な探求や基礎研究のことを表しています。ここでの発見や発明が特許になって、それが事業競争力を生み出し、最終的に企業の持続的成長を支えていくという、そのようなつながりとなります。イノベーションの重要性、戦略的な位置づけをもとに、それを組織の中でどうやって生み出して活性化させていくのか。 ここで逆説的に考えていきます。イノベーションは管理すればするほど生まれにくくなるという性質があります。これはマネジメントの常識からすると相反するものであります。まさにそこがイノベーションマネジメントの,難しさであり、特徴でもあります。マネジメントのやり方は、アイデアを探求する研究フェーズと、製品化を目指していく開発フェーズでは異なります。特に初期の研究フェーズでは、トップダウンで管理するのではなく、多様なイノベーションの芽が自由に生まれて育つような環境づくりが必要になります。新しいアイデアを持っている人は、管理されたいわけではなく、自分のやりたいように試したいという内発的動機を持っています。 多くの研究開発組織が陥りがちな課題が、管理型マネージャーや支配的リーダーの存在がイノベーションのある意味大きな阻害要因になり得るということがあります。部下を自分の思った通りに動かそう、コントロールしようとする姿勢がかえって才能の目を摘むんでしまいます。その対極にあるのが、部下が自ら考え、行動するということを心から信頼するマネージャーの姿勢であります。部下の主体性、才能や才覚、能力を信じて任せるということです。そうすると、驚くことに、マネージャーが想定している以上の成果につながることが往々にしてあります。管理支配から、信頼・エンパワーメントへの転換こそが、イノベーションを解き放つ鍵であるということです。 信頼して任せるだけではなく、リーダーにはさらに能動的な役割も求められることになります。困難があっても諦めずにやり遂げる力、課題、障害を乗り越えて実現する力も必要であります。そこが,リーダーシップの求められるものになります。選択理論心理学に基づいて、人の行動は、罰や報酬みたいな外部から得るものではなく、内側の要求によって動機づけられるという視点で考えます。イノベーションを促進するリーダーの資質を上げていくために、まずリーダー自身のあり方や,姿勢に関わることについて、例えば、物事の本質を常に追求する探究心や本質への追求、それから困難な状況でもユーモアを忘れずに気分転換ができるしなやかさやおおらかさが大事になります。そして、懐が深く厳しいけれども温かいこと。高い基準を持ちながらも、人間的な温かみで人を包み込んで支える力も求められます。周囲の人、人の意欲を引き出して生かす、そういう人間力みたいなものが必要になります。 風土改革は、まずリーダー自身が変わることから始まります。本人が実践していかなければ、組織には響くものではありません。風土改革の目的は、組織全体で,ビジョンやミッションを共有して、社員一人一人のエネルギーの方向性を揃えるベクトルの一致を図ることであります。それを通じて、自律的に考えて行動できる自律人材を育成して、組織全体を活性化させていきます。そのために、リーダーの求められる具体的な行動について、例えば、コミュニケーションの面について、ビジョンを常に未来を語り続けるという情熱と客観性も必要になります。そして、一方的に話すのではなく、関係者の話を聞く耳を持って一緒に考えて、相手への興味と関心、共感を示し、同じ目線で議論することが大事になります。 さらに、メンバーの可能性を最大限に引き出すための行動として、まずは、行動してみようと挑戦を促して、失敗も許容する姿勢でやってみようという精神も大切になります。多様性を尊重して、人材にレッテルを貼ることなく、自分自身の言動が時には意図せず相手を傷つける可能性、つまりハラスメントにつながるかもしれないということを自覚して、常にチェックする謙虚な姿勢も大切になります。それぐらい自己認識が重要になるということであります。求められるリーダーシップ像については、いわゆる人を管理して統制するタイプのリーダーとは性質が異なります。むしろ、個々の可能性を信じて、人が自律的に活躍できるような環境や文化を作り出すことに焦点が当たることになります。 個々のリーダーの資質や行動はもちろん重要でありますが、それだけでは十分ではなく、組織全体の仕組み、いわばイノベーションを生み出すためのエコシステム(自然にバランスと調和をとれる環境)を構築することも不可欠であります。例えば、短期的な利益目標を示す経営指標と、長期的な視点が必要な研究開発、マネジメントをどう連携させるか、この関係性をしっかりと理解して適切に設計することが、持続的成長のために欠かせません。それから、創造性を刺激するカオス、つまりある程度の自由さや混沌とした状態と効率的な実行に必要な秩序、この両方のバランスを取るという高度なマネジメントも求められます。自由な発想を奨励しつつも、無秩序に陥らないための仕組みが必要になるということです。その土台となるのが、適切な組織風土の醸成となります。常に学び続けて、変化に適応していく学習する組織であり、実行や実践が伴います。人材育成に投資にも奨励して、そして組織の目標と個人の成長をしたいという欲求がうまく重なり合うように、関係性の整合性を取るコミュニケーションが日常的に行われていることが大切になります。これらがそろって初めてイノベーションが継続的に生まれていくということになります。 そして、目指すべき最終的な姿というのは、自律的な人材による活発な研究開発がダイナミックに推進される組織ということになります。活発な研究開発というのは、トップからの指示待ちに頼るのではなく、現場の多様な知見やアイデアが活発に議論されて、試されて、育てられていくことになります。そのような生命力あふれる組織像が大事になってきます。イノベーションは決して運任せや、偶然の産物ということではありません。まず、企業の理念やビジョンに根ざした戦略的な基盤があって、自社の差別化があり、そして人を管理するのではなく、信頼して可能性を引き出すマネージメントスタイルが必要であり、さらにそれを下支えする人間的な温かみを持って学習と挑戦を促すようなリーダーシップがあり、そうしたリーダーシップによって育まれた組織文化が土台として必要になります。
指示待ちと見られがちな社員をどのように育成していくか
251025 指示待ちと見られがちな社員をどのように育成していくか 言われたことしかできないという指示待ちと見られがちな社員をどのように育成していくか。どのようにすれば主体性や意欲を引き出して、共に成長していけるものか、その核心に迫ります。全体を通じて言える大事なことは、信頼関係を築き、本人のモチベーションを高め、そしてスキルを高めていく、この3つの要素です。そして、それらをつないでいく対話の重要性がなければなりません。何よりも、その根底にあるのがリスペクトです。つまり、一人一人、しっかりと尊重する姿勢、これが全ての土台ということになります。 では、なぜ指示待ちという状態が生まれてしまうのか。その背景をみていくと、静かな退職なんていう言葉もありますが、貢献意欲や成長意欲が低いということがあります。これは単純にスキルがないこと、やる気がないことの表面的な話だけではありません。例えば、学習性無力感という言葉があります。これは過去に自分のやったことが結果に結びつかなかった、そういう経験からどうせやっても無駄だったと諦めてしまう心理状態です。これが根にあると、なかなか自発性が生まれてきません。どうせ無駄だと思ってしまうから,指示されたこと以外はやろうと思えなくなってしまいます。それに加えてやはり信頼関係の欠如も大きいことがあります。上司や職場に対して安心感を持てないと、積極的に意見を言ったり何か新しいことに挑戦したりというのは難しいものがあります。 さらにモチベーションの問題があります。その仕事そのものに意味を見出せないことや、個人的な目標と結びついていないと感じてしまう場合、そしてスキルの不安、これも無視してはいけません。自信が持てないと成功体験が足りないことが行動をためらわせてしまいます。 信頼、意欲、自信、これらがとても大切になります。また、不公平な評価に対する不満や、あるいは組織の中での所属意識の希薄化、頑張っても報われないと感じてしまう,そしてここに自分の居場所がないなと感じてしまう。そうするとエネルギーがどうしても内向きになります。こういった要因が複合的に作用して指示待ちという状態を作り出してしまいます。 一筋縄ではいくものではありませんが、これらの複雑な状況を解きほぐすキーがあります。それが本書で繰り返し強調していくのが対話になります。対話は具体的にはどんな役割を果たすか、ただ話せばいいというものではありません。単なるおしゃべりや業務連絡、いわゆる報連相とは少し質が異なります。 対話の効果は大きく分けて4つほどあります。まず信頼関係の構築です。相手に寄り添って同じ目線で話を聞いて理解しようと努めます。その姿勢が安心感と信頼を生むことになります。これがすべての出発点であります。 次に要求の引き出し。これは一方的に指示するのではなく、問いかけを通じて相手の内面にある,考えや意欲そして意志を引き出す働きです。相手が「はい」や「いいえ」で終えてしまうような問いかけはクローズドクエッションと呼びます。これではなく相手に対してあなたはどう思う、どう考える、このような問いかけをしながら、どんなことを実現したいのか、相手の考えを引き出します。これをオープンクエスチョンと呼びます。これが相手の思考を深めて主体性を促すことになります。相手の中から答えを引き出すような問いかけが大事になります。 そして3つ目が,支援の提供です。対話を通じて相手が何に困っていてどんなサポートを必要としているのかこれを具体的に把握して、解決、支援や成長支援につなげていく。困っていることや課題を共有しやすい関係があってこそ適切な支援も可能になります。 そして最後に価値観の共有、仕事の意味や組織の目標を伝えて共感を促すことで、本人へのエンゲージメントを高めていく。このように、信頼関係を築いて、本音を引き出して、必要なサポートを提供して、仕事の意味を共有する。対話には、そのような多面的な力があります。 繰り返しになりますが、重要なことは、相手に共感して、相手の気持ちに寄り添うことです。それと、質問ではなく、発問により、相手の考えを引き出してあげること。これが、指示待ちからの脱却を促す質の高い対話となります。 共感と発問を意識した対話で、まずは信頼関係を築くこと、これが第一歩であります。その土台の上で、次はどうやって本人のモチベーション、つまり意志に火をつけるか、考えていきます。モチベーションの戦略も、いくつかあります。まずは中心になるのが目標設定の支援です。初めから高い意志を掲げて、やりたいことを求めるアプローチではありません。