251006 人の心をぐっとつかむ話し方 ぐっと人の心をつかむ話し方、特に情景の描写が必要になります。自分の見たこととか感じたことをいかに相手の心に届けるか。すごいと響かせられるのか、その秘訣を伝えていきます。 人を動かすというのは、コミュニケーションの、本質的な部分です。人はどこかで、他者と感情的につながりたいと願っていますが、同時に、傷つかないように、無意識に心のシャッターを下ろしてしまう部分があります。人は心が動かないように、プロテクトをかけているところがあります。動かされたい欲求とプロテクトの気持ちが働きます。一見矛盾するような心の動きのその境目で、どうやって相手に働きかけるかが大事となります。 自分の心が動いた経験を伝えることが大事です。そのため、日々、そのための素材を集めることです。自分のリアルな体験を話すことが重要です。いかに話に魂が宿るかに関わってきます。借り物の言葉や一般論では、表面的なものになりがちです。自分が実際に見て聞いて、それで心が揺さぶられた経験は、言葉を超えたリアリティー、つまり真実味と、熱量が乗ります。大事なことは、単に体験しましたで、終わらないことです。 いくら熱量を込めるといっても、主観を伝えてばかりでは響きません。むしろ客観的な事実を描写できることができるようにすることが、実は伝わる秘訣です。自分の感動を、もう最高、 感動したと、熱く語るんじゃなくて、何か淡々と事実を描写する方が、かえって相手の心を動かすことになります。 人の心を動かすために、ある種の逆説的な考え方です。非常な重要なテクニックです。なぜ客観的描写が必要なのか説明します。それは、聞き手の頭の中にスペースを作るからであります。聞き手の頭の中には、客観的な事実を基づき、例えば、色や形や音など、人の動きの場の雰囲気を具体的に描写することで、聞き手はその情報をもとに、自分自身の頭の中でその状況を再構築、できるようになります。その再構築された状況の中で、聞き手自身の感情が生まれるのを待つことも大事であります。情景の共有です。つまり、ただ感動したと言っても、それは伝わることはありません。それは自分の感情の結果であって、聞き手の受け取る感情とは違います。客観的な描写をすれば、聞き手はその情景を追体験して自分なりの感情として受け止め、同じ感動かもしれないし、あるいは何か寂しさや懐かしさもしれないけど、とにかく聞き手自身の感情を引き出すことが大事になります。 例えば、「昨日の夕焼け、めちゃくちゃ感動した」と言ったとします。私が興奮して言ったとします。しかし、それだけでは相手はそうなんだと一言で終わってしまうかもしれません。それだけでは心は動くものではありません。もし僕が日が落ちる直前で、あの雲の切れ目から漏れた光が古いビルの壁をサーッと金色に照らしたんです。すぐそばの工事現場のクレーンが、なんかまるで巨大な鳥みたいにシルエットになって、風がピタッと止まって遠くから聞こえる電車の音だけがやけにクリアだったみたいな。そのような具体的に描写できたら、何か情景が目に浮かんできます。聞いてる人も心の中で、ズバッと生まれてくる感じがします。 話し手の感情を押し付けないからこそ、聞き手の感情が自由に動けるものです。話をしている側の盛り上がりが相手には伝わらないというのは、このような注意喚起が必要になります。主観的な言葉、例えば、すごい、面白い、やばい、感動した。そういうのを連発すると、話し手は気持ちいいかもしれないですけど、聞き手は結構置いていかれる気がしてしまいます。客観的な描写というのは、いわば聞き手の想像力というエンジンにかけるための鍵を提供するようなものです。自分の感情を避け、相手の心に火を灯すために、ある種の火をそっと置くみたいな感じであります。これは意識して使ってみたい技術です。 その客観的描写をどうやって効果的に伝えていくのか、伝え方にも工夫が必要です。ワンセンテンスは長くなく、場面を切り替えていくと集中して聞けるようになります。情景の共有や場面の展開を早くしてあげます。短いショットをテンポよくつないでいくと、聞き手の集中力も保つ上で有効になります。聞き手に飽きさせないということにもなります。人間の集中力は、特に聞くという行為に対する集中力は、残念ながらそんなに長くはつきません。 聞き手の脳内に情景を浮かべるということが大事になります。ダラダラと長く一文で説明されるよりもパンと短い文で画面が変わる方が映像がクリアに結びやすくて話の流れに突入していくようになります。このテンポの良い客観的描写が目指す最終的なゴールは、やはり聞き手の心が動くことにあります。何らかの感情が動くというその体験を引き起こすことです。 この巧みな描写とリズミカルな展開。そっと何か気づかれないようにプロテクトを解除していき、心の奥にある本当は心は動かされたいんだというその欲求に応えてあげる。そういうアプローチとも言えます。心のプロテクトを描写とテンポ良さで解除していきます。意識的な訓練も必要になります。興奮すると、どうしても自分の感情をそのまま言葉にしたくなりますから、そこをグッと堪えて客観的な視点を保って、何が見えたのか、何をどのように感じたのか、その事実に立ち返ることが大事です。それを短い言葉で描写して慣れるまで、確かに難しいかもしれません。 また、ここで大事にしたいのは、相手に、面白く興味が湧く話が大事ということです。どんなに描写とか構成の技術を磨いても、そもそもその話題自体がつまらなければ、人の心は動きません。面白い話、興味深い体験を伝えるために、まず観察者として冷静に素材を集めるということも大事になります。自分の感情を直接叫ぶのではなく、客観的な事実を短いセンテンツでテンポよく描写していく。 それによって、聞き手の頭の中に情景を共有して、聞き手自身の感情が生まれるのを助ける。これが、人の心を動かす話し方の秘訣ということになります。この観察者としての視点を意識的に持つというトレーニングについては、コミュニケーション能力を高めるだけではありません。自分自身が普段、日常の世界から何に気づいて何を感じる,そして読み取るのか、つまり自分自身の認識の解像度自体を変えていくという習慣づけが大事になります。 例えば、目の前にあるコーヒーカップ。ただのコーヒーカップがある。ではなく、白い陶器で、取っ手の付け根に、小さなヒビが入っているなとか、湯気がこうゆらゆらと立ち上がっていて、部屋の蛍光灯が表面に鈍く反射していくみたいに。そうやって意識的に描写しようとすると、普段は見過ごしている、細かいところに気づくようになります。色とか形、質感、感覚、光の当たり方なんか、小さな変化とかをとらえ習慣を続けると、世界がもっと豊かに面白く見えてくるかもしれません。心を動かす話をするための改善というのは、まず自分の周りの世界に驚きを持って注意深く見つめることから始まるということです。
自分を信じる勇気
251005 自分を信じる勇気 自己信頼や自己理解、そして幸福感それらを見つけるにはどうするかその鍵となる考え方を理解を深めていきます。自分の知性と性格とどう向き合っていくか。それから誰もが持っている劣等感これをどう力に変えていけるのか。そして自己受容と人生の目的を説明します。これらの概念が自分自身の日々の生活と自己信頼に響いていくのか考えていきます。単なる自己啓発のテクニックではなく根本的に自分自身と向き合い方、そしてより肯定的に生きていくための視点、特に自分に何が備わっていて、それをどう活かすかがポイントとなります。 一般的に私たちが考える,IQだけが知性ではありません。問題解決能力や創意工夫、これも立派な知性となります。学校で育むべき要素として尊敬、共感、信頼感、貢献感、 人間関係に関わる力もあります。ハワード・ガードナーの多重性知能理論があります。言語的な知性、対人関係の知性、自分自身を深く理解する内省的な知性など。知性も多様な側面があり,自分自身の強みについて,どのあたりにあるのか考えることができます。今まで知性なんて思ってみなかった部分に光を当てて考えてみるものです。この知性の多様性というのを理解することが、自己理解の第一歩でもあります。自分がどの領域で輝けるのか、それを知ることで、自分が最終的にどうなりたいのか、という自己認識が深まるわけです。それだけではなく、他の人が持っている異なる知性や価値を認めることにもつながっていきます。これが他者への尊敬や共感を自然に育む土壌にもなります。そしてこの自己理解の性格の形成とも密接に関係してきます。 例えば、持って生まれた気質は、内向的か、外向的か、または、育ってきた家庭環境や、家族が大事にしてきた価値観や家族全体の雰囲気、これらが複雑に絡み合ってその人固有の思考パターンや感情の反応、つまり性格を形作っていくということも考えられます。自分らしさを知る良い手がかりになります。知性も性格もまずは。自分を知ることから始まるということになります。 その次に、自分らしさを磨くことに移ります。個性的であることと周りとうまくやっていく協調性のこの2つのバランスが大事になります。そして、セルフトレーニング、つまり自分で努力し続けることの重要性も大事になります。情動を上手にコントロールできる人は、理性と感情を適度に使い分けながら行動できる人であります。 具体的にどういう状態を指しているのか考えます。これは感情に蓋をするのとは違います。感情を無視したり、抑圧したりするのではなく、まず自分の感情をしっかりと認識した上で、その感情に短絡的に反応してしまうのではなく、状況や目的に合わせて理性と感情の。