251017 育成を任せてはいけない人の特徴
あなたのチームや組織の中で、この人に後輩や部下の育成を任せて大丈夫かなという人物。その見抜き方について考えていきます。リーダーシップやマネジメントで陥りやすい罠や注意点を説明していきます。この分析をつうじて、人を見る目、特にその人を育てる立場の人を見極める解像度を少しでも上げていくことになります。自分自身のマネジメントスタイルを振り返り、きっかけになります。多くの組織が今直面するであろう短期的な成果と、それから長期的な人材育成について、このジレンマが発生します。マネジメントの目的について整理し、その本質を見失いがちになるマネジメントとその構造について追及していきます。
目先の目標達成を追い求めるあまりに、組織の根幹であるはずの人、これを育成していく、育てる視点がいとも簡単に抜け落ちてしまうというメカニズムになります。経営マネジメントにおいて、予算達成はもちろん大事ではありますが、でも、それをどうやって達成するのか、そのプロセスこそが問われるべきであります。
マネジメントの本来の意味合いというのは、人を介して仕事を行う技術です。つまり、リーダー自身の力だけで成果を出すのではなく、メンバー一人一人が持っている能力を引き出して、彼らが目標達成できるように支援するので、結果としてチーム全体の、そして組織全体の目標達成につなげていく。これが理想であり、持続可能な組織の姿と言えます。現実的には、自分の目標達成や、あるいは自分の評価のためだったら手段を選ばない、そういうタイプの人も中にはいます。そうなると、メンバーはまるでコマ扱いみたいに目標達成のためだけの存在として扱われてしまいます。これはメンバーにとってかなりしんどい状況となります。そして非常にこれは危険な兆候です。短期的にはそのリーダーは勝ったように見えるかもしれません。数字は達成されて評価もされるかもしれない。しかし、その裏側で何が起きているかというと、メンバーは成功体験を得られないし、スキルも伸び悩むし、ただ疲弊していく状況になります。これは組織全体の活力を確実に削られていきます。表面的な勝利の代償というのが見えないところで、組織の将来を蝕んでいく。
可能性があるわけです。その手段を選ばないやり方としては、外的にコントロールしようとする手法であげます。批判する、責める、文句を言う、ガミガミ指摘する、脅す、罰を与える、目先の褒美で釣る。この外的コントロールという概念自体を少し整理します。相手の行動を本人の内側から湧き出る意欲や納得感ではなく、外からの圧力、つまりアメとムチです。バツとか報酬によってコントロールしようとするアプローチ全般を指します。リストにあるような行為は、その典型的と言えます。内発的な動機ではなく、外からの力で動かそうとすることになります。これが厄介なのは、短期的には効果があるように見えてしまうということです。プレッシャーをかければ、一時的に行動は変わるかもしれません。しかし、それはあくまでも表面的なものに過ぎない。その裏では、メンバーの自発性や主体性、そして何よりもリーダーに対する信頼感、
これが根本から破壊されていく可能性があります。恐怖や義務感で動く組織というのは、創造性や自立的な成長とは無縁になってしまいます。
世間を噂されるような企業の不祥事も突き詰めていくと、こういう本質を見失った勝利至上主義や短期的な利益至上主義が根本にあるケースが多いということになります。本来、教育で目指すべき人格形成の本質よりも、目先の試験の点数や試合の勝ち負けにこだわってしまいます。勝てば官軍とか、利益こそ正義みたいな考え方で、組織の隅々までにこう浸透してしまう。そうなると、目標達成のためなら、少しくらいルールを曲げても良いとか、人を傷つけても構わないといった、ちょっと歪んだ正義感みたいなものが生まれる土壌になりかねません。本来、組織を支える基盤であるべき人や信頼関係といった価値が二の次にされてしまいます。これは組織が持続的に成長していく上で非常に大きなリスク要因となってしまいます。こういう手段を選ばないタイプのリーダーは、たとえ自分のチーム、メンバーが目標を未達だとしても、他の部署から応援を引っ張ってきたりとか、外部から大きな案件を獲得したりして、帳尻を合わせるのがとてもうまい振る舞いをします。ここが評価の難しいポイントでありますが、同時にその本質を見返る上でとても重要な点でもあります。