まずはやるべきことから目標を見つけてあげる。そしてできることを見つけてあげる。そして意志、やりたいことへと段階的にアプローチをしていきます。must can willへの段階的にアプローチしていきます。特にやりたいことが見つからない社員に対して有効であります。 まずは目の前のやるべきこと、マストを確実にこなして成功体験を積む中で、できること、CANを増やしていく。そのプロセスで自信がついて、結果的にやりたいことWillが見えてくるというものです。やりたいことが見えないから動けないではなく、まずできることを増やすことから始めると、これが実践的なアプローチになります。 本人の実現したい目標づくりを直接支援するというのはとても重要です。それには、現在を理解し、組織の目標と役割を理解して、個人で実現したいことを見つけて、キャリアビジョンを形成してあげる。そして、短期目標と長期目標を一緒に考えてあげる。対話を通じて、本人の価値観や目指す方向性を考えていきます。これらが目標設定において大事なことになります。 目標設定と並んで重要な戦略については、承認とロールモデルの存在も大きいです。日々の業務の中で頑張りやプロセス、どんな小さな成果でもいいので、具体的に発見して言葉で伝えてあげること。あなたのあの粘り強いデータ分析のおかげで、すごく助かったよみたいに、具体的なフィードバックが抽象的な褒め言葉よりもずっと響くことになります。具体的な行動を承認してあげるということです。 そして、身近な先輩や本人がこうなりたいと思えるような魅力的なロールモデルを示すことも、成長への意欲や将来への希望につながります。 さらに忘れてはいけないのが公平な評価制度です。結果だけではなく、努力やプロセスもしっかりと評価される。そういう透明性の高い仕組みが頑張りを支えます。最後に意味づけと所属意識です。自分の仕事がどう組織に貢献しているのかを伝えて、当事者意識を育むこと、それからここにいても,大丈夫だと感じられる心理的な安全性、気軽に会話が生まれる雰囲気づくり。時には、経営者自身の言葉でビジョンや思いを語ることの重要性も必要になります。モチベーションを引き出すためには、目標設定、承認、公平な評価、意味づけ、多角的なアプローチが必要になります。 意欲が高まっても、自分にはスキルがないから無理だと感じてしまうと、なかなか行動につながりません。そのスキル面の不安に対して、どのようにアプローチすれば良いか考えます。スキルの開発についても、やはり段階的なアプローチが有効であります。いきなり高度なスキルを求めるのではなく,ステップを踏むことが重要となります。まず1つ,できることをやりきる。今あるスキルを最大限活用することから始めます。次に,できることの幅を広げる。既存のスキルを応用して,少しずつ対応できる範囲を広げていきます。そして,できないスキルを訓練する。ここで初めて,新しいスキルの習得に挑戦するという流れになります。本人次第で、少しずつステップアップしていきます。その新しくできた習得したスキルを他の人に教えるということが大事になります。自分ができることをまず教えるようになること、そして新たに身につけたスキルも教えるようになるということもやるきにつながります。 自分の知識や経験が積極的に伝えていくことは重要性です。ここでも対話が必要になります。単にスキルを教えるのではなく、相手の勇気づけに関わり方が大切であります。なぜそのスキルが必要なのか身につけることで、どんな貢献ができるのか、感情や事実に属したストーリーで伝える。日々の努力への感謝や未来への期待。これを具体的に伝えることが、スキル習得への意欲を後押しすることになります。 ここまで、信頼関係、対話、目標設定、モチベーション向上、スキル支援、そのような要素を説明してきました。これらを統合して、実際に指示待ちからの行動変容を促すには、どのような手順で進めるのが効果的なのでしょうか。 これは、ビフォア、行動、イノベーションの4つのステップという具体的なフレームワークがあります。これは、行動につなげるための実践的な対話のフレームワークと言えます。まず、ステップ1で現状を客観視する。上司の思い込みだけでなく、しっかりと事実に基づいて、本人の強みや弱み、課題を冷静に把握します。ここでの対話が、後のステップの土台になります。 次にステップ2、会社の目標と部下の役割を確認して、組織全体の方向性の中で、本人がどんな役割を期待されているのかを改めて共有して認識を,すり合わせていきます。ここで仕事の意味づけにつながっていきます。組織と個人のベクトルを合わせるということです。 そしてステップ3、個人の目標や夢を確認する。これがまさにWillの引き出しにあたります。本人が仕事を通じてあるいはその先に何を望んでいるのか、どんなことを実現したいのか、これをじっくり対話を通じて共有します。 最後にステップ、4行動計画を策定する。これまでのステップを踏まえて、本人がこれならできそうだなとやってみたいと思えるような具体的なアクションプランを一方的に決めるのではなく、一緒に作っていく。最初は小さな成功体験を積めるようなスモールステップが良いです。一緒に計画を作る、そこがポイントになります。この4つのステップ全体を通じて根底に流れているのは、リスペクトする姿勢になります。一人一人の個性や価値観を尊重して可能性を信じて関わっていくことが、行動変容を促す上で最も重要なことになります。 指示待ちからの脱却は、特効薬があるわけではなく、本当に緻密なプロセスが必要になります。まず、リスペクトするという姿勢を土台にして、共感と発問を意識した対話で信頼関係を築く。その上で、本人の状況に合わせて、マスト、キャン、ウィルのステップも視野に入れながら目標を引き出して、具体的な承認や意味づけでモチベーションを高めて、同時に段階的なスキル支援で不安を取り除いて、本人が納得できる行動計画につなげていく。一つ一つのプロセスが有機的につながっていくことになります。このような関わり方については、特定の社員だけではなく、職場全体の活性化、一人一人が尊重されて自分の役割と成長を感じられる職場というのは、従業員のエンゲージメントを高めて、結果的に組織全体の持続的な成長をもたらします。
センスメイキング理論
251022 センスメイキング理論 センスメイキング理論について説明していきます。私たちが日々直面する少し捉えどころのないカオスの状況のような場面において自分が,なるほど、そういうことかと納得して進むべき道を見つけていきます。このセンスメイキングという考え方が変化の激しい今の時代に組織を動かすリーダーシップや私たち自身の意思決定に影響をしています。 私たちが普段世界をどのように認識しているか。私たちは情報をただ客観的に分析して理解をしていると 思いがちですが、実はそうではありません。むしろ目の前の出来事や情報に対して能動的にどういう意味だろうと問いかけながら自分なりにあるいは他の人との関係の中で意味を作り出している。このような主体的な意味づけのプロセス、それこそがセンスメイキングという考え方です。 この理論は、組織論学者カール・ワイクにより生み出されました。特に、組織という活動の中で、意味づけがいかに重要かということを強調しています。組織の行動や決定は、合理的な計算だけではなく、そこで働いている人たちが、その状況をどう解釈して納得できる物語を紡ぎ出せるかどうかに大きく関わっています。 単純に情報を処理するだけではなく、意味を生成していくということにもなります。その意味づけについて、具体的にはどのように行われているのか、このプロセスを説明していきます。 一つ目、レトロスペクティブ、つまり後付けで意味が作られるということです。大抵は理解をしてから行動すると思われがちですが、この直感に反することが起こっています。私たちは行動した後やあるいは出来事が一段落してからあれは一体何だったんだろうと振り返って過去の経験や断片的な情報これをつなぎ合わせて、初めて意味を理解するということが多いです。行動が先にあって意味は後からついていきます。未来を予測するときも過去を解釈することで現在をナビゲートしているということです。そういう側面が強いです。 アイデンティティとも深く関わってきます。自分は何者なのかこの組織は何を目指しているのかそのような自己認識が、どの情報にも注目してそれを意味付けることに影響を与えていきます。自分がどういう存在かによって見える世界やその解釈自体が変わってきてきます。 私たちが意味を作る上で手がかりに頼るという点がとても重要です。すべての情報を網羅的に分析するのではなく、目についたいくつかの断片的な情報を,手がかりとして、それを拾い上げて、そこから全体像を推測して、ストーリーを組み立てていきます。 例えば、ダイビングの例で話をします。初めてのダイビングで、最初は未知の海なんか怖いみたいな漠然とした認識があったとしても、インストラクターの丁寧な説明や、これが一つの手がかりとして、あるいは周りの経験者の人がすごくリラックスして楽しんでいる様子、これも手がかりになります。そういうのに触れることで、安全管理もしっかりしているし、実はこれはすごい!楽しい体験なんだ!と新しい意味づけが生まれてきます。これは限られた手がかりから状況に対する理解を作り上げていくというプロセスになります。 そして、その意味づけというのは、一人で完結するものではないということもあります。社会的ソーシャルです。私たちは、他の人との対話や周りの人、人の反応、あるいは共有される物語、そのようなものを通じて意味を確認したり、修正したり、あるいは時には全く新しい意味を作り上げたりすることもあります。個人の頭の中だけで生まれるのではなく、相互作用の中で形作られていくものになります。 そして、それらは継続的にプロセスの中で状況は常に変わっていき、新しい手がかりも出てきます。意味づけにおいても更新され続けていきます。そして、私たちは、環境にただ反応しているだけではなく、自らの行動によって環境そのものを形作りをしていきます。 例えば、あるチームがこのプロジェクトは、失敗するだろうという雰囲気に支配されているとします。その意味づけに基づいて行動する。そうすると、例えば努力を怠るとか、協力しないとか、そういうことをすれば、結果的に本当にプロジェクトは失敗してしまいます。逆に、これは挑戦だけどやり遂げられるはずだという意味づけをして行動すれば、成功の可能性が高まり、環境そのものが変わっていくかもしれません。 言動が意味を作って、意味が行動を導いて、それがまた環境を変えると、そのような循環があります。ある意味、自己成就予言みたいな、そういう側面もあるということです。 そして、妥当性の重視。正確さよりも大事なものがあります。私たちは、必ずしも100%客観的に正しい完璧な理解を求めているわけではないということです。