いわば調整する能力が大事になります。感情というとすぐにカッとなって行動に移すのではなく一呼吸置いて考える、そういうことが大事になります。 次にリーダーシップの話も大事です。リーダーシップは誰もが必要であります。いわゆる管理職やリーダーという役職に限った話ではありません。ここで言っているリーダーシップは私たち一人一人が自分の人生という船の船長として主体的に行き先を決めて困難を乗り越えていく力であります。そういう意味合いで捉えています。自分の人生の主導権を握るということです。自分の人生のリーダーです。そのように考えると誰にでも必要な力ということがわかります。 そしてこの自分らしさを、自分の人生のリーダーシップを追求していく上で,多くの人が直面するのが、劣等感の付き合い方です。人は生きている以上、劣等感を抱く存在となります。これは、ある意味、すごく正直なことであります。完璧な人間なんていないからです。他人と比べて感じる劣等感と、あとは自分の中の理想と比べて、感じる劣等感この2種類があります。ここでとても重要なポイントは劣等感と劣等コンペックレックスは分けて考えるということです。 自分はここが足りないと感じる。劣等感自体はむしろ成長へのバネになり自然な感情であります。劣等感そのものが全部悪いというわけではありません。問題になってしまうのはその劣等感が過度に強くなってしまい、そしてどうせ自分なんてみたいな言い訳や、行動しないことにつながり、自分自身のブレーキに使われてしまう、劣等コンプレックスの状態になり、これに陥らないように意識することが大事であります。そのために大事なことは、貢献感を持つことです。つまり、自分は誰かの役に立っているという感覚を持つことが大事になります。 これは、アドラー心理学の中心的な考え方であり、個人の主体性や目的、共同体感覚を重視する心理学にも通じるところがあります。誰かの役に立てているということを感じると、何か自分の価値を感じることにもつながりやすくなります。 自分の努力では変えられないこと、例えば、生まれた環境や過去の出来事、そういうことがあったとしても、 それに対してどう反応してどう意味づけるのかというよりは完全に自分自身の選択できることに主体的な姿勢を持ちそれが劣等感を乗り越える上でとても大事な力になります。変えられないことに囚われるのではなく、変えられる反応や意味づけに焦点を当てること。これが大切になります。 そこで大事になるのが言葉の力であります。普段何気なく使っている言葉が自信に影響するということは、 多くの人が実感していることであります。特に陽性感情,つまりポジティブな感情を意識的に働かせることが大事になります。安心感,期待感,満足感,喜び,興味,感動,愛情,幸福感,このように,リストアップするだけで、とてもたくさんのポジティブな感情があるということを、改めて気づかされます。そして、そのポジティブな感情を引き出す道具というのが、まさに言葉であります。自分自身に向ける言葉、いわゆるセルフトーク、これを意識的にポジティブなものに変えることで、気分や思考もポジティブな方向へ導かれやすくなります。一種の自己暗示のような効果も期待できます。例えば、失敗したときにもうダメだとつぶやく代わりに、よし、ここから何を学べるか考えようと、このほんの小さな習慣の積み重ねが、自己肯定感を育んでいきます。普段からセルフトークを意識してみてください。結構ネガティブなことも言っている人も多いことに気づきます。だからこそ、意識的に変えていく価値があります。 ネガティブな感情の中でも、妬みと嫉妬は区別して考えます。その対処法について考えていきます。妬みと嫉妬は似ているようですけど違います。嫉妬というのは,主に人間関係の中で大切な人との関係が何か脅かされるという感じた時に生まれる感情であります。その感情の存在を認めて、事実を確認して、建設的なコミュニケーションで対応することが大事になります。一方で、妬みというのは、他者が持っているものをこう羨ましく思う感情です。これを単に相手を引きずり下ろしたりしたいという破壊的な方向ではなく、羨望、つまり自分もああなりたいな、自分もあれを手に入れたいなという向上心や目標達成へのエネルギーに転換していくことが大事になります。ネガティブな感情も見方を変えればエネルギーの源になり得るということです。 そして、いろいろな感情や自己認識を得て、次に「自己受容」というテーマにつながります。ありのままの現実、ありのままの自分を受け入れることが、最終的に人生の満足度や幸福度に高めていくということになります。ここで大事なのが、見方を変える発想を転換することの力であります。同じ出来事や、同じ自分の弱みであっても、捉え方次第で、悩みや短所が可能性やユニークな魅力へと変わっていきます。 例えば、頑固ということは、意志が強いと転換できます。飽きっぽいということも、好奇心旺盛なんだなというふうに捉え直すこともできます。これをリフレーミングと呼びます。この視点の転換、発想の転換ができるようになると、今までは、これは自分の性格だからと言って避けてきたことであっても、少し挑戦してみようかな、そのような勇気が湧いてくるかもしれません。結果として、生き方そのものがより肯定的になって可能性が広がっていきます。自己受容は、自己肯定感を育むための大切な土台とも言えます。 そして、その自己受容を土台にして、今度は未来を描いていく人生のシナリオについても考えていきます。自分の中には無意識のうちに描いている究極目標地点、つまり理想の自分像みたいなものがあります。そして、その魅力的な未来の自分に到達するために、今この瞬間に何をすべきか、何を積み重ねていくべきか、考えることが重要になります。 未来志向的で何か希望を感じさせる考え方です。ここでポイントなのは、その究極目標については必ずしも具体的で達成可能な短期目標とは限らないということです。むしろ人生の羅針盤みたいな大きな方向性を示すものでありますから、そこに至るための長期目標や中期目標、短期目標というのは状況の変化とか自己理解が深まりに応じて、柔軟に見直ししたり変更したりしても構いません。 何か固定的な計画に縛られたりするのではなく、大きな方向性を見失わずに、しなやかに進んで対応していくイメージです。柔軟に変更しても構いません。計画は必ずしも予定通りいくことがすべてではありません。 そして、ここでもまたセルフトークが鍵になってきます。未来の理想の自分を思い描いて、それに向かって進み、自分を励ますような言葉をかけます。これが日々のモチベーション維持や困難に立ち向かう勇気から来ます。 自分を励ます言葉が大切です。そして、自分だけではなく、他者との関係における勇気づけ。これも重要な要素として挙げられます。リスペクトをすること、それから共感すること、信頼する、そして協力する、こうした関わりが良好な人間関係を築くだけでなく、巡りに巡って自分自身の価値を感じて、自己価値観を高めて、幸福度を高めることにつながります。 プラスのイメージを掛け算でアップしていくイメージも良いです。ポジティブな関わりが相乗効果でどんどん良い循環を生み出していくイメージになります。そして具体的な行動指針として,示しているのが、誰かに必要とされていると感じることです。それを自分にできる範囲でやること。そして、今更遅いなんて思わずに今から始めること。非常に前向きで実践的な考えです。貢献感にも直結する考え方であります。今からやる、何を始めるにしても遅すぎることなんてありません。そして本当に大切なことは、自分が持っているもの、自分に残されているものは何かを考えることであります。 パラリンピックの創設に尽力したルード・ヴィヒ・グッドマン博士の「失われたものを数えるな。残されたものを最大限に活かせ。」この言葉は、事故などで身体的な機能を失った選手たちに向けられた言葉でありますが、我々全員に当てはまる普遍的なメッセージでもあります。次に、アルフレッド・アドラーの言葉。「重要なことは、人が何をもって生まれたかではなく、与えられたものをどう使いこなすかである。」この言葉は、持って生まれた才能とか、環境、あるいは過去の経験といった、「与えられた」そのものよりも、それを自分がどう解釈して、どう活用していくか、その使い道こそ人生を豊かにすることに鍵があるということを意味しています。失われたものではなく、残されたものに目を向け、与えられたものをどう使いこなすかこれは自己信頼と幸福への道筋を示す根本的な哲学であります。 知恵の捉え方、劣等感との建設的な向き合い方、自己受容の力、そして何よりも、今、ここから自分に与えられたものを最大限にいかしていきます。自分自身に与えられたものは何か。それは才能かもしれないし、経験かもしれない。あるいは、特定の価値観や人間関係かもしれません。その中で、今日から特に意識して活用したいなと。あるいは、これからもっと育てていきたいと感じるもの。何かあるはずです。自分自身の内面を見つめてみることが大事です。内省的な知能を働かせること自体が、自分を信じる勇気を育むための確かな第一歩になります。
思考特性と行動特性
第1章:ハーマンモデルとエマジェネティクスの概要 ハーマンモデル(HBDI:Herrmann Brain Dominance Instrument)は、人間の思考スタイルを4つの象限に分類することで、個人の「利き脳」や認知傾向を理解するための理論モデルです。1980年代にGE社のネッド・ハーマン博士によって開発され、世界中の企業や教育機関で活用されています。 一方、エマジェネティクス(Emergenetics)は、「Emerge(出現する)」と「Genetics(遺伝学)」を組み合わせた造語であり、ハーマンモデルの思考特性に加えて、3つの行動特性(自己表現性・自己主張性・柔軟性)を取り入れた理論です。これにより、人の思考と行動の特性をより立体的に捉えることが可能になります。 以下のサイトでは、簡単な質問に答えることで、自分の思考タイプを知ることができます。👉 https://herrmann.rere.page/ 第2章:思考スタイルの違いが生むコミュニケーションギャップ 人はそれぞれ、考え方やコミュニケーションの取り方に癖があります。こうした違いは、なぜ生まれるのでしょうか。そして、それが日常の人間関係や仕事の進め方にどのような影響を与えているのでしょうか。 日頃のコミュニケーションを見直したり、自分自身の新しい見方を理解するために、思考スタイルの違いを知ることは非常に有益です。職場では、コミュニケーションのすれ違いによって意思疎通がうまくいかず、結果として人が離れてしまうことが少なくありません。実際、離職の原因の多くはコミュニケーションギャップにあると言われています。 「なぜ伝わらないのか」「なぜ分かり合えないのか」——その根本にあるのが、エマジェネティクス(EG)という考え方です。 第3章:思考スタイルの違いを理解する EGはEQ(感情指数)とは異なり、脳の特性に基づいた思考や認知の好みのパターンを示します。いわゆる「利き脳」の概念です。 人にはそれぞれ異なる思考パターンがあり、「違うこと」が前提です。私たちはつい、自分の「普通」を基準にしてしまいますが、その「普通」は人によってまったく異なります。 例えば、ある人にとっては結論から話すのが自然でも、別の人には経緯から丁寧に説明されないと理解できないというのが自然です。こうした根本的な思考スタイルの違いが、コミュニケーションギャップにつながる可能性があります。 仕事におけるコミュニケーションは、単に仲良くすることではなく、考え方の違いを認識し、それを乗り越えて情報を正確に伝えることが重要です。感情的に寄り添うだけでなく、相手がどのようなプロセスで考えているのか、思考の地図のようなものを理解することが非常に大切です。 第4章:EGの思考特性と行動特性の分類 エマジェネティクス(EG)では、人の思考スタイルを以下の4つのタイプに分類しています。それぞれ色で象徴され、特徴的な認知傾向を持っています。 思考特性(4タイプ) 誰もがこれらの要素を持っていますが、どの特性をより好んで使うかに違いがあります。たとえば、「あの人はデータに厳しいから青っぽい」「いつも周囲に気を配っているから赤の人だな」といったように、周囲の人を思い浮かべると当てはまることがあるかもしれません。 行動特性(3タイプ) EGでは、思考の好みに加えて、行動のスタイルも重視しています。以下の3つの行動特性があります。 この4つの思考特性と3つの行動特性の組み合わせにより、非常に多様な人間のスタイルが生まれます。思考の「エンジン」としての4タイプと、それをどう「動かすか」という行動特性の組み合わせが、個人の特性をより深く理解するための鍵となります。 たとえば、同じ分析型でも、じっくり考えて発言する人と、積極的に意見を主張する人では、周囲からの見え方やコミュニケーションの取り方が大きく異なります。 これは単なる性格診断ではなく、「なぜ人が特定の状況でそのように振る舞うのか」という背景にある好みを理解するための、非常に解像度の高い地図と言えるでしょう。 第5章:ハーマンモデル(HBDI)との比較と診断結果の考察 ハーマンモデル(HBDI:Herrmann Brain Dominance Instrument)は、正式名称を「ハーマン・ブレイン・ドミナンス・インストゥルメント」といい、脳の特性に基づく思考の優位性、いわゆる「利き脳」を可視化するツールです。 EGが4つの思考特性と3つの行動特性で人の傾向を捉えるのに対し、HBDIでは思考様式を以下の4つのゾーンに分類します。 HBDIの4つのゾーン HBDIでは、どのゾーンの思考をより自然に、あるいは優先的に使う傾向があるかをスコアで可視化します。 実際の診断結果から読み取れる傾向 2016年2月29日に私が受けたHBDIの診断結果では、以下のスコアが出ました: この結果から、特にDゾーン(概念的・創造的思考)が非常に高く、最も優先される思考スタイルであることが分かります。HBDIでは、スコアが67点以上を「優勢領域」、34点〜66.5点を「使用可能領域」、33点以下を「回避領域」と定義しています。 私の場合、BCDの3つが優勢領域に入り、特にDゾーンが100点を超えているため、創造的思考が最も強い傾向にあります。一方、Aゾーン(論理的・分析的思考)は使用可能領域にあり、必要に応じて使えるものの、好みとしてはやや低めです。 このプロファイルは、全人口の中でも約10%程度しか見られない比較的珍しいタイプとされており、非常に多彩な思考スタイルを持っている可能性が高いとされています。 多様性とバランスのある思考スタイル この診断結果から読み取れるのは、以下のような特徴です: これらの異なる性質の思考モードをバランスよく、しかも高いレベルで使いこなせる可能性があります。人事、コンサルタント、教育者、セラピストなど、多角的な視点と対人スキル、創造性が求められる役割で力を発揮しやすいタイプです。 一方で、どの領域にも強く関心がある分、一つの専門分野に深く特化することが難しい場合や、周囲から「何を考えているのかつかみどころがない」と思われる可能性もあります。 第6章:簡易診断結果から読み取れる自己理解 2025年9月28日に行った簡易診断の結果では、以下のようなスコアが得られました: この結果から、私はまず何よりも人間関係や他者の感情、チームの調和といったC領域の要素を非常に重視する傾向が強いことが分かります。共感力が高く、人と協力したりサポートしたりすることに喜びを感じるタイプです。 加えて、D領域も高得点であることから、新しいアイデアを生み出す力や、物事の本質・全体像を捉える力、未来志向の思考も私の大きな強みであるといえます。 自覚と傾向の理解 Cタイプが満点、Dタイプも高得点という結果から、私は人と話すことや新しいことを考えることが好きであるという自覚があります。 一方で、A(論理)とB(計画)のスコアが相対的に低いことから、データや事実に基づいた客観的な分析や、細かい手順やルール、スケジュールに厳密に従うことに対しては、CやDほどのエネルギーを感じない、あるいは苦手意識がある可能性もあります。 たとえば、会議では感情的な側面や新しい可能性については活発に発言する一方で、具体的な実行計画の詰めやリスク分析になると、興味が薄れてしまう場面もあるかもしれません。 こうした傾向をしっかりと自覚しておくことは、自己理解を深めるうえで非常に重要です。 第7章:コミュニケーションギャップの実例と異なるタイプとの関わり方 前述のように、約49%の人が職場でのコミュニケーションギャップに悩んでいるというデータがあります。これは、思考スタイルの違いが原因で、相手の言動が理解できなかったり、誤解が生じたりすることが多いということを示しています。 たとえば、CやDタイプ(感情的・創造的思考)が得意な人が、Aタイプ(論理的思考)やBタイプ(計画的思考)の人と仕事をする場合、次のようなすれ違いが起こる可能性があります。… Continue reading 思考特性と行動特性
行動経済学から考える 認知 状況 感情
行動経済学について 私たちは普段、自分がしっかり考えて物事を選んでいると思いがちです。しかし、後になって「あれ?なんであんなことをしてしまったんだろう」と不思議に思うこと、意外と多くありませんか? 経済は、私たち一人ひとりの日々の選択や行動の積み重ねによって成り立っています。だからこそ、その行動の主体である「人」の心の動きを理解することがとても重要になります。 行動経済学の世界では、私たちの意思決定がなぜ常に合理的とは限らないのか、その背景にある思考の癖や感情の影響、そして目に見えないメカニズムに注目します。難解な理論ではなく、日常の中で「なんでこんな選択をしたんだろう?」という疑問の裏にある仕組みを解き明かしていくのです。 私たちの思考には、基本的に2つのモードがあります。行動経済学ではこれを「システム1」と「システム2」と呼びます。 システム1は直感的なモードで、素早く自動的に判断を下します。努力をほとんど必要とせず、例えば目の前にボールが飛んできたときにとっさに避けるような反応です。 一方、システム2は熟考モードで、注意とエネルギーを使ってじっくり考える働きをします。複雑な計算や論理的な文章の理解などに使われます。 この2つはうまく連携していますが、疲れていたり時間に追われていたりすると、システム1が前面に出やすくなります。システム1の判断は効率的ですが、認知バイアスと呼ばれる思考の癖によって、非合理的な選択をしてしまうことがあります。 たとえば有名なものに「サンクコスト効果(埋没コスト)」があります。これは、すでに費やした時間やお金、労力を理由に「今さらやめられない」と感じてしまう心理です。プロジェクトや人間関係がうまくいかないと分かっていても、過去の投資を取り戻そうとしてさらにリソースを注ぎ込んでしまうのです。しかし冷静に考えれば、これから使う時間やお金は、もっと有益なことに使えるかもしれません。 