むしろ手元にある手がかりから、少ない情報であっても考えていき、つじつまがあい、これなら進められそうと思っていけば、自分なりにもっともらしい納得感のあるストーリーを作り上げ、行動をしていきます。完璧な正しさよりも、腑に落ちるかどうか、納得が高まるかどうか、ということが大事です。 データや事実がとても重視される時代において、それでも納得感が得られることがとても重要になります。 もちろん、正確なことは必要ではありますが、決してすべてではありません。特に先が見えない複雑な状況においては、すべての情報を集めて完璧な分析をするということは不可能です。そういう時にこそ、人を動かすこと、完全に正しいかはわからないけれども、これでやってみようと思えるような共有された納得感のあるストーリーが必要になります。これが時として集団的な思い込みを生む危険性ももちろんはらんではいますが、同時に不確実性の中で行動を起こすための何らかの原動力にもなります。後付けでも手がかりをもとに社会的にそして納得感を重視してこれらの特徴が組み合わさって私たちの意味付けというストーリーが成り立ちます。 では、この考え方をもとに、組織を率いるリーダーにとってどんな意味を持つのか、「あのリーダーは意味の建築家だ」みたいな言葉もありますが、リーダーのとても重要な役割の一つに、変化や危機や曖昧な状況に直面した時に、組織のメンバーが今何が起こっているのだろうとか、私たちはどう進むべきなんだろうという理解をするための意味づけを提示して、方向づけすることが大切です。 単なる指揮命令系統というだけではなく、意味の方向づけが大事です。例えば、予期せぬ競合が出てきて、市場が混乱した時、リーダーが「これは脅威だ」「守りに入れ」とだけ発信したら、組織活動は萎縮してしまうかもしれません。しかし、同じ状況でも、これは我々の強みを見直して、新しい価値を創造するいい機会なんだと、具体的な根拠とかビジョンと一緒に語りかければ、メンバーの意識は変わって、混乱がエネルギーに創出の転換になり、活性化につながる可能性があります。 そのリーダーが提示する意味は絶対的に正しいものである必要はありません。妥当性重視の話につながります。もちろん、現実離れしたただの楽観論ではいけませんが、リーダーは必ずしも完璧な未来を予測できるわけではありません。重要なのは不確実な中でも集められる手がかりをもとにメンバーがなるほどそのストーリーなら信じられるとか、それだったら自分も貢献できそうだとか、納得できるような一貫性のあるもっともらしいストーリーを語れるかどうかが重要です。 ストーリーに沿った行動を自ら示せるかどうか、とても大事です。これは、リーダーシップの本質に関わる能力にもなります。センスメイキングが社会的なプロセスであるということを考えると、リーダーが一方的に意味を与えるだけでは、不十分でもあります。優れたリーダーは、トップダウンで意味を押し付けるのではなく、メンバーとの対話を通じて、多様な視点や経験、重要な手がかりになるので、それを引き出しながら、共に納得できる意味を共創して、共に作り上げていこうとします。例えば、ワークショップを開いたり、メンバー自身の言葉で経験やアイデアを語ってもらったり、こういうプロセスを通じて、新しい意味づけが組織全体に浸透しやすくなります。 共に作り上げるということは、最近注目されているサーバントリーダーシップやアダプティブリーダーシップで示すようなメンバーの主体性や学習を,重視するという考え方にも通じます。強いビジョンを掲げて組織を引っ張っていくトランスフォーメーショナルリーダーシップもそのビジョンがメンバーにとって意味のある物語として受け入れられないと力を発揮できないことになります。 リーダーが語るビジョンが、メンバーのアイデンティティや価値観と共鳴して、未来を実現したいという納得感となり、それを生み出すからこそ、人々は動かされる。だからセンスメイキングの視点というのはいろいろなリーダーシップの根底にある意味の力を浮き彫りにしていきます。リーダーシップとセンスメイキングは深く結びついていきます。 具体的に、組織変革をしたいとき、新しい方向へ進みたいという場面で、この理論を活かしていきます。変革というのは、単にルールや制度を変えるだけではなく、そこで働く人、常識的な考え、当たり前みたいな根深い意味づけを変えるプロセスにあります。特に変化への抵抗が強い場合は、その抵抗の根源にある意味づけを変えなければ、前に進めません。抵抗の背景にある意味付けを探るには、まず、現状の意味付けを丁寧に把握することから始めます。なぜ変化が必要だと感じられないのか、今のやり方にどんな意味や価値を見出しているのか、何を失うことを恐れているのか、あるいは、もっと日々の対話を通じて現状維持の根っこにあるある意味の世界をまず理解します。 次に、変革の必要性や目指す方向について、新しい意味づけを促すような手がかりを提供していき、市場の変化や顧客の声、成功事例、そういう客観的な情報を用いて、我々にとって何を意味するのか、そういう物語を,提示していきます。それを一方的に伝えるのではなく、共に価値を創る、競争するプロセスがとても重要になります。新しいビジョンや変革の意義について、メンバー自身が考えて、語り合って、自分たちの言葉で意味を作り出していく。そういう場を設けます。普段から対話を通じて変革によって実現したい未来を具体的にイメージして共有するのも効果的です。 さらに行動を促し、新しい意味づけに基づいて、まずは小さくてもいいから具体的な行動を試してみて、例えば新しいツールをちょっと使ってみるとか、新しいプロセスを試行してみるとか、その行動がもしポジティブな結果、つまり新しい手がかりを生めば、それがまた新しい意味づけを強化して、さらに次の行動へつながっていきます。語り掛け、行動への意味づけ、行動の実践の良い循環を生み出すのが狙いです。小さな成功体験を積み重ねて、それを組織全体で共有することで、変革への確信を高めていきます。 例えば、製造業のデジタル化の事例は、まさにプロセスの意味付けを表しています。現場のベテラン層が、当初はデジタル技術は現場を知らないものの押し付けみたいな感じでいた。これが現状の意味付けです。しかし、リーダーが一方的に導入を進めるのではなく、現場の声に耳を傾けて「デジタル化」というのは、長年培ってきた知恵や経験を時代に合わせてさらに生かすための「武器」という理解を持って、そういう新しい意味づけを体験を通じて共創していき、新しい価値を作り上げていきます。その結果、自分たちの仕事をより良くするための道具というふうに捉えられ、現場が主体的にデジタルツールを活用し始めます。これは,競争とその行動による意味の変化が見事に組み合わさった例であります。 働き方改革により、長時間労働イコール美徳みたいな古い意味づけに対して、効率的な働き方こそが顧客価値と従業員の幸福を最大化にするという新しい意味づけで、上書きしたことになります。 これらの事例からいえることは、センスメイキングを活用した組織変革には、共感的なリーダーシップつまり、メンバーの視点や感情を理解しようとする姿勢が,まず不可欠だということです。そして、抽象的な理念だけではなく、具体的な物語として変革の意義を語ります。さらに小さな成功を積み重ねて、それを共有して変革へのもっともらしいポテンシャルを高めて、そして何よりも一度の説明では終わらせずに継続的な対話を通じて意味を更新し続ける、そういう粘り強さが必要になります。 センスメイキング理論を通じて、私たちが無意識のうちにやっている意味づけという営みが、いかに能動的で、社会的で、そして組織やリーダーシップのあり方と密接に結びついているのか、改めて実感できます。完璧な情報や分析を求めるのも大事ではありますが、それ以上に私たちを動かしているのは何かと思える納得感や共有されたストーリーであります。 そして重要なのは、このセンスメイキングは、組織やリーダーだけの特別な話ではないということです。日々、ニュースを見たり、人と話したり、仕事を進めたりする中で、絶えず行っていることでもあります。次から次へと入ってくる情報や、目の前で起こる出来事に対して、これはどういうことなのだろうか自分にとってどんな意味があるのだろうか解釈して、自分なりの理解を形作っていきます。そのプロセスそのものがセンスメイキングとなります。私たち一人一人の日常の中にこの理論は生きています。 最近、あなたの周りでこれは一体どう捉えていいのだろうか少し戸惑ったり、なんか先が見えないなと感じてしまったり、思い出してみてください。その時、あなたはその状況をどのように理解しようとしましたか。どんな情報や誰かの言葉、あるいは過去の経験などで手がかりにしましたか。そしてその結果、たどり着いた意味づけは、客観的な正確さを目指したものであったものか。それとも自分なりに腑に落ちること、つまり納得感を重視したものであったものか。もし曖昧な状況に遭遇したときに、センスメイキングの視点で、自分は今、後から意味づけしようとしているとか、どんな手がかりに注目しているだろうか、あるいは無意識にもっともらしいストーリーを探しているのかもしれない、みたいなことを少し意識してみるだけで、状況の捉え方や次に取るべき行動が、これまでとは違って見えてくることでしょう。
成果が上がらない人の思考パターン
251018 成果が上がらない人の思考パターン 成果が上がらない人の思考パターンにふれて、収入が伸び悩む人とそうでない人の考え方の違いと、その核心にある構造について説明していきます。仕事への取り組み方一つで、将来的な収入に影響します。仕事に対する姿勢や動機づけを軸に、いくつかの思考パターンを対比させて、その因果関係を説明していきます。特に、プラスの仕事をするか、仕事に何を求めるか、報酬と行動の関係性、仕事の根幹にある動機づけ。このような要素が収入の伸び、あるいは停滞に結びついていくという見解であります。 一つ目は、これは仕事の範囲に対する姿勢です。思考貧乏または思考不全とも言えます。自分に与えられた仕事の範囲で、できる限りそれを超えないようにと、仕事をしないように立ち回る人、このように定義します。この思考貧乏、または思考不全の状態にある人というのは、常にどうすれば余計な仕事を引き受けずに済むかと考えてしまいます。そして、どうすれば自分の責任の範囲を限定できるかのようなことを考えて行動する傾向があります。与えられたタスクをこなすというのは、前提でありますが、そこから一歩踏み出すことに対して抵抗感が強く出てしまいます。 この思考貧乏的な立ち回りというのが、やがて個人の成長や収入の構造を妨げることになってしまいます。仕事を与えられた範囲のことしかやらない人材になってしまうと、組織全体から見ると代替えが可能、つまり替えが利く存在になりやすいという点があります。常に自分の器を守ろうとする姿勢というのは、結局、組織への貢献度を自分で限定をしてしまいます。その結果として、この人でないとダメだという存在にはなりにくくなってしまいます。 これに対して、まず与えられた仕事を迅速かつ的確に終わらせた上で、他に何か自分が貢献できることはないのか、もっと責任のある仕事を任せてほしいみたいに自分から進んで、より大きな責任や役割を求めていく。そういう姿勢があります。つまり、その自分の役割を固定的には捉えないで、常に組織全体の目標達成にどう貢献できるかという視点を持つことが大事になります。その積極性がより多くの責任のある仕事を引き寄せて、それをこなすことでスキルや経験値が上がり、結果的に組織内での評価、ひいては昇進や昇給につながっていく、こういう構造となります。理想の自分をどう持てるかが大事にもなります。これも積極的な姿勢や自己成長への意欲、そこにつながります。 自分の役割を職務定義書みたいなものに書かれた範囲だけをこなすだけでなく、常に組織全体のニーズを考えて、半歩先んじて行動を起こせる人材、そういう人こそが、結果的に個人の成長と報酬の両方を手にすることができるようになります。 二つ目は、働く動機と自己実現に関するものです。収入が上がらない人の思考として、仕事は生活のためと割り切り、給料分だけ働けば十分みたいな考え方をしてしまいます。そういう考え方は、仕事はあくまでもその経済的な安定を得るための手段であり、自己実現や生きがいというのは、仕事以外のプライベートな時間で追求するものだという価値観があったりします。これもある意味では、すごく現実的な捉え方とも言えることにもなりますが。仕事イコール生活の糧という考えとなってしまうものとは、全く対照的なものが、仕事即人生という仕事を通じて自己実現を果たすという価値観をかなり強く持っていることです。仕事そのものが自己表現の場であり、挑戦でもあります。そこで何かを成し遂げること自体に深い喜びや意義を獲得する、そういう生き方です。 遊びの時間も多少は犠牲になるくらいに仕事に打ち込んだ時期もあります。何かを得るためには何かを差し出さなければなりません。それが、いわゆる。代価の先払いという考えにつながっていきます。代価の先払いは、大きな成功や自己実現というものを得るためには、多少なプライベートの時間も削ってでも代価を先払ったんだと、そういう解釈です。仕事へのコミットメントの度合いが根本的に違うということです。一方では、仕事は生活を支えるための必要最低限のことと捉えて、プライベートの充実を優先する。その一方で、仕事そのものに情熱を注ぎ込んで、自己成長や社会への貢献を通じて、人生の充実感を得ようとする。前者は、仕事そのものが、自分の願望のど真ん中にない状態。後者は、まさに仕事こそが願望のど真ん中にある状態であります。この動機の違いが、結果的に仕事の質や結果、達成、長期的な収入の格差につながっていくということになります。 どっちが良いとか悪いとか、そういう価値判断をしているわけではないのですが、どちらのスタンスが成功や収入構造につながりやすいかという、そのような観点からの分析となります。もちろん、プライベートも大事にしないといけないのですが、仕事を通じて大きな成果と高い報酬を目指すために、それ相応のコミットメント、つまり時間やエネルギーの投入が必要になってきます。 三つ目は、行動と報酬の関係性。これは報酬が保証されない限り、行動に移さないタイプと言えます。このような人たちは、損得勘定を第一に行動すると捉えてしまいます。この考え方がどうしても収入の伸び悩みにつながります。この対比として、先義公利の考え方があります。これはまず義が先に来て、つまり人として正しいこと、価値ある貢献を先に行えば、義つまり利益や報酬は、後から自然とついてくるという考えです。東洋学的な思想であります。この考え方を、自分のビジネスやキャリア形成に当てはめて、成功の本質は代価の先払いにあるということになります。つまり、将来的なリターンが不確実であっても価値があると信じることに対して、先に自分の時間や労力、知恵といった代価を投資できるかどうか、これが決定的に重要となります。目先の損得勘定にとらわれず、長期的な視点で価値提供を優先できるかどうか、ある種のリスクテイクの姿勢が問われるということになります。この代価の先払いを実践できる人には、積極的な姿勢になり、常に期待される意欲あり、を与えられ、半歩先を行くような仕事をするような人に自然と多くの仕事やチャンスが集まってきます。なぜなら、そういう行動を取れる人は周りからの信頼を生みますし、この人に任せれば期待以上のことをしてくれるだろうという評価につながります。 逆に、これだけの報酬が保証だったらやります、またはやりませんというスタンスの人は、そういう成長の機会や、より大きな責任を伴うような仕事を自分から遠ざけてしまうことになります。やがて、代価の先払いができるタイプにどんどん仕事を取られてしまいます。保障がないことに対するそのリスク許容度の違いが、長期的に見て、経験やスキルの蓄積、それから人脈形成みたいな面で大きな差を生み出す可能性があるということです。 四つ目は、仕事の質、その根源にある動機づけについてです。収入が上がらない人の仕事ぶりを指して、やっつけ仕事や深みのない仕事みたいな言葉を使っています。こうした仕事になってしまう背景として、そもそも知恵がなかったり、言われたこと以上の提案が出てこないみたいな能力的な側面。それだけではありません。単なるスキルや経験の問題だけではなく、根本的な動機の違いにあります。決定的な違いとしては、相手に喜んでもらいたいという純粋な動機があるかどうか、その点なんです。この貢献意欲や利他の心を強い人は、いい加減な仕事はできなくなり、期待以上のものを提供したいというプロフェッショナルとしてのプライドを持つようになります。仕事は単なるお金のためだけじゃなく、仕事そのものの質を追求すること自体が目的化していくという考えになります。 相手の満足や喜び、自分自身の達成感、喜びとして感じられるかどうか。これが仕事の質を左右する根本的な要素となり、願望のど真ん中に相手を喜ばせることが入っているかどうか。この動機が存在すると、仕事は単なる労働の対価としての糧を得るための手段だけではなく、仕事そのものが含まれる精神的な喜びや報酬を発見するプロセスへと消化していく。だからこそ、単なる作業としてやっつけ仕事ではなく、どうすればもっと相手に価値を提供できるのか、どうすればもっと喜んでもらえるのかという観点から、自発的に知恵を絞って具体的な提案を生み出すことができるようになります。このような内発的な動機が質の高い仕事、そして結果として評価や報酬の向上につながる、そういう好循環を生み出していきます。 以上、4つの対比の説明となりますが、全体を通してとても明確で一貫したメッセージがあります。受け身で自分の殻を守って、目先の損得勘定や保証を重視する思考。これに対して、能動的で常にプラスアルファの貢献を目指して、自己実現を仕事に求めて、代価の先払いを嫌からずに相手への貢献、意欲を強く持つ思考は、この後者の思考こそが、持続的な成果をあげることには不可欠になります。
育成を任せてはいけない人の特徴
251017 育成を任せてはいけない人の特徴 あなたのチームや組織の中で、この人に後輩や部下の育成を任せて大丈夫かなという人物。その見抜き方について考えていきます。リーダーシップやマネジメントで陥りやすい罠や注意点を説明していきます。この分析をつうじて、人を見る目、特にその人を育てる立場の人を見極める解像度を少しでも上げていくことになります。自分自身のマネジメントスタイルを振り返り、きっかけになります。多くの組織が今直面するであろう短期的な成果と、それから長期的な人材育成について、このジレンマが発生します。マネジメントの目的について整理し、その本質を見失いがちになるマネジメントとその構造について追及していきます。 目先の目標達成を追い求めるあまりに、組織の根幹であるはずの人、これを育成していく、育てる視点がいとも簡単に抜け落ちてしまうというメカニズムになります。経営マネジメントにおいて、予算達成はもちろん大事ではありますが、でも、それをどうやって達成するのか、そのプロセスこそが問われるべきであります。 マネジメントの本来の意味合いというのは、人を介して仕事を行う技術です。つまり、リーダー自身の力だけで成果を出すのではなく、メンバー一人一人が持っている能力を引き出して、彼らが目標達成できるように支援するので、結果としてチーム全体の、そして組織全体の目標達成につなげていく。これが理想であり、持続可能な組織の姿と言えます。現実的には、自分の目標達成や、あるいは自分の評価のためだったら手段を選ばない、そういうタイプの人も中にはいます。そうなると、メンバーはまるでコマ扱いみたいに目標達成のためだけの存在として扱われてしまいます。これはメンバーにとってかなりしんどい状況となります。そして非常にこれは危険な兆候です。短期的にはそのリーダーは勝ったように見えるかもしれません。数字は達成されて評価もされるかもしれない。しかし、その裏側で何が起きているかというと、メンバーは成功体験を得られないし、スキルも伸び悩むし、ただ疲弊していく状況になります。これは組織全体の活力を確実に削られていきます。表面的な勝利の代償というのが見えないところで、組織の将来を蝕んでいく。 可能性があるわけです。その手段を選ばないやり方としては、外的にコントロールしようとする手法であげます。批判する、責める、文句を言う、ガミガミ指摘する、脅す、罰を与える、目先の褒美で釣る。この外的コントロールという概念自体を少し整理します。相手の行動を本人の内側から湧き出る意欲や納得感ではなく、外からの圧力、つまりアメとムチです。バツとか報酬によってコントロールしようとするアプローチ全般を指します。リストにあるような行為は、その典型的と言えます。内発的な動機ではなく、外からの力で動かそうとすることになります。これが厄介なのは、短期的には効果があるように見えてしまうということです。プレッシャーをかければ、一時的に行動は変わるかもしれません。しかし、それはあくまでも表面的なものに過ぎない。その裏では、メンバーの自発性や主体性、そして何よりもリーダーに対する信頼感、 これが根本から破壊されていく可能性があります。恐怖や義務感で動く組織というのは、創造性や自立的な成長とは無縁になってしまいます。 世間を噂されるような企業の不祥事も突き詰めていくと、こういう本質を見失った勝利至上主義や短期的な利益至上主義が根本にあるケースが多いということになります。本来、教育で目指すべき人格形成の本質よりも、目先の試験の点数や試合の勝ち負けにこだわってしまいます。勝てば官軍とか、利益こそ正義みたいな考え方で、組織の隅々までにこう浸透してしまう。そうなると、目標達成のためなら、少しくらいルールを曲げても良いとか、人を傷つけても構わないといった、ちょっと歪んだ正義感みたいなものが生まれる土壌になりかねません。