ここで重要になるのが「機会コスト」という考え方です。サンクコストにとらわれると、未来のより良い選択肢を見失ってしまいます。たとえば、面白くないと分かっている映画を「チケット代がもったいないから」と最後まで観てしまう。あるいは、自分に合わない習い事を「月謝を払っているから」と惰性で続けてしまう。こうしたことは、日常の小さな場面でもよく見られます。 次に紹介するのは「確証バイアス」です。これは、自分の信念や考えを裏付ける情報ばかりを無意識に探してしまう傾向です。たとえば、欲しい商品があると、良いレビューばかりが目に入り、悪いレビューは「たまたまだろう」と無視してしまう。政治的な意見でも、自分の立場に合ったニュースばかりを信じ、反対意見には耳を貸さなくなる。これも典型的な確証バイアスです。このようなバイアスが強くなると、視野が狭くなり、客観的な判断が難しくなります。 さらに、私たちの選択は「状況」にも大きく左右されます。自分で主体的に決めているつもりでも、実は状況が意思決定をデザインしていることが多いのです。代表的なのが「フレーミング効果」です。これは、同じ情報でも伝え方や見せ方(フレーム)によって、受け取り方や判断が変わってしまう現象です。 たとえば、ある手術の説明で「成功率90%」と言われるのと、「失敗率10%」と言われるのでは、どちらが安心しますか? 内容は同じでも、前者の方が安心感がありますよね。これは、ポジティブな側面を強調するか、ネガティブな側面を強調するかの違いです。 また「おとり効果」という選択のデザインもあります。たとえば、カフェでSサイズが300円、Lサイズが500円だと迷いますが、そこにMサイズ480円が加わると、「それならLサイズの方が得だ」と感じやすくなります。これは、Mサイズという「おとり」があることで、Lサイズが相対的に魅力的に見えるようになる仕組みです。私たちの脳は、絶対的な価値を評価するのが苦手で、比較によって判断しやすくなるという性質があります。これを利用したのが「おとり効果」です。 そして3つ目の要素が「感情」です。感情の影響は非常に大きく、特に行動経済学で注目されるのは「エモーション(喜怒哀楽)」だけでなく、「アフェクト」と呼ばれる瞬間的で微細な感情反応です。たとえば、何かを見たり聞いたりした瞬間に「なんか好き」「なんか嫌だ」と感じることがあります。このアフェクトは、直感の羅針盤のように働き、私たちの判断や行動のショートカットになります。これを「アフェクト・ヒューリスティック」と呼びます。 たとえば、ある企業の名前に良いイメージがあると、深く分析する前に「この株は買いだ」と判断してしまう。逆に、ネガティブな印象があると、リスクを過大評価してしまうこともあります。ただし、アフェクトは必ずしも悪いものではありません。ポジティブな感情は、視野を広げ、創造性を高め、新しいことに挑戦する意欲を引き出す力もあります。これは「拡張形成理論」と呼ばれています。 大切なのは、自分が今どんな感情状態にあるのかを**自覚すること(メタ認知)**です。「今ちょっとイライラしているから、このテーマに否定的なのかも」「気分がいいから楽観的になりすぎているかも」といったように、自分の感情が判断に与える影響を客観的に見ることができれば、よりバランスの取れた意思決定がしやすくなります。感情を無理に抑えるのではなく、自覚してうまく付き合うことが大切なのです。 このように、私たちの選択は「思考の癖(認知バイアス)」「状況のデザイン(フレーミングやおとり効果)」「感情(特にアフェクト)」という3つの要素に大きく影響されています。その結果、私たちの意思決定は、理想的な合理性からしばしば逸れてしまうのです。 人間は、予測可能な非合理性を持つ存在です。完璧な合理性を目指すのではなく、「人間ってそういうものなんだ」と知ることが大切です。自分の意思力を過信したり、周囲の情報に流されたり、機会を逃すことを極端に恐れたりする。まずは、自分のパターンに気づくことが第一歩です。 これらのメカニズムを知ることで、「これはサンクコストの罠かも」「この選択肢の提示、フレーミング効果を狙っているな」と、一歩引いて状況を眺めることができるようになります。知っているだけで、無意識の力に振り回されることを減らせるのです。そしてその知識を、自分自身や周りの人のより良い選択のために活用していくことが目指すところです。 前述の「おとり効果」の話で、私たちは何かと比較することで判断しやすくなるという脳の性質に触れました。 そこで、最近の複数の選択肢の中から比較して決断したことを思い出してみます。 それは大きな買い物かもしれないし、仕事上の選択、あるいは今日の夕食のメニューかもしれません。そのとき、もし選択肢の数や種類が少し違っていたら、同じ選択をしていただろうか? 自分の選択を疑うわけではありませんが、その背景を知ることで、見え方が変わってくるかもしれません。 私たちの非合理で、でもとても人間らしい選択の裏側にある世界、その一端でも、感じてみることは、視野をひろげることの大事さにつながっていきます。 行動経済学で取り上げる理論となる 自制バイアス 自分を過大評価する 埋没ユスト 一度やったら、効果なくてもやり続け、時間を消費する 機会ススト 時間を費やしてしまい、本来できることができなくなる。 ホットハンド効果 ある事象が連続して起こると、同じことが起こる 確証バイアス 何かを思い込んだら、それを証明するばかりに根拠を集める 真理の錯誤効果 絶対にあり得えないと思いつつも、降り返り見たり聞いたりすると信じてしょう 疑わしいと思ったら真偽、真相を検証する。 五感 概念メタファー 人の上に立つ、出世する優位性といった抽象的な概念を具体的なもので比喩することで人が理解しやすくなる認知の枠組み 時間 双曲割引モデル 将来の大きな利益よりもすぐに手に入る利益をさせてしまう認知のクセ 人は時間を非合理に認知している。 解釈レベル理論 考えることが先になるにつれて思考は抽象的になっていく 快楽適応 人は何が起こっても繰り返しベースラインの幸福度に戻る デュレーション・ヒューリスティック 期間や時間を、直感的、時間的に判断してしまう。 サービス内容よりもかかった時間で評価してしまう。 状况… Continue reading 行動経済学から考える 認知 状況 感情
MBTIによる自己分析
Myers-Briggsタイプインディケータによる自己分析 Myers-Briggsタイプインディケータ(MBTI)という性格タイプ診断を用いて自分の特徴を表す。MBTIと呼ばれる性格タイプを診断するツールを開発したのは、イザベル・ブリッグス・マイヤーズとキャサリン・クック・ブリッグスの母娘であり、心理学者カール・ユングの心理的タイプ論に基づいて、個人の性格を分類するための指標として開発されたものである。 MBTIの目的は、人の性格・傾向を理解することで、自己理解や他者理解を深めることにある。キャリア選択、チームビルディング、教育、カウンセリングなどに活用される。MBTIは心理学的な理論に基づいているため、自己理解のためのツールとして使われることが多い。MBTIの16タイプは、それぞれ独自の性格傾向を表し、4つの指標の組み合わせによって決まる。 私は外交、社交タイプであり、仲介者と呼ばれるINFPのタイプに当てはまる。これは内面が豊かで、価値観を大切にする。そして、芸術的、創造的な傾向がある。この特徴は、人口の4~5%という比較的珍しいとされるタイプであり、この本質、強みと弱みを理解して、人との関わり方、そしてキャリアの可能性について深く考えていく。深い共感力、人への献身、これらはINFPの特徴の側面でもある。 INFPは、Iが内向型、Nが直感型、Fが感情型、Pが認知型を表す。Iは、エネルギーが内面に向かい、一人の時間を大切にする傾向がある。Nは物事を外見や可能性で捉えて、全体を見る視点を持つ。Fは意思決定の場面において、論理よりも感情や価値観を重視する傾向にある。Pは計画性より柔軟性や自発性を好む態度に特徴がある。 ここで注目したいのは、単なるタイプの組み合わせということではなく、私の核となるアイデンティティであり、支援者であり、仲介者であり、人々のメンターという存在になるということである。他者への深い共感力と、世の中をより良くしたいという気持ち、そして困っている人を助けたいという内面から湧き出る気持ちが強い願いを示している。そして、多くの場面で、論理的な正しさよりも、自分自身の内なる信念や直感に従って行動することや、日々の細々としたタスクよりは、未来の可能性や理想像に心を惹かれる傾向が強い。内向的というと静かなイメージがあるが、内から出る闘争心が沸き起こり、その内面には非常に熱い思いやりや理想を秘めていることになる。人口の4~5%というとてもユニークな存在である。 具体的に特徴を挙げていく。創造性がある。これは単に芸術的な才能、例えば文章やデザインといった分野に、それだけにとどまらない。問題解決においても、既存の考えにとらわれずに、新しい視点やアプローチを見つけ出す力を備えており、状況に応じて流れるような思考で、ユニークな解決策を生み出すことが得意である。創造性が問題解決につながるという特徴がある。また、情熱的な決意を持っている。一度、決めたことに対して、自分の価値観に合う目標を見つけた時に、驚くべき集中力と献身性を示していく。健康や幸福さえも二の次にして、その目標達成のために人生を捧げ、一心不乱に取り組み、一度決めたことには食らいついていくことになる。