本来、組織を支える基盤であるべき人や信頼関係といった価値が二の次にされてしまいます。これは組織が持続的に成長していく上で非常に大きなリスク要因となってしまいます。こういう手段を選ばないタイプのリーダーは、たとえ自分のチーム、メンバーが目標を未達だとしても、他の部署から応援を引っ張ってきたりとか、外部から大きな案件を獲得したりして、帳尻を合わせるのがとてもうまい振る舞いをします。ここが評価の難しいポイントでありますが、同時にその本質を見返る上でとても重要な点でもあります。 表面的には数字は出ている、目標は達成しているように見えて、一見するとできるリーダーだと評価されてしまうかもしれません。しかし、その内面を、中身をよく見ていくと、チームメンバーは誰一人として成長していないとか、達成感を味わえていないというケースがあるわけです。その数字という結果だけを見ていては、そのリーダーが本当に実力を高めていたのか、それとも、ただつじつま合わせが上手いだけなのか、見誤ってしまう可能性があるということになります。メンバーは、自分たちの力で目標を達成したという実感を得られないし、成功体験を積む機会も奪われてしまいます。これは短期的な数字達成の裏で、組織の未来を担う人材が育っていないという、非常に深刻な事態を意味しています。長期的に見れば、これは組織力の確実な低下につながります。 見せかけの成功に騙されてはいけないという警鐘でもあります。 一方で、本当に育成力のある良い指導者というのはどういうアプローチをとるかというと、たとえ厳しさがあったとしても、メンバー一人一人の状況や課題に真剣に向き合って、どうすれば目標達成できるのか。その具体的な方法やプロセスを一緒に考え抜いて、最後まで諦めずに粘り強く導いていきます。優れた指導者は、外的コントロールのような、ある意味安易な手法に頼ることはありません。なぜなら、彼らはマネジメントの本質というのをしっかりと理解しているからです。つまり、メンバー一人一人が持っている可能性を信じて、彼らの成長を促すことこそが、結果としてチーム全体の持続的な成長につながるということ。この人を育てるという視点、そしてそれを実践する粘り強さ、これを持っているかどうかが、育成を任せられるに値する人物かどうかの決定的な分かれ目になると思います。 さらに、勝ち負けの思考に偏りすぎている人も要注意であります。物事を捉える視野の狭さや時間軸の短さ、目の前の勝敗とか、自分の評価、短期的な成果、これに意識が向きすぎるあまり、より長期的で本質的な視点、それから組織全体を俯瞰するような客観的な視点が欠けている状態と言えます。例えば、自分がいる間だけ良ければいいとか、自分のチームさえ勝てれば他はどうでもいいみたいな、そういう発想につながりやすいです。自分の勝利が最優先で、組織全体の長期的な利益に、もしかしたら反するかもしれないことに気づかない。あるいは気にしないということです。 理念や経営という考え方と合わせて考えます。本当に強い組織というのは、特定のカリスマリーダーの手腕だけに依存しているわけではなく、その組織が大切にしている理念や価値観が深く浸透していて、それがメンバーの行動指針になっています。だから、たとえリーダーが変わったとしても、組織の根幹は揺るがないし、理念に基づいて自律的に判断できる、次のリーダーが自然と育ってくる、そういう土壌があるわけです。つまり、個人の力で合意に引っ張っていくような組織というのは、その人がいなくなると脆いかもしれないけど、理念や価値観がしっかりと共有されている組織は持続性があり、この視点というのは、組織のトップ、つまり経営層の姿勢にも直結していきます。また、トップが利益至上主義、短期的な成果主義に偏っていて、とにかく結果を出せというメッセージばかり発信していたらどうなるか。現場では疲弊する社員が増え、離職が相次ぎ、メンタルヘルスの問題が深刻化していくかもしれません。しかし、トップは利益が出ている限り、そうした現場の悲鳴に本気で向き合おうとしない、あるいは問題の本質から目をそらしてしまうかもしれない。それは組織として末期的な状況になりかねません。 逆に社員一人一人の幸福や成長を本気で願っているリーダーというのは、現場で起きている問題から目を背けないわけです。なぜ離職が続くのか、なぜメンタル不調者が出るのか、その根本原因を探って真摯に向き合って改善しようと努力する、そうしたその姿勢というのは必ず社員に伝わります。だからこそ数字さえ達成できれば、プロセスや人はどうでもいいという考え方は結局のところ本質的ではなく組織の長期的に蝕み、いつか必ず限界が訪れてきてしまいます。 スペシャリストは自分のパフォーマンスに焦点を当てがちになります。これは、優秀なプレイヤーが必ずしも良い指導者になるとは限らないということです。自分がプレイヤーとして高い成果を出す能力と、他者を通じて、あるいはチームとして成果を出して、さらにメンバーを育成していくという能力は、全く別のスキルが求められるようになります。もちろん、プレイヤーとして経験や、専門知識というのは指導の土台にはなりますけど、それだけでは不十分であり、むしろ過去の成功体験が逆に指導の足かせになることすらあります。自分ができたんだからお前もできるはずだとか、なんでこんな簡単なことがわからないんだみたいなそういう発想に陥りやすいということです。自分のやり方や価値観を一方的に押し付けてしまったり、メンバーがつまずいているポイントに共感できなかったりします。 経営者やリーダーとして真に成功するためには、単に自分の専門分野のスペシャリストだけではなく、人を育てる、事業を育てるという、そういう領域のスペシャリストになる必要があります。育成のプロとしての視点が、スキルが必要になってきます。個々のメンバーの特性を見抜いて、それぞれに合った関わり方や指導方法を選択して、彼らの内発的な動機づけを引き出して、長期的な視点で成長を支援していく、そういう能力です。自分のパフォーマンスを最大化することから、チームやメンバーのパフォーマンスを最大化することへ意識とスキルの転換が求められます。 後輩や部下の育成を任せるべきでない人物の特徴として、重要なポイントを浮かびあげてきました。1つ目は、目的なら手段を選ばず、メンバーを駒のように扱う傾向があります。2つ目は、相手を外からの力でコントロールしようとする、いわゆる外的コントロールです。例えば、批判、脅し、アメとムチなど上がります。3つ目は、短期的な成果ばかりを追い求めて人の成長という長期的な視点が欠けてしまいます。4つ目は、自分の勝ち負けに固執して組織全体の利益や他者への配慮が足りない。5つ目は、プレイヤーとしては優秀かもしれないけれども、自身のパフォーマンスにしか関心がなく、人を育てるという役割の意識やスキルが不足してしまいます。 これらの点は、誰かに育成を任せるかどうか判断する際、あるいは自分自身のリーダーシップを客観的に見つめ直す上で、非常に重要なチェック項目になります。単なる個人の性格や能力の問題として片付けるのではなく、こうしたリーダーシップが組織内で容認されたり、あるいはその短期的な成果によって評価されたりするような状況というのは、組織全体の健全性や持続可能性を脅かす非常に深刻な問題になります。人を育てられない、あるいは人を潰してしまうような組織に明るい未来がないと言っても過言ではありません。より大きな視点で見れば、日々の業務や短期的な目標達成のプレッシャーがいかに強くても、その中でいかに人を育てるかという、より本質的で長期的な視点を持ち続けて実践できるか、これこそが変化の激しい現代において、リーダーに求められる最も重要な資質の一つと言えます。
未来を創る人材の育成
251014 未来を創る人材の育成 企業が変化の激しい時代を乗り越え、自ら未来を切り開いていくためには、人材という資源をいかに戦略的に捉え、育成していくかが重要です。将来に向け、どのようにリーダーを育て、未来を創る人材を育成していくか、企業の人材育成について説明します。これは単なるスキル研修のレベルにとどまらず、新しい価値観を生み出す経営マインドを持った人材をいかに育てるかという鍵となる話です。未来を担うリーダーに必要な資質は何か、そして企業はどうすればそのような人材を効果的に育成できるのかを考えていきます。政府も2025年2月に「中堅企業の成長ビジョン」を策定し、人材育成のポイントについて言及するなど、社会的な関心も高まっています。 中堅企業は、日本経済の活性化という点において非常に重要な位置づけであり、大きな役割を期待されています。その成長のエンジンとなるのが「人」であり、特に「事業センス」を身につけることが一つのキーワードとなります。 まず、基本的な考え方として、なぜ今これほどまでに未来を創る人材の育成が重要視されているのでしょうか。中堅企業は、成長のポテンシャルや変化への柔軟性を持つことから、政府も投資拡大や雇用創出、地域経済への貢献といった役割を期待しています。社会からの期待が「外的要因」だとすれば、企業自身の「内的要因」も存在します。予測が難しい時代において、現状維持は衰退を意味するからです。企業が持続的に成長し、未来の事業を築いていくためには、既存事業を守るだけでなく、新しい価値を積極的に生み出せる人材が不可欠です。未来は待っているだけでは来ません。自ら創り出さなければならないのです。 ここで事業センスがキーを握るということです。この事業センスというのは、顧客のニーズと自社の強みとの接点をつかみ、事業を開発して伸ばしていく感性と捉えることができます。単に市場を読むだけでなく、自社のリソースをしっかりと把握して、それをどのように活用すれば顧客価値につながるのかを考えて、具体的な事業を進めてまいります。そのような一連のプロセスを含めて活動してまいります。これは単なるスキルというよりは、総合的な判断力、統合的な能力にあたります。分析力や知識ももちろん必要になりますが、それらを統合してビジネスチャンスを見出し、実行に移していくという嗅覚や構想力といったものが、事業創出の本質にあります。未来を創る人材には、まさにこの感性が中核的な能力として求められるということになります。既存の延長線上ではない何か新しい可能性を発見して実現していくという力です。全体を見て判断する力も必要になります。 これは単に優秀であること以上に、未来を創るという主体性と、新しい価値を生み出す事業センス、この2つが今の時代に求められるリーダー像の核心部分でもあります。では、その未来を創る経営人材には、具体的にどのような資質が必要であるかを説明していきます。まず挙げるのが未来志向、洞察力です。目の前の課題に対応するだけでなく、数年先あるいは長期的な視点で世の中や事業の環境の変化を読み解いて、自社が進むべき方向性を見定める力とも言えます。先を見通すことができなければなりません。だからこそ重要になるのが、戦略的思考と意思決定です。未来への洞察に基づいて、具体的な目標を設定して、それを達成するための道筋を描いて、必要なリソースを配分して、時には難しい決断を下していく、そのような力です。未来を見て、具体的な行動計画に落とし込んで決断する、この2つは表裏一体の関係です。 自社の内部だけでなく、社外に常にアンテナを張ることが大切です。つまり、自分の会社の論理や常識だけにとらわれることなく、広く社会や市場の動向、技術の発展、競合の動きに目を向けて、そこから得た情報を自社の戦略に生かす、そういう視点が不可欠です。内向き思考ではなく、視野の広さが戦略の質を左右します。社外の知見やネットワークを取り込んで活用する力も含まれます。 そしてもう一つ、とても重要な資質として挙げるのが影響力です。リーダーシップ論などでよく聞く言葉ではありますが、自らの言動とリーダーシップで周囲を巻き込み、他者を突き動かす影響力が必要になります。これは、役職や権限に頼って人を動かすトップダウン型のリーダーシップとは少し異なります。むしろ、自らのビジョンや情熱、考え方に対する共感を呼び起こして、周りの人々が自発的に協力したいと思わせ、リーダーについていきたいと思えるような、そういう人間的な魅力やコミュニケーション能力に基づいた力とも言えます。つまり、指示だけでなく、共感でも人を動かす力です。未来を創るような大きな変革は、一人でできるものではありません。周りを巻き込む力は、必要不可欠になります。未来の方向性を示して、戦略的に計画して、そして影響力で人を動かす、これが三位一体となって初めて未来を創るリーダーシップが発揮されます。 未来志向、戦略性、影響力、そのような資質は一朝一夕に身につくものではありませんが、企業はそのような人材を育成していかなければなりません。育成のポイントとして重要なところは、まず育成の基本姿勢として、自分で考え、判断する力を習慣化していくことがとても大事になります。受け身ではなく、自律的に思考して行動する力です。基礎力を培い、自ら考えて動ける人材を育成していきます。そして、何よりも実践経験を積ませることがとても大事になります。 プロジェクトの推進を、若手の頃から数多く任せるという経験が必要になります。未経験な分野であっても、取り組まなければなりません。苦手な分野やまだ未経験な領域にも、取り組まなければなりません。未経験の領域というのは、コンフォートゾーン、つまり快適な領域から意図的に飛び出して、新しい学びや新たな視点の獲得を促す、そのような狙いです。得意なことだけをしていても、思考の幅や経験の幅が限定されてしまいます。あえて未経験の分野も挑戦させるということで、問題解決能力や適応力、そして何より自分で考え抜く力、これらが鍛えられるということになります。 ある程度の負荷をかけて成長を促す挑戦的なアプローチでもありますが、ただ任せるだけでなく、関与の度合いもとても重要になります。プロジェクトメンバーとして参加させるだけでなく、自ら立案、提案し、経営陣に対する説得をして承認を得るまで実行していくように、裁量権や責任の大きい経験を積ませることが効果的です。単なる担当者レベルの仕事だけでなく、経営者目線での経験を与えます。企画立案から予算獲得、関係部署との調整、そして最終的な経営層への説明責任まで経験させるということです。これは、経営感覚を磨くことができ、若いうちからこういう経験を積ませることが大事です。失敗するリスクも当然ありますが、その失敗から学ぶこと自体が貴重な財産になります。そういう考え方が根底にあります。 このような個人の挑戦を支えるためには、組織全体のあり方がとても大事になります。柔軟に対応できる組織体制が不可欠です。各部門がそれぞれ持つ専門知識をもとに、戦略を構築して経営者に意見や相談を重ねるような経営のあり方でなければ、組織は機能しません。単なるトップダウンだけでなく、各部門が主体的に戦略を考えて、経営層と双方向で活発な議論ができるような、そういう風通しの良い組織文化が必要になります。個々の人材が挑戦的な経験を通じて自律的に考え、行動するために、その意見や提案を受け止めて生かすことができる土壌、つまり柔軟でオープンな組織体制が不可欠です。硬直した組織では、せっかくの人材も宝の持ち腐れになりかねません。個人の育成と、それを支える組織のあり方は、車の両輪のような関係にあるということになります。 付加価値の高い人材を大きく2つのタイプで整理していきます。戦略リーダー(経営人材)とプロフェッショナルという分類です。それぞれの役割と育成の方向性を区別して考えることは、効果的な人材育成戦略を立てる上でとても大事になります。戦略リーダーというのは、これまで話してきた未来を創る経営人材そのものです。新しい価値を生み出す全社視点や未来志向を持って事業を推進し、変革できる人材と定義しています。会社全体の舵取りを担って事業を成長させ、あるいは変革をリードしたりする役割を持ち、先ほどの未来志向、戦略性、影響力、これを高いレベルで兼ね備えた人材と言えます。 その一方で、プロフェッショナルという人材は、社内外に通用する付加価値の高い専門性を有した人材です。特定の分野、例えば、技術やマーケティング、営業、法務、そのような分野で非常に深い知識、スキル経験を持っていて、その専門性を武器に組織に貢献する人材です。必ずしも経営全般を見るわけではありませんが、その分野においては、特筆すべき能力が求められ、価値を提供する存在になります。戦略リーダーがオーケストラの指揮者だとすれば、プロフェッショナルは卓越した技術を持つ演奏者みたいなイメージです。重要なことは、どちらが優れているという話ではなく、企業が持続的に成長していくためには両方のタイプの人材が必要であるということです。戦略リーダーが示す方向に進むためには、各分野のプロフェッショナルの高い専門性がエンジンとなります。企業としては自社の事業戦略や組織の状況を踏まえて、どちらのタイプの人材をどのくらいのバランスで育成していくのか、そういうポートフォリオの視点みたいなものが必要になります。 経営戦略と人材戦略はとても密接に連携していかなければなりません。個人の資質や経験、そして組織体制に触れましたが、人材育成をより確実なものにするためには、具体的な仕組みや制度も重要になってきます。個人の努力やOJT任せにするだけでなく、育成を体系的に支援する仕組みの重要性もあります。具体的なツールとしては、スキルマップやチェックシートが挙げられます。個人の能力レベルを可視化するツールでもあります。これらを使って、本人が現在どういうスキルレベルにあって、次にどういうスキルを習得すべきなのか、目標を明確にすることができるわけです。そうしたツールを作るだけでなく、定期的に上司から本人へフィードバックすることが効果的です。目標設定して、進捗を確認して、そして質の高いフィードバックをする、このサイクルを回していくことが成長を促す鍵でもあります。客観的なデータに基づいて上司と部下が対話をして、成長をサポートしていくツールでもあり、コミュニケーションを円滑にする役割も果たします。 さらに、より組織的な仕組みとして、ナレッジマネジメントやタレントマネジメントといったシステム的なアプローチもあります。これは、個々の人が持っている知識やノウハウ、才能など、見えにくい資産を組織全体で共有して有効活用するための仕組みや考え方です。個人の学びや経験を組織全体の力に変えていくためのシステムということでもあります。誰かが異動したり退職したりしても、知識やノウハウが失われにくくなります。そのような目的もあります。属人化を防いで、組織として学習能力を高める効果も期待できます。 このようなツールやシステムを導入するだけで、本当に人材が育つかというと、単純なものでもありません。最も重要となるのが、学ぶ風土の形成です。仕組みや制度とは次元が違う、もっと根源的なものです。風土とは、無自覚に浸透している空気感のようなものであり、その土台には意識的かつ継続的に育んできた価値観が存在します。例えば、挑戦を奨励して、失敗を頭ごなしに責めるのではなく、学びの機会と捉えて、新しい知識やスキルを積極的に学んで、それを共有することを尊ぶことや、役職にかかわらず建設的な意見交換を歓迎する、そういう価値観が経営層から現場の社員まで日々の行動や意思決定の隅々まで浸透している状態です。それが「学ぶ風土」と言えます。いくら立派な研修制度やスキルマップがあっても、失敗を恐れて挑戦しないことや、知識を独り占めしてしまうこと、上司に意見が言えない関係である、そういう雰囲気の会社は、やはり人は育ちにくくなるものです。形だけ整えても、その根底にある価値観、つまり組織文化が伴っていなければ、制度は形骸化してしまう可能性が高いです。 人材育成の成否に最終的に影響するのは、この目に見えない風土になります。未来を創る経営人材を育成するためには、まずどんな人材を育てたいのか考えなければなりません。その要件である、未来志向、洞察力、戦略的思考、意思決定、そして影響力といった資質を明確に定義することが、とても大事になります。そして、それらの資質を効果的に伸ばすために、座学だけではなく、挑戦的な実践経験が必要になります。未経験な分野であってもプロジェクトを任せて、企画立案から経営層への説明まで一連のプロセスを経験させることが重要です。そのような個人の挑戦を可能にして支えるためには、柔軟な組織体制が欠かせません。各部門が主体的に考えて、経営層と活発に議論できる、そういう風通しの良さが求められます。さらに育成をサポートする仕組みとして、スキルマップ、定期的なフィードバック、そしてナレッジマネジメントのようなシステムも有効です。そして、これらの全ての取り組みの土台として最も重要なのが、学ぶ風土の存在です。挑戦を奨励し、学びを尊ぶという価値観が、組織全体に深く根付いていることが大事です。 自分自身のキャリアを振り返り、今関わっている組織や会社の状況を考えたりする上で、新しい視点をこれからも創出していかなければなりません。我々の普段の職場の空気や文化、また当たり前として受け入れているものがあります。それらを作り出している根底の価値観は、一体何か考えてみてください。それは誰かが意図して育んできたものなのか、それとも、無意識のうちに形成されてきたものなのか、自分自身の当たり前の裏側にある価値観について掘り下げて考える必要があります。
コーチングとは