プロジェクトの細かい管理というよりは、その先にある大きなビジョンに集中する傾向がある。その情熱の源泉になっているのが、自らの価値観である。高い道徳基準、公平さへの強い希求、誠実さ、そして何よりも、自分らしさ、個性を重んじる姿勢が随所に見られる。自分自身が誠実でありたいと願うと同時に、他者にもそれぞれの道を見つけてほしいと、非常に受容的な態度をとることになる。だからこそ、相手の話をじっくり聞く聞き上手でもある。 ただし、このような理想主義や内向性の側面が、第一印象では少し違った形で受け取られる可能性もある。初対面では、その内面から内気あるいは少しよそよそしいと見られたり、あるいは感受性の高さゆえに過敏で傷つきやすいと捉えられたり、私が語る壮大なビジョンがちょっと現実離れしていて、実用性に欠けるといった印象も与えてしまう可能性もある。理想が高い分、現実とのギャップに戸惑うこともある。そうした誤解を受けやすい側面がありつつも、私が持っている内に秘めた思い、静かな自信を秘めていること、そして、一人の時間も、実は深く思考して、新しいアイデアを育むための重要な時間である。つまり、内向性が私のパワーの源でもある。このような特徴は、どのような光と影、つまり強みと弱みに現れるのだろうか。 強みとしては、まず利他主義が挙げられる。これはかなり特徴である。単なる優しさというレベルを超えて、自分自身の幸福よりも、他人の幸福を優先するという、強い道徳原則に基づいている。個人的な利益のために、倫理観を曲げることは、まず考えられない。そこが、支援者、仲介者と呼ばれる所以の一つでもある。他にも、誠実さ、自分の信念に正直であること、心の広さ、新しい考えを受け入れる柔軟性。そして、コミットメントと創造性、情熱。これらは強力な武器になる。 これらの素質は、裏を返せば弱みにもなり得るという現実面もある。例えば、利他主義や共感性の高さが、自己犠牲につながりやすく、他人の問題を優先するあまり自分のニーズを後回しにしてしまって、心身ともに燃え尽きてしまう危険性もある。他に過敏であること、他者の感情を過敏に察知できる反面、騒音や強い光、人間関係の緊張といった外部からの刺激に圧倒されやすく、時にはストレスを感じるということもある。また、理想の姿勢が非現実的と見られる原因にもなり得、壮大なビジョンは得意でも、それを実現するための緻密なステップや、細部への注意が遅くなりがちになる傾向がある。理想と現実のバランスをよくとり、過信すぎず、気をつけなければならない。 基本的に、人を信じやすい性格のため、利用されるというふうに見られることもある。しかし、私自身は、過去に人から利用されたことなどの経験はない。ただ、他のタイプより、高い可能性があるということである。人を疑うより、まず信じようとするところが、そのように見られるのかもしれない。これらの特性を踏まえた上で、INFPがよりよく生きていくための成長のヒントがある。 まず、自分自身の創造性と精神性を大切にして、育み続けることである。美しいものや知的価値を創造することに喜びを見出す。また、社会的な正義や、恵まれない人への奉仕といった活動も、精神的な成長につながるものになる。教育も重要である。知的好奇心が旺盛であるため、学ぶことに喜びを感じるタイプでもある。正しい知識を吸収する力は高い。一方で、実践的なスキルとして、話術を磨く必要性もある。意見の対立を、個人的な攻撃と捉えずに、建設的に対処する方法も学んでいく。繊細さゆえに、批判に深く傷つきやすいが、それを乗り越えて、成長の糧にする方法を身につけることが大切になる。リーダーの役割を考慮する点において、聞き上手であるため、全体像を見渡し、人を励ます力を持っている。組織に変革を徐々にもたらし、影響力のあるリーダーになる可能性がある。そして、完璧主義には注意が必要である。高い基準を持つこと自体は良いのだが、それが過剰になると、達成できない時に、自分を責めて、かえって創造性や幸福感を損なうことになる。現実的な目標設定が重要になる。 そして、キャリアについては、どのような仕事や働き方がINFPに合っているかを考えていく。核となるのが、価値観や信念と一致して、創造性や問題解決能力を活かせる仕事であり、これが鍵になる。そして、ある程度の自律性を持って働ける環境において強みを発揮し、一方でマイクロマネジメントをされる環境では、苦手な傾向がある。肯定的なフィードバックや、自分の貢献が認められることに大きなモチベーションにつながる。具体的な分野としては、アート、デザイン、執筆といった創造的な分野である。それからカウンセリング、ソーシャルワーク、心理学、理学療法といった人を支援する役割がこれに当てはまる。教育、特に個性を尊重する教育、年少期の教育や特別支援の教育も挙げられる。自分のペースで深く掘り下げられる仕事が向いている。 逆に避けた方が良いとされる職業は、厳格な階層構造があり、規則、ルーティーンワークが中心な仕事であり、自由な発想や柔軟性を制限してしまう可能性がある。例えば、軍隊や警察、一部のエンジニアリングの分野、金融など、対立や競争が激しい環境もストレスになりやすい。 チームで働く場合は、自分のビジョンに情熱を燃やすあまり、特に完璧主義的な面が出て、周囲と衝突する可能性がなきにしもあらず。でも、同じ目標を持つ仲間とは、強い絆で結ばれて、互いにサポートし合える協力的な環境では、素晴らしい力を発揮することになる。リーダーとしてメンバーの可能性を引き出し、励ます力があり、一方で対立を避けたい気持ちが強いあまり、難しい決断をためらってしまう側面もあるかもしれない。人間関係については、表面的な付き合いよりも、深く意味のあるつながりを求めることになる。 関係を築くのに時間はかかるかもしれないが、一度コミットすると非常に誠実で、まさに魂の伴侶を探し求めるような姿勢が見られる。外見や社会的地位といった条件よりも価値観が共有できるか、心から信頼し合えるかといった本質的な相性を何よりも重視する。ビジネスパートナーにはかなり自由を与えるタイプである。相手を信頼して束縛するよりは、独立性を尊重する傾向がある。自分自身の感受性の高さから些細なことで傷ついたり、無意識にビジネスパートナーに高い理想を求めたりするところは注意が必要である。好奇心旺盛で心が広く、関係がマンネリ化しないように常に新しい発見を求める魅力的なビジネスパートナーでもあると書かれている。 親としてはどうだろうか。これは素晴らしい親である。子どもの視点に立って、世界を見ることを楽しみ、子どもが自分自身の考えを持ち、ユニークな個人として成長できるよう、温かく見守る。非常に愛情深く、献身的であるが、ここでも感受性の高さが影響して、子どものネガティブな感情に過剰に同調してしまったり、しつけの場面で強く出られなかったり、あるいは感情的な負担を感じやすい側面もあるようである。基本的には、子どもの話をよく聞き、信頼関係を築き、強い道徳観を育む手助けをする、良い親になるとされている。 相性については、やはり同じような直感Nや感情Fを好むタイプ。例えばINFJ(理想主義で洞察力がある)やFP(創造性と社交性)といったタイプとは価値観が似ているので、自然に理解し合えて、強い絆を築きやすくなる。一方で、思考や感覚を好む、一見正反対に見えるタイプ。衝突のリスクもあるが、これらのタイプは、INFPが持っていない強み、現実的な視点や計画性を持っていることが多い。お互いの違いを尊重し、学び合うことができれば、弱点を補い合って、とても大きく成長できる可能性を秘めていることになる。違いがあるからこそ、豊かになれる関係もあるということである。 人と効果的にコミュニケーションを取る上で大事なことは、まず1対1の状況を好む傾向にあることである。大勢の中より個人的に本音で話せる場面を設けるのが効果的である。そして、敬意と思いやりを持つこと。感情的な議論は避けて、穏やかに誠実に接することが大切になる。批判的な意見を伝える際も言葉を選ぶことが大事であり、配慮が必要になるということである。対極から話し始めること、細部から入るより、まず全体像から目的を示すと、相手に理解しやすいようになる。あとは自分自身が優れた聞き手となり、積極的に耳を傾ける姿勢が重要である。そしてオープンマインドでいること。時に大げさに聞こえるかもしれないが、相手のアイデアにも面白がって耳を傾けることで、思いがけない発見があるかもしれない。対話を通じて、互いの考えを深めていくことを喜ぶことになる。 私は、深い理想主義であり、そして創造性を持ち、強い共感力と誠実さを胸に、自分の価値観に従って生きていこうとする人物である。その繊細さゆえに、葛藤や現実との折り合いに悩む側面もあるが、芸術的な表現や、他者を支援する活動を通じ、世界に貢献しようと願う姿は、光と影を象徴するものになる。非常に多面的で深い内面を持つ特徴がある。 自分自身の内なる声、つまり価値観に従って真実に生きたいと強く願う姿勢を持つ。同調圧力が何かと強い現代社会において、自分自身のユニークな価値観やらしさを大切にして生きていくことは、どれほどの挑戦であり、また同時に、どれほど大きな力の源泉となり得るものか、考えてみるのと、とても良い気づきになり、生命に活力と勇気がわいてくる。
なぜ正しいことが伝わらないのか
250927 なぜ正しいことが伝わらないのか 多くの管理職の方が、一度は経験するかもしれません。 「言っていることは絶対に正しいはずなのに、なぜ部下は動いてくれないのか?」 そんな、うーん…と考え込んでしまうような、もどかしい状況です。 たとえば、報告・連絡・相談、いわゆる「報連相」。 社会人としては当然のこと。日本のビジネスコミュニケーションの基本とも言えるものです。 しかし、「しっかりやりなさい」と伝えても、なかなか部下の行動につながらない。 誰もが正しいと思うはずの“正論”が、空回りしてしまう。 そんな場面、ありませんか? 今回は、この「正論が通じない」という現象の裏側にある、心理メカニズムについて考えていきます。 どうすれば、相手の心に響き、自発的な行動を促すコミュニケーションが取れるのか。 本書では、そのヒントを解説していきます。 コミュニケーションとは、単に論理の正しさだけではありません。 そこには、感情の動き、上司と部下の関係性、そして言葉を伝えるタイミングなど、 人間的な要素が深く関わっているのです。 たとえば、報連相のような指示が、すぐに受け入れられない場面。 内容だけ見れば、反論の余地はないはずなのに、なぜか伝わらない。 その原因は、言葉の“裏側”にあるかもしれません。 もし、上司がイライラした状態で「報連相をしなさい」と言ったとしたら? 言葉の内容は正しくても、 「私は正しい。君は間違っている。」という非言語的なメッセージが、感情のトーンに乗って伝わってしまいます。 人は、「君は間違っている」というニュアンスを受け取ると、無意識に防御態勢に入ります。 これを“プロテクトの状態”と呼びます。 頭では正しいとわかっていても、心が反発してしまうのです。 「君は間違っている」と繰り返し言われて、素直に「ごめんなさい、次から頑張ります」と言える人は、 よほど打たれ強いか、素直な人でしょう。 言葉の正しさ以上に、発する側の感情や、否定的なニュアンスが壁を作ってしまうのです。 そして、部下が動かないことに対して、上司がさらにイライラしてしまう。 「だから何度言ったらわかるんだ!」と、強い口調で正論を繰り返す。 これが、部下の心をさらに閉ざしてしまう悪循環につながります。 このような悪いサイクルは、上司と部下の関係だけでなく、親子や教育の現場など、 さまざまな人間関係で見られる、根深いパターンでもあります。 では、どうすればこの悪循環を断ち切り、 「よし、やってみようかな」と思ってもらえるのか? ここからは、具体的なアプローチについてご紹介します。 まず一つ目のポイントは、 その行動が「誰のためになるのか」を明確にし、具体的に伝えることです。 人は誰しも、社会や組織に貢献したいという思いを持っています。 そのためには、2つの視点からメリットを提示することが効果的です。 「あなた自身のため」そして「チームや組織全体のため」です。 たとえば、 「君がこまめに報連相をしてくれると、君自身の仕事がスムーズに進む。 そして、チーム全体の情報共有も進んで、良い効果が期待できる。」 逆に、報連相が滞ると、君も困るし、チームにもリスクがある。 そんなふうに、メリットと場合によってはデメリットも伝えることが有効です。 さらに、上司自身の経験談を添えることで、共感や理解が深まります。 「昔、自分が報連相を怠って失敗したことがあって…」 そんなストーリーが、相手の心に響くこともあるのです。 そしてもう一歩踏み込んで、 相手自身に「そのメリットを言語化してもらう」ことも重要です。 「もし君が報連相を意識するとしたら、どんな良いことがあると思う?」 そう問いかけることで、相手は自分の言葉で価値を認識し、納得感が深まります。 次に大切なのが、伝える“タイミング”です。 「レセプター」という言葉があります。 これは、相手がメッセージを受け取る準備ができている状態のこと。… Continue reading なぜ正しいことが伝わらないのか
エゴグラムによる自己理解とコミュニケーション
250925 エゴグラムによる自己理解とコミュニケーション改善 テーマ エゴグラム 交流分析 自己理解 エリック・バーンの交流分析に基づくエゴグラムの理論と5要素(CP・NP・A・FC・AC)を解説し、結果の受け止め方と活用法を示す。長所・出過ぎ・不足の観点でバランス認識を促し、自己理解と対人コミュニケーション改善に結びつける。講義者の自己診断結果を分析し、具体的な実践課題(共有、チェックリスト、意思決定の見直し)を提案する。 要点 1. エゴグラムは自己理解に役立つツールであり、性格や思考の癖、傾向を把握できる 2. 理論的背景はエリック・バーンの交流分析で、心の自我状態をペアレント、アダルト、チャイルドに分類する 3. エゴグラムではPとCをさらに分割し、CP・NP・A・FC・ACの5つの心のエネルギー要素として扱う 4. CP(クリティカルペアレント)は規範・理想主義・責任感・厳しさに関わる 5. NP(ナーチャリングペアレント)は優しさ・共感・援助・寛容・世話焼きに関わる 6. A(アダルト)は事実基盤の冷静な判断、論理性、計画性、合理性に関わる 7. FC(フリーチャイルド)は奔放さ、好奇心、遊び心、豊かな感情表現、本能的な自由に関わる 8. AC(アダプテッドチャイルド)は協調性、順応性、空気を読む、指示に従う、自己抑制に関わる 9. 5つの要素の配分バランスが個性を形作り、どれか一つが良い・悪いではない 10. 各要素には長所と出過ぎ・不足の課題があり、目的は自分固有のバランスパターンを知ること ハイライト “結果を見て一喜一憂するのではなく、自分もいろんな角度から見るヒントとして受け止めるということが大事になります。” “大切なのは、特定のスコアを目指すことではなく、何か平均的なバランスが良いということ。自分はこういう構成になっているのだなぁと、ありのままの自分を理解して受け入れること。” 章とトピック エゴグラムの理論的背景と構成 エゴグラムはエリック・バーンの交流分析に基づき、心の自我状態をペアレント(P)、アダルト(A)、チャイルド(C)と捉える理論に由来する。さらにPとCを2分割して、CP(クリティカルペアレント)、NP(ナーチャリングペアレント)、A(アダルト)、FC(フリーチャイルド)、AC(アダプテッドチャイルド)の5つの心的エネルギー要素として測定・可視化する。目的は各要素の配分割合(心のエネルギー分布)を理解し、個性と傾向を把握することである。 要点 交流分析の基本はP・A・Cの自我状態モデル エゴグラムはPとCを2分割し、合計5要素(CP・NP・A・FC・AC)を扱う 各要素は機能的に異なる心的エネルギーを表す エネルギー分布図として可視化し、割合のバランスで個性を把握する 良し悪しの評価ではなく、出過ぎ・不足の課題を含むバランス認識が目的 説明 交流分析では、人の心的活動を親・大人・子の3状態に整理することで対人関係や自己理解を促進する。エゴグラムはこの分類を細分化し、特にPをCP(規範・批判性)とNP(養育・共感)、CをFC(自由・奔放)とAC(順応・協調)に分け、A(現実的・論理的)を含めて5要素とする。各要素の相対強度をスコア化することで、心の力学と傾向を把握し、自己認識・コミュニケーション改善に活用する。 Examples CP(クリティカルペアレント):批判的な親。価値観・ルールに基づき判断し、他者にもそれを求める。厳しさ・理想主義・責任感。規範重視。 NP(ナーチャリングペアレント):養育的な親。優しさ・共感・援助・世話焼き・温かさ・寛容。困っている人を放っておけない。 A(アダルト):成人の自我状態として説明され、感情に流されず事実に基づく冷静な判断。論理的思考・計画性・合理性・現実的対処。 FC(フリーチャイルド):自由な子ども。社会的規範や他者目線に縛られず感情・欲求を素直に表現。好奇心旺盛・遊び心・豊かな感情表現・本能的奔放性・無邪気さ。 AC(アダプテッドチャイルド):順応した子ども。期待や状況に合わせ行動・感情を調整。協調性・空気を読む・指示に従う・自己抑制。社会適応のために後から身につける部分。 5要素は相互作用し、個々の配分バランスが行動・思考パターンを形作る どれか一つが良い・悪いではなく、状況適合と出過ぎ・不足の調整が重要 留意点 診断結果は簡易的であり、特徴把握と傾向の説明にとどめる… Continue reading エゴグラムによる自己理解とコミュニケーション
心を動かす原則