251012 コーチングとは コーチングの本質を理解して、組織変革に生かしていきます。コーチングがどのように目標達成に成り立つのか、そして、どうやって組織全体を変える力になるのか、説明していきます。コーチングでは、対話を通じて、その人のものの見方や捉え方そのものに働きをかけていきます。 まず、基本的なことですが、コーチングを,どのように定義をしているか考えます。二人の間に問いを置いて一緒に考えることです。とてもシンプルな考えです。問いを前に置くということは、ただ話し合うということではなく、ゴールは何かということをはっきりさせて、目標達成をすることです。ポイントになるのが、そのために新しい視点、考え、捉え方が必要になります。行動を変えるだけではなく、その根源にある認識の部分を変えていく必要があります。 普段、上司が部下の話を聞く場面はよくありますが、新しいアイデアややる気につながる必要があります。ただ聞くような、自動的に耳を傾けるのではなく、問いを間に置いて、その問いはどういう意味があるのか、価値があるのか、上司と部下が一緒に探していく能動的な感じになります。その対話の中で、部下自身が自分の中に凝り固まっている考え方や枠組み、古い価値観や考えを一旦壊して、スクラップして、そして新しい論理、つまり新しいものの見方、捉え方、新しい価値観、これを自分で組み立て直していく、ビルドする。それを促すのがここで言う「聞く」という行為になります。スクラップアンドビルドを対話で起こします。少し遠回りに聞こえるかもしれませんが、何か答えをすぐに,与えてしまう方が早いかと思われてしまいます。ティーチング、つまり教えることに比べてコーチングは遠回りに見えるかもしれませんが、実は早いし効果的なアプローチになります。本質的な変化、つまり捉え方そのものの変えるには答えをすぐに上げるのではなく、対話を通じて、本人が自分で考えて、気づきを与えて、それが大事になります。行動変化につながりやすくなります。結果的に見るとそれが早いし効果的に成長につながります。時間はかかっても自分で見つけた答えは腑に落ちるものです。そして納得感が違います。 コーチングは、私たちが無意識に持っている前提や当たり前だと思っている考え方、これに対してそれって本当に正しいのか、建設的に疑う手助けをすることになります。コーチングが持っている変革力であります。リーダーシップについて話しあるときに、リーダーシップと何かと聞いて答えは返ってきますが、あなたのリーダーシップはいつ更新されましたかと問われた時に答えられますか。自分の考えがいつ更新されたか、普段全然意識しないものです。しかし今の時代は環境も変わっているし、社会も組織も働く人もリーダーに求めるものはどんどん変わっていくはずです。昔うまくいったリーダーシップが、今もそのまま通用するとは限りません。コーチとの対話というのは、まさにそういう自分の中に無意識にある前提。例えばリーダーたるものはこうあるべきだという考えに光を当てたときに、それが今の状況に合っているのか問い直しをして、必要であればアップデートしていく。こういうことは一人でやるのは難しいものですが、共同作業により対話を通じて捉え直していきます。 その前提への挑戦というのが、個人レベルだけの話ではなく、組織で考えていきます。進化する組織は常に対立を超えて、お互いの前提にチャレンジしていきます。それを超えていく対話をしているものです。つまり、変化し続ける組織の強さは、そういう対話の中にあります。個人が自分の前提を問い直すだけではなく、チームや組織全体で共有されていきます。当たり前のこと、うちの部門では昔からこうやるのが普通みたいな前提に対して、しっかりと健全な形で疑問を投げかけて、それで対話を通じて乗り越えていく。これが組織で。進めていき、環境の変化に対応して進化し続けるためのエンジンになるという見方です。ただ、仲がいいだけではなく、建設的な意見のぶつかり合いが必要になります。 個人の視点が変わり、チームの対話も深まり、その先に組織全体の変革がある。では、具体的にそれはどのような形で表れていくのか。単に新しい仕組みを作ることや、システムを入れることではありません。そういう目に見える変化だけではありません。組織の中のコミュニケーションを変えることこそが、コーチングが目指していくことになります。組織を変えるというのは、どうしても新しい制度やルールやITツールや、そういうハード面に目が行きがちですが、ここで大事なのは組織の中で毎日交わされるコミュニケーションの目的そのものを一人一人で変えていくということです。コミュニケーションの目的を変えるとは、例えば,会議で発言するときのことを考えてみてください。その目的が、単に自分の意見を通したいだけなのか、それとも、いろんな人の意見を引き出しして、もっと良い結論にたどり着きたいのか、あるいは上司に報告するのか、または義務だから仕方なくやっているのか。しっかりと状況を伝えて必要なサポートをもらうことなのか。本当の目的は何なのか、何のためにコミュニケーションを取るのか,という意識が変われば、おのずとコミュニケーションの取り方、つまり何をどうやって、どれぐらいの頻度で伝えるのか、みたいな量と質が変わってくるはずです。目的が変われば、行動が変わってくることになります。一人一人のコミュニケーションの変化が積み重なり、組織全体の雰囲気や文化、風土が変わり、最終的に業績にも直結していきます。表面的な行動を直すのではなく、その行動を生み出している根本的な動機や意識レベルを変えていこうとしている。だからこそ、単なる仕組みやシステム導入だけでなく、もっと本質的で長続きする変化へ仕向けていきます。 コミュニケーションの目的に注目していきます。コミュニケーションでは具体的にどんな要素で成り立っているのか。考えていきます。コミュニケーションは情報、要望、提案、質問の4つに整理していきます。特に力を入れているのは明快に要望することです。明快に問いかけをすることです。つまりコミュニケーションの目的を何か曖昧にしないではっきりと相手に伝えて伝えるということが大事です。 例えば。相手に何かしてほしい時に、これについてあなたはどう考えていますかというように、遠回しの言い方に含みを持たせるのではなく、ストレートに、もちろん丁寧に伝えること、明快に伝えることが大事です。目的が曖昧だと、コミュニケーションに弊害が引き起こされます。目的がはっきりしないと、受け取った方は、この人本当に何が言いたいのだろうかと、何を期待しているのだろうかと余計なマインドリーディングつまり損得や推測が働いてしまい、これが実は結構な負担になってしまいます。そして誤解を招いたり、コミュニケーションのすれ違いを生む原因になってしまいます。逆に目的が明確であれば、受け手はその。要望なり問いかけになり、どう答えるのかに集中できる。結果として心理的負担も減るし、誤解も少なくなる。これが組織の中の心理的安全性、つまり誰もが安心して意見を言ったり、疑問を投げかけたり、助けを求めたりできる状態を高めることにつながります。一方的な上意下達みたいなコミュニケーションはかえって心理的壁を作ってしまいます。コーチングは、その反対の考え方と言えるでしょう。 心理的安全性が高まると、よりオープンで建設的な対話がしやすくなります。それが先ほどの前提への挑戦にもつながってくるわけです。ですから、明快な要望、明快な問いかけ、これが意図の分かりやすいコミュニケーションの基本であり、健全で進化し続ける組織を支える大事な要素になります。 コーチングというのは、単に目標達成のテクニックやスキルというよりは、少し深いレベルで変化を促すプロセスであります。問いかけや対話をきっかけにして、私たち自身がとらわれている前提という囲いみたいなものに気づいて、そこから抜け出して新しい景色を見ることになります。そういう内面的な,深掘りがあります。そしてその個人の内面の変化が組織の場で現れてコミュニケーションの目的そのものを問い直すきっかけになって、結果として明快な要望や明快な問いかけみたいに具体的な行動の変化につながっていきます。その連鎖反応が組織全体の心理的な安全性を育てて変化に強い進化し続けるための土台を作っていきます。 そのように組織を発展していきます。組織でのクリアなコミュニケーション、特に明快な要望や、明快な問いかけ、心理的安全性を高めて組織を元気にするという話をしました。思い込みや推測、マインドリーディングなど、これを意識的にちょっと横に置いといて、代わりにあなたにこうしてほしいだとか、これについてどう思うみたいな明快な要望や明快な問いかけを今よりもほんの少しだけ増やしてみたらよいです。そこで、関係性や物事の進み具合、あるいは自分自身の気持ちにどのような変化が生まれる可能性があるので試してみます。
人を見る目の養い方
251011 人を見る目の養い方 人を見る目の養い方と価値観の形成について説明していきます。人間関係の形成や自分自身の成長に役立つような実践的な知恵やヒントを見つけ出していこういうものです。私たちは,日々、無意識にでも、人を見分けるような場面があります。その本質をどのように捉えて、どのように習得していくのか、その考えを示していきます。これはとても普遍的で、ありながら、とても大切なテーマでもあります。 まずはじめに、強調しておきたいのが、言葉よりも行動を見るという点であります。これは、人を見る上での、鉄則のようなものです。その人が何を求めて生きているのかを行動から読み解いていきます。言葉というのは、どうしてもその場の意図や状況によって変わってしまいますが、繰り返し行われる行動、特にプレッシャーがかかった時のその人の対応や、誰も見ていないような場面の行動には、その人の価値観や本質が現れるものです。その人が、実際に何に時間やエネルギーを使っているのか、それを普段から見ていくということは、人を見る上で、とても大事なことになります。 その行動の中でも特に人は事実・約束を守ることが大事であります。これは信頼関係の築く上でとても根幹であります。約束の大小にかかわらず、それをきちんと守るという行動は、その人の誠実さや責任感、あるいは他者への敬意を示す、最も基本となる表れであります。一つ一つの約束が守られる、その積み重ねが、結果として揺るぎない信頼関係を築いていくものになります。逆に言えば、どんなに立派な言葉を並べたとしても、行動が伴わなければ信頼というのは生まれてきません。 そして、行動を観察する上でのポイントとして挙げられるのが、その人が身近な人を大事にできるかという視点であります。一見すると、公の場での振る舞い方だけが大事な気もしますが、人は対外的な場面、特に利害関係が絡むような相手には、ある程度自分をよく見せようと、努めるものでありますが、家族や古くからの友人など、利害関係が比較的薄い、あまり気を使わないでいられる相手に対して、どのように接しているのか、その人の人間性や他者への態度が露呈しやすいということであります。身近な人への対応の仕方が、もしぞんざいな人であれば、その人が果たして他の場面だけで本当に誠実でいられるのか疑問が出ます。ある意味、一番の素が出やすい関係だからこそ、その人の本質が映し出されやすいということになります。人として、信頼に値する人物かどうかは、そういうことが判断基準になるわけです。 