250924 人を動かす 心を動かす原則 「人を動かす」について考えます。人間関係を良くしたり、誰かに気持ちよく協力してもらったり、そういう場面で「役立つ知恵」を持たせます。これは、深い人間関係の理解に関わる話であります。その本質的な考え方や洞察について説明していきます。 この説明の特徴は、原則を提示していることにあります。つまり、状況に応じて使い分けをできるように、小手先の技というよりは、もっと普遍的な。人間関係の土台になるような考え方表面的な操作ではなく心からのつながりをどう築くかこの話において説明していきます。 まず最初に強調するポイントが、話すことだけではなく聞くことの力が大事だということです。相手の話を最後まで口を挟まずに聞けること。たとえ、同意が得られない内容であっても、あるいはすぐには理解できなくてもまずは受け止めようという姿勢が大事になります。聞くという行為は、相手に対する尊重であり、相手を受け入れる最もわかりやすい形になり、お互いで尊重の気持ちが高まります。あなたの考えには価値があります、あなたの存在をしっかりと認めますよそのような無言のメッセージが含まれます。人は、自分が受け入れられているという感じになると、心理的な壁が低くなります。そして、心を開きやすくなり、防御する必要がないと感じるようになります。受け入れられるという安心感が、相手の態度を変えるきっかけになります。 次に挙げることは、相手の自己重要感を満たすことであります。つまり、相手に,自分は大切な存在なんだと感じてもらうこと。それが自己重要感であります。言葉にするのは簡単かもしれませんが、実際となると難しい気もします。うわべのお世辞じゃなくて、心からの言葉が必要であります。ポイントとなるのは、具体性と,真実性が必要になります。例えば、意見をもらうときに、「私が見落としていた視点で本当に助かりました。」みたいな感想をあげるとよいです。具体的に何がどう良かったのかを伝えてあげることが大事です。そして、それはやっぱり心からそう思っている必要があります。人は本心からの言葉かどうかを意外と敏感に感じ取ります。根底にあるのは、やはり,相手への関心と敬意です。誰しもが持っている、認められたいという欲求に誠実に応えることが、相手の心を動かす鍵になります。 そして次は、相手の利益を示すことです。自分がしてほしいことを頼むだけでなくて、これをすると、あなたにはこんないいことがありますと、相手目線でメリットを提示してあげることが大事です。それを手に入れるための具体的な道筋を示すことで、相手が自発的にやりたいと思えるようにします。これは、かなり相手の立場に立つ共感力が試される部分でもあります。自分の欲求を通すという発想から、相手の欲求とか関心を満たす、お手伝いをするという発想への転換が求められるわけです。これをやれば、あなたは、あなたが持っている問題を解決できますよ。あなたが目指している目標に達成に近づけることができますよというように説明してあげると良いです。ここで注意したいのは、相手にとってそれが本当に利益であるかどうかということです。自分が,利益だと思って思い込んでいるだけでは、やっぱり相手の心には響きません。そのため、相手が何を価値あるものを感じているのか、日頃から理解しようと努めるということが前提になります。相手を深く理解しようとする姿勢が、ここでも重要になります。 人間関係そのものを良好に保つためのより具体的な行動についても説明していきます。人に好かれる原則とも言います。相手に対して純粋な関心を持つこと、外見を整えること、そして笑顔で接することです。笑顔には価値があるとよく言われますが、これは一見当たり前のようなことであるが。意識しないと意外とできてないことかもしれません。また、相手の名前をきちんと覚えて会話の中で使うこと。相手の関心事を知ってその話題に触れること。心からの称賛を伝えること。これらは一つ一つは小さな行動かもしれませんが、積み重ねることで、あなたを大切に思っていますよというメッセージになって、信頼関係の強固な土台を築いていきます。地味でありますが、人間関係における複利のような効果があると言えるかもしれません。ここでもやはり話をよく聞き、相手を理解するという基本がすべての行動の質を高める鍵になっていると言えます。関係性の土台作りであり、人間関係を高めていく効果でもあります。 現実には、どれだけ良い関係を築こうとしても、意見が食い違うこと、対立してしまうことあります。その時に、ちょっとした意外なアプローチで議論をしないこと、も必要です。議論をしない議論であります。特に感情的な言い争いというのは多くの場合、相手をさらに頑なにしてしまうと、本質的な解決にはつながりにくくなってしまいます。目的が相手を論破にすることになってしまい、たとえそれが正論であっても相手は反発したくなります。人は自分の間違いを他人から,指摘されるのはやはり嫌がります。相手の間違いを直接指摘したり批判したりすることを避けるように進めていきます。 ではどうやって合意に至るのか説明します。もし自分が間違っていたらそれを素直にしかも迅速に認めることです。それにより、相手の警戒心を解いて対話の扉を開くきっかけになります。そして会話の進め方にも特徴があって,相手が「はい」と答えられる、同意できる点から話を始めることが有効です。共通の土台を確認することで心理的な距離を縮める。それから、できるだけ相手に多く話をさせる。自分の意見を主張するのではなく質問を通じて相手に考えさせて、あたかも相手自身が結論にたどり着いたかのように導く。自分で見つけたと感じたアイデアには、人は納得しやすいものですから。これはオーナーシップ感覚を刺激するテクニックとも言えます。 自分で見つけた結論なら受け入れやすくなります。さらに相手の言葉の裏にある感情にも気づきます。例えば怒りという表面的な感情の奥には、悲しみや不安といった裏の感情が必ずあります。表面的な言葉に反応するだけでなく、言葉の奥にある本当の気持ちを察してあげる。これはかなり高度なスキルが必要です。例えば、会議で誰かが感情的に反応してきた表面的な感情としても、その背景には自分の提案が軽視されてしまうのではという不安や、プロジェクトへの強い責任など、裏の感情があるかもしれないというそういう想像力が求められます。その根本にある感情に寄り添うことができれば表面的な対立を和らぐことが多いです。さらに美しい心に訴えかけるつまり相手の良心や,理想に働きかけることや競争心を刺激するというアプローチもあります。後者は使い方にもよりますが相手の動機付けのスイッチを押す方法として有効な場合もあります。要求するよりも相手の良心や理想に訴える方が気持ちよく動いてもらえる。これもまた相手への信頼がベースにある考え方です。 ここから、実践的な人を育て、成長を促すための原則について説明していきます。部下や後輩、あるいは自分自身の仲間との関係にも応用できます。この原則は人を管理するというよりは支援するエンパワーするという視点が強い特徴であります。例えば、褒める。これは注意とかフィードバックをする前に,まず相手の良い点や努力を認めることで相手が話を聞く姿勢を作りやすくするためです。あるいは命令ではなく依頼する。これは相手の主体性を尊重して、やらされる感じではなく、自分で決めていい、やっているという感覚を持ってもらうためです。他にも、自分の失敗談を話すことで親近感を高めたり、相手のプライドを傷つけないように配慮したり、特に良くないフィードバックは人前ではなく個別に伝えるといった配慮が重要です。そして、どんな小さな進歩でも。具体的に称賛することや相手の可能性を心から信じ期待を伝え、励ます。これらは相手の自信を育んで内なる力を引き出す働きかけと言えます。 これらの原則、全体を貫いているのは、罰とか強制によって人を動かすのではなく、相手の内側にある成長したい、貢献したいという意欲、つまり内発的動機づけに火をつけるという考え方であります。人が自ら進んで能力を発揮して,成長していけるような環境や関係性を作ることが必要になります。そして一方的におして、導くのではなく共に学び、成長し合える関係性を築くことが双方にとって豊かな結果をもたらすと価値観が根底にあります。単なる人を動かすテクニックというよりは、もっと根本的な人とどう関わるかという姿勢、あるいは哲学に通じます。 相手の話に真剣に耳を傾け、その立場や感情に寄り添って感謝や称賛を具体的に伝えて、無用な対立は避けつつも、建設的な対話を目指していきます。そして何より、相手の可能性を信じ、その成長を支援します。結局のところ、相手のことを深く理解しようと努めて、その上で,自分の行動を見つめ直し変えていくという一貫した姿勢がつながっていきます。つき焼き張りのスキルではなく、人間関係のOSをアップデートするような根本的な変化を促すものと言えます。時間もかかりますが、意識し続ける努力も必要ですけど、その分、気づける関係性の質問を大きく変わってくることになります。 以上で取り上げた様々な原則の中で日々の人間関係、例えば職場や仲間との、状況において完璧にやろうとしなくても良いのです。難しいと感じる原則をほんの少しでもいいから実践してみることが、これからできる小さな具体的な第一歩であり、小さな一歩を踏み出すことが大事です。 参考 人を動かす カーネギー 人間関係のレッスン http://www.atsushi-ichikawa.com/post-3401
部門横断型人材について考える
250923 部門横断型人材について考える 部署の壁を越えて活躍できる人材は、どの企業の組織でも求められている。部門横断型人材は、組織の中で異なる専門性を持つチームをうまくつなぎ、プロジェクトを推進する貴重な存在である。部門横断型人材に期待すべき役割について説明する。これはチームの一員として、あるいはリーダーとして働く人にとって、日々の業務に役立つ気づきとなる。 PMI(プロジェクトマネジメント協会)の2021年の調査によると、部門横断型にスムーズに動けるプロジェクトマネージャーは、全体のわずか10%〜15%しか存在しない。このデータは、専門知識と全体を調整する能力の両立がいかに難しく、まれであり、貴重であるかを示している。多くの人材は、どうしてもどちらかに偏ったり、固執したりしてしまう。 現状の日本における状況を見ると、特徴的な姿が浮かび上がる。経済産業省が2019年に行った調査によると、日本企業の人材の約70%が専門特化型である。これは、いわゆるジェネラリスト的な動き方ができる人材が統計的にも少数派であることを示している。1つの分野をとことん極めるキャリアパスが、伝統的に評価されやすい日本の雇用環境や文化に起因している。これは単なる個人の能力や意欲の問題ではなく、大きな社会的構造の要因が背景にあると考えられる。 計画的なトレーニングだけでは、貴重な部門横断型人材を育成することはできない。育成可能な部分とそうでない部分を分けて考える必要がある。育成可能な側面としては、考え方のフレームワーク、5W2Hによる状況整理、品質・コスト・納期などの管理、プロジェクトの健全性を図るスキルが挙げられる。また、SWOT分析による戦略立案、PMBOK(Project Management Body of Knowledge)の知識や体験の習得も研修を通じて体系的に学べるスキルである。 さらに、情報をわかりやすく伝えるスキルも重要である。例えば、複雑な情報をA4一枚にまとめる資料作成能力や、議論を可視化してまとめるファシリテーション技術もトレーニングで向上可能である。他部門との会話を理解するための基礎知識として、市場や顧客、営業が使う用語の意味、製造プロセスの大まかな流れ、設計で重視される基本的な考え方なども、異文化理解に近いが学習で習得可能な範囲である。ここまでは、ある程度トレーニングによる効果が期待できる領域である。 ここから先は、普段あまり語られない領域であり、見えない限界の壁が存在する。 短期間の研修やトレーニングでは、実務経験に裏打ちされた直感力を養うことは極めて難しい。これは多くの修羅場を経験する中で培われる、状況を一瞬で見抜くような勘所であり、暗黙知に近いものである。一朝一夕には身につかない。また、現実的な限界として、各部門の専門的な作業をすべて完璧にこなすことは非現実的である。例えば、部門横断型人材が設計者のように詳細なCAD操作を行ったり、製造技術者のように高度な生産設備の調整を行ったりすることは通常求められない。あくまでも各専門家をつなぐ役割が主軸となるべきである。 特に重要なのは、調整能力に深く関わる個人の特性である。協調性や物事を積極的に捉える俯瞰力といった、パーソナリティに近い要素が、部門の調整をうまく進める上で強く影響する。 協調性や俯瞰力は後天的なスキルというよりも、もともと個人が持っている資質や性格特性に根ざす部分が大きい。したがって、単に研修を受けさせれば誰もが優れた調整役になれるわけではない。スキルは伸ばすことができるが、経験に基づく直感や協調性のような資質は簡単には変えられない。 部門横断型人材の本当の強みは、個々のタスクを完璧にこなすタイプではないかもしれないが、点在する情報をつなぎ合わせて全体像を構築する力が非常に強いことである。また、異なる部門間の言語や文化を翻訳できる能力もある。営業部門が重視する顧客の声や市場の反応、生産部門が注意する効率、設計部門がこだわる実現性や長期的な品質など、それぞれの「当たり前」が異なる中で、部門横断型人材は中立的な立場で双方の意図を汲み取り、互いが理解できる言葉に置き換えてコミュニケーションを促進する。まさに翻訳者のような役割を果たす。 さらに、人と人との間の摩擦を調整する能力にも長けている。部門間の利害が対立し、意見がぶつかり合う場面でも、感情的なしこりを残さずに建設的な解決策へ導くソフトスキルを持っている。これも部門横断型人材の重要な価値である。部門横断型人材には、個々の工程の細かい作業責任まで求めるべきではない。強みを最大限に生かすためには、情報整理、取りまとめ、翻訳、伝達といったコミュニケーションのハブ、つまり情報が行き交う結節点としての役割に特化させるべきである。 組織全体の情報の流れを良くし、部門間の連携をスムーズにする潤滑油、触媒のような存在として機能させるべきである。その成果を測るには、個別のタスク完了数といったミクロな指標ではなく、組織全体の最適化がどれだけ進んだか、部門間の情報伝達のスピードや精度がどれだけ向上したかといった、重要目標達成指標で評価することが適切である。 個々の作業の成果ではなく、チームや組織全体のパフォーマンス向上への貢献度を評価するという考え方である。役割設計と評価の仕方はセットで考える必要がある。部門横断的に高いレベルで活躍できる人材は少数精鋭であり、組織のメンバー全員に同じレベルを求めるのは現実的ではなく、効率的でもない。 トヨタ自動車の主査制度は、特定の製品開発プロジェクト全体を俯瞰し、各部門を強力に束ねるリーダーが存在する制度であり、製品開発の総責任者として部門横断を専門職として確立した例である。同様に、多くのメーカーで見られるプロダクトマネージャー制度も、マーケティングから開発・生産・販売まで製品ライフサイクル全体に責任を持つ専門職として、部門横断の調整役を明確に位置づけている。 これらの成功事例では、部門間の調整や連携を特定の専門職として定義し、その役割を担う人材を戦略的に配置することの有効性が示されている。逆に、組織の誰もが部門横断的に動かなければならないという理想論や期待を先行させると、調整にかかるコミュニケーションコストや時間が増大し、物事がうまく進まなくなる失敗例もある。 専門性を追求する人材であれ、横断的な役割を目指す人材であれ、教育の機会は平等に設けるべきである。基礎的な知識や思考のフレームワークについては、広く学べる場で習得可能であり、組織全体の底上げにつながる。 すでに部門横断的な動き方で成果を出している人がいれば、その人が手本となり、自身のやり方や考え方を積極的に周囲に示すことで、ロールモデルとして後に続く人にとって大きな道標となる。 そして、会社として部門横断的な動きに対してどのような貢献を期待しているのか、具体的にどのような役割を担ってほしいのかを誤解なく、かつ継続的に伝え続けることが重要である。その際、一方的な押し付けにならないよう、本人の特性やキャリア思考に本当に合っているかどうかを注意深く観察し、対話することが求められる。 最も重要なことは、仕事を進める中で少しずつ実践してみようとする人が成長するという点である。どんなに優れた研修を受けても、たくさんの知識をインプットしても、それだけでは人は変わらない。大切なのは、ここで得た考え方や学んだスキルを、日々の業務の中でほんの小さなことでも意識して試してみることである。例えば、普段あまり接点のない部署の人に意識的に情報共有したり、会議で異なる意見が出たときに両者の意図を汲み取ってつなぎ合わせるような発言を心がけてみるなどである。 ほんの少しの実践の積み重ねが、個人の成長につながり、組織全体の連携力を高める第一歩となる。 画一的な期待を押し付けるのではなく、一人ひとりの強みを見極め、それを最大限に生かせるような役割や環境をデザインすることの重要性が改めて浮き彫りとなる。日々の業務の観察の中から、潜在的な翻訳者としての素質や可能性を持つ人材を、いかに早期かつ効果的に見つけ出すことができるか感度をたかめていく。部門横断型人材が自然と示すコミュニケーションのパターン、多様な意見への向き合い方、複雑な問題を整理しようとする際の独特なアプローチなどに着目することで、部門横断型人材のモデルを形成していく。
問題解決の考え方
問題の細分化・言語化・認知行動モデルによる自己コントロール テーマ 外部の複雑な課題と内面の扱いにくさに対して、「分ける→言葉で定義・共有→認知・感情・行動を客観視」という一連のアプローチを回すことで、解決策の精度と再現性が高まり、感情・行動のセルフコントロールと自己理解が深まる。日々の課題を要素分解し、小さなステップ化と内面観察を継続することが実践の鍵である。 要点 1. 問題解決の細分化(分ける)という思考法 問題は大雑把に捉えると有効な対策に至らず極論や思考停止に陥る。原因・要因・源泉・環境・人間関係・状況といった切り口で具体的要素へ分解し、解決可能な単位にまで細分化することで、的確な解決策に到達できる。大きなプロジェクトは小さなタスクに、トラブルは仮説検証で一つずつ潰す。チームでも有効で、効率と網羅性が上がる。 2. 言語化は細分化の最強ツール 言葉は思考を形作り細分化するための最強の道具。課題・問題・目的・目標などの定義を厳密に区別し、抽象を具体に落とすことで、現実をより細かく正確に理解・分析・共有できる。言葉の定義が曖昧だと議論が噛み合わず、問題解決のプロセスで支障が出る。 3. 感情の粒度(エモーショナル・グラニュラリティ)と自己コントロール 感情をどれだけ細かく多様な言葉で認識・表現できるかが『粒度』。粒度が低いと『ムカつく・最悪』など大雑把で強い表現に頼り、原因不明の不快に振り回され衝動的行動を招きやすい。粒度が高いと、混ざった感情を正確に特定し、原因と状況に合致した建設的で持続可能な対処を選べ、セルフコントロールが高まる。 4. 自己理解の細分化:認知行動モデル(状況・認知・感情・身体反応・行動) 特定状況で自動的に起こる『状況→認知→感情→身体反応→行動』の5要素が相互に循環する。状況そのものではなく、それをどう認知するかが以降の反応を大きく左右する。認知が変われば、感情・身体反応・行動が連動して変化し得る。自分のパターンを観察・記述することで『自分の取り扱い説明書』を作り、再現性のある対処が可能になる。 5. 総括:細分化・言語化・自己理解を連動させる 外部の複雑さと内面の扱いにくさに対し、『分ける(細分化)→言語で定義・共有→認知・感情・行動の客観視』を一連のアプローチとして回すことで、的確で建設的な解決策に至り、感情と行動のコントロールが向上し、深い自己理解に繋がる。日々の課題や目標に細分化を適用し、要素分解・小さなステップ化・内面の観察を継続すると、新しい視界と気づきが得られる。 やってみること