それに関連して、友人を見ればその人の人なりが分かるということもあります。人は価値観や興味、あるいは目立つ方向性が近い人と自然に集まる傾向があります。類は友を呼ぶ。その人が具体的にどのような友人関係を築いて、そして維持しているのか、それを見ることで、その人自身の人間性や大切にしているものを間接的に知ることもなりますし、手がかりになるという考え方です。友人への接し方にも当然、その人の身近な人を大事にするという姿勢が現れてきます。行動、約束、それから身近な人への態度、これらがまず人を見る基本であります。 では、これらを踏まえて、私たちはどのように人と積極的に,関わっていくべきなのでしょうか。自分の人生の振り返りができて、一筋の道を歩む人を手本にしてください。これは単に目標を持っている人ということだけではなく、人の継続性や一貫性があるかどうかということが大切です。自分の信念や、あるいは専門性を持っていて、あまり浮ついたものに流されずに、地味に努力を続けている人。そのような人は、自己規律があり、精神的な安定を持っています。そういう人と交流することは、あなた自身の刺激になるだけではなく、価値観を共有できたり、あるいは困難な時に精神的な支柱になったりします。そういうブレない軸を持っている人と一緒にいると、自然と自分の背筋が伸びるような、そんな感覚があります。 一筋というのは頑固さや柔軟性の欠如と紙一重という見方もされてしまいます。真の一筋の人というのは、自分の核や信念を持ちつつも、新しい情報や異なる意見に対して完全に耳を閉ざすわけではなく、むしろ自分の道を深めていくために、必要な学びや柔軟に取り入れていく姿勢があります。単なる固執ではなく、信念に基づいた探究心があるかどうか、そこがポイントとなります。信念と柔軟性のバランスが大事になります。 また、好きな仕事を徹底してやるという姿勢も大切になります。これも一筋の道と深く関係します。自分の好きなことに対して情熱を傾けられる。仕事に打ち込むという姿勢は、その人のエネルギーの源泉であります。まさに一筋の道を歩む上での原動力になります。そのような情熱を持っている人と時間を共有するということが、自分自身のモチベーション向上にもつながります。そして人生の充実感を高める上でも重要なことでもあります。 そうした情熱をどこに向けるか。それについて、自分がコントロールできることに集中して、その姿勢が大事になります。コントロールを集中して増大していくという考えは、日々の生活でも意識したいものです。私たちのエネルギーの時間というのは、どうしても有限であります。それを自分の努力や工夫次第で結果が変わる可能性のある領域、つまりコントロール可能なことに集中させるべきであります。例えば、自分のスキルアップや健康管理、あるいは仕事への取り組み方といったものです。 逆に自分がコントロールできないことには、時間やお金の投資はしないほうがよいです。これは例えば、他人の評価や経済全体の動きや、あるいはもう変えられない過去のことなど、そういうのに心を煩わせすぎないようにしようということであります。実際は簡単なことではありませんが、つい私たちはコントロールできない外部の要因に一喜一憂してしまいがちです。しかし、意識的に、自分がコントロールできないか自分がコントロールできる範囲なのかと常に問いかけすることで、ある意味潔く距離を置いて、できることにリソースを注ぐ。そういう訓練することが、自己成長や目標達成への着実な道筋になります。 その上で、自分の本業に集中することも大事であります。あれもこれも、幅広く手を広げたくなる気もありますが、まずはその核となる部分をしっかり固めないといけません。多方面に手を出すこと自体が悪いわけではありませんが、自分の強みや最も情熱を注げる本業に深くコミットして、専門性を磨くことが結果的に揺るぎない基盤になります。そして他の分野へ展開にもつながっていくという考えです。 これも一筋の道とも通じる選択と集中の重要なことになります。意欲先行であっても、いずれは能力が追いついてくるものです。最初から完璧でなくても良いわけです。つまり意欲さえあれば、それがエンジンとなって必要な知識やスキルを,貪欲に吸収して試行錯誤を繰り返す中で能力というのは後からついてくるものであります。完璧な準備が整うのを待つのではなく、まず一歩を踏み出す。その意欲そのものが大切であります。 これはポテンシャルを秘めた人を見極める際にも参考になる視点です。能力はまだ、もしかしたら未熟かもしれないけど、強い意欲を持っている人は、将来伸びる可能性があることを気づかせてくれます。これらの人を見る目は、どのように養われていくのか。それは生まれつきに備わっているものではありません。才能や直感という要素もゼロではありませんが、基本的には意識的な学習と、そして経験を通じて時間をかけて磨かれていくスキルでもあります。単なる勘ではなく、後天的に獲得していく能力であります。 獲得する過程では、多少痛い思いをしながら、人の見抜き方を養っていくこともあります。失敗経験や避けて通れない道ということでもあります。誰もができれば避けたい道ではありますが、人間関係において残念ながら期待を裏切られたり信じていた人に,失望させられたりといった、いわゆる痛い思いをするというのは、ある程度は避けられないかもしれません。しかし、そうした苦い経験こそが、人の言葉の裏にある本音や、あるいは見せかけの行動の裏にある動機、そういったものを見抜く洞察力を最も効果的に鍛えてくれる側面もあります。 順風満帆なだけでは気づかないことも多いかもしれません。経験することだけではなく、何を学び取るのか、ということが重要になります。基礎となる知識も必要であります。経験則だけに頼るのではなく、例えば心理学の基本的な知識と、人間行動のパターン、あるいは社会や文化に関する理解、そういった体系的な知識があると、個々の経験をより客観的に分析して一般化することができます。経験と知識、その両輪が必要となります。 そして最終的には知識や経験、そして価値観の形成が大事ということにあります。この3つが揃って初めて何か揺るぎない判断軸ができるということになります。それは三位一体ということになります。知識がまず判断の土台を提供して、経験がその知識をいわば肉付けして,実践的な知恵と変えていきます。そして、それらを通して培われたあなた自身の価値観、つまり何を善意として何を重要と考えるかという基準が養われます。これが最終的な判断のよりどころになるわけです。この価値観が曖昧だと、いくら知識や経験があったとしても人を見る目というのはなかなか定まることはありません。 価値観というものは、楽な経験だけではなかなか固まるものではありません。自分の価値観が本当に試され、そして鍛えられるのは、むしろ困難な状況や倫理的な葛藤に直面した時であります。やさしい道を選びたくなる誘惑とか、あるいは周囲からの圧力に負けてしまいそうな時、それでも自分が大切にしたいものを守り通そうとする。そうした経験を通じて、何が自分にとって本当に譲れない一線なのか。それが明確になって、価値観が骨太になっていきます。ある程度の痛みというのは、その強度を増すためのプロセスであります。 人を見る目を養うプロセスというのは、同時に自分自身の価値観を問い直して固めていくものでもあります。それが結果的に約束を守れる人間になる。そして理想に向かって努力をする。そして、人のせいにしないという具体的な自己のあり方へとつながっていきます。他者への視線がそのまま自分への要求にもなっていきます。人のせいにしないという態度は、あらゆる状況において主体性を持つ、つまり自己責任の原則であり、これは成長には不可欠な心構えと言えます。 これらの考え方は、日々の生活や仕事の中でどのように活用していけるか、考える必要があります。ぜひ、試してほしいのは、自分自身の過去の経験や、特に人間関係における成功体験や失敗体験、振り返ってみて、あの時なぜうまくいったんだろうかあるいはなぜ期待と違う結果になってしまったんだろうか、判断の決め手は何だったんだろうか、もしかしたら見落としていたんだろうか、冷静に分析見ることで具体的な学びがきっと見えてくるはずです。自分の体験に照らし合わせて考えてみると、すごく腑に落ちる部分が多いと思います。 抽象的な教訓としてだけではなく、具体的な場面を思い浮かべながら、これからは、少し意識的に周りの人の行動に着目してみてください。言葉だけを鵜呑みにしないで、その人が実際に何をしているのか、小さな約束はしっかりと守られているのか、あるいは利害関係のない相手、例えばお店の店員さんや後輩に対してどのように接しているのか、最初はちょっと意識しないと難しいかもしれませんが、観察を習慣化することで、徐々にその行動パターンやその人なりの一貫性みたいなものが見えてくることがあります。 すぐに人を見る目が養うものではありませんが、じっくりと習得してください。これは一夜漬けで習得できるような技術では決してありません。むしろあなた自身の人生経験とも人生経験とともに生涯をかけて磨き続けていく,とても深い学びのプロセスにあります。ですから、焦る必要は全くありません。ただ、意識し続けることが変化の第一歩になるということです。人の本質を見抜く鍵というのは、言葉よりも行動、特に一貫性のあるということ、約束を守るか、身近な人を大切にできる。次に誰と付き合うのか。つまり自分がどのような影響を受ける環境に身を置くのか、それを意識することが重要であります。一筋の道を歩む人と、情熱を持って物事に取り組む人との関わりというのは、あなた自身を成長させる力になる可能性があります。そして自分の貴重なエネルギーをコントロール可能な範囲にしっかりと集中させること外部の要因に振り回されず自分の本業やスキルアップに打ち込んでいき、たとえ意欲が先行だとしても努力を続けることで必然と能力が身についてきます。 人を見る目を養うということは、知識と経験、時には痛みを伴うような経験によって後天的に養われていくスキルです。そしてその土台は経験を通じて形成されたあなた自身の確固たる価値観が必要だということです。これらのプロセス全体では、自分自身が約束を守り、理想に向かって努力して、人のせいにしないで自立心を高めて、自己成長とつながっていくものであります。 人を見る目を養う上で、見極めは難しいところがありますが、最も重要な対象というのは他人ではないかもしれません。それはあなた自身に対する向き合い方です。あなたは他者に求めるその誠実さや一貫性をあなた自身で。きちんと体現できているか、考えてみてください。自分自身の日々の行動は、自分自身が大切だと信じる価値観に、本当に一致しているのか。人を見る目を磨くという探求は、結局のところ、自分自身の真の姿を見つめて理想に近づいていこうとすることです。他者を見つめる視線が鋭くなればなるほど、それは自分自身にも向けられるものになります。