表面的には数字は出ている、目標は達成しているように見えて、一見するとできるリーダーだと評価されてしまうかもしれません。しかし、その内面を、中身をよく見ていくと、チームメンバーは誰一人として成長していないとか、達成感を味わえていないというケースがあるわけです。その数字という結果だけを見ていては、そのリーダーが本当に実力を高めていたのか、それとも、ただつじつま合わせが上手いだけなのか、見誤ってしまう可能性があるということになります。メンバーは、自分たちの力で目標を達成したという実感を得られないし、成功体験を積む機会も奪われてしまいます。これは短期的な数字達成の裏で、組織の未来を担う人材が育っていないという、非常に深刻な事態を意味しています。長期的に見れば、これは組織力の確実な低下につながります。
見せかけの成功に騙されてはいけないという警鐘でもあります。
一方で、本当に育成力のある良い指導者というのはどういうアプローチをとるかというと、たとえ厳しさがあったとしても、メンバー一人一人の状況や課題に真剣に向き合って、どうすれば目標達成できるのか。その具体的な方法やプロセスを一緒に考え抜いて、最後まで諦めずに粘り強く導いていきます。優れた指導者は、外的コントロールのような、ある意味安易な手法に頼ることはありません。なぜなら、彼らはマネジメントの本質というのをしっかりと理解しているからです。つまり、メンバー一人一人が持っている可能性を信じて、彼らの成長を促すことこそが、結果としてチーム全体の持続的な成長につながるということ。この人を育てるという視点、そしてそれを実践する粘り強さ、これを持っているかどうかが、育成を任せられるに値する人物かどうかの決定的な分かれ目になると思います。
さらに、勝ち負けの思考に偏りすぎている人も要注意であります。物事を捉える視野の狭さや時間軸の短さ、目の前の勝敗とか、自分の評価、短期的な成果、これに意識が向きすぎるあまり、より長期的で本質的な視点、それから組織全体を俯瞰するような客観的な視点が欠けている状態と言えます。例えば、自分がいる間だけ良ければいいとか、自分のチームさえ勝てれば他はどうでもいいみたいな、そういう発想につながりやすいです。自分の勝利が最優先で、組織全体の長期的な利益に、もしかしたら反するかもしれないことに気づかない。あるいは気にしないということです。
理念や経営という考え方と合わせて考えます。本当に強い組織というのは、特定のカリスマリーダーの手腕だけに依存しているわけではなく、その組織が大切にしている理念や価値観が深く浸透していて、それがメンバーの行動指針になっています。だから、たとえリーダーが変わったとしても、組織の根幹は揺るがないし、理念に基づいて自律的に判断できる、次のリーダーが自然と育ってくる、そういう土壌があるわけです。つまり、個人の力で合意に引っ張っていくような組織というのは、その人がいなくなると脆いかもしれないけど、理念や価値観がしっかりと共有されている組織は持続性があり、この視点というのは、組織のトップ、つまり経営層の姿勢にも直結していきます。また、トップが利益至上主義、短期的な成果主義に偏っていて、とにかく結果を出せというメッセージばかり発信していたらどうなるか。現場では疲弊する社員が増え、離職が相次ぎ、メンタルヘルスの問題が深刻化していくかもしれません。しかし、トップは利益が出ている限り、そうした現場の悲鳴に本気で向き合おうとしない、あるいは問題の本質から目をそらしてしまうかもしれない。それは組織として末期的な状況になりかねません。
逆に社員一人一人の幸福や成長を本気で願っているリーダーというのは、現場で起きている問題から目を背けないわけです。なぜ離職が続くのか、なぜメンタル不調者が出るのか、その根本原因を探って真摯に向き合って改善しようと努力する、そうしたその姿勢というのは必ず社員に伝わります。だからこそ数字さえ達成できれば、プロセスや人はどうでもいいという考え方は結局のところ本質的ではなく組織の長期的に蝕み、いつか必ず限界が訪れてきてしまいます。
スペシャリストは自分のパフォーマンスに焦点を当てがちになります。これは、優秀なプレイヤーが必ずしも良い指導者になるとは限らないということです。自分がプレイヤーとして高い成果を出す能力と、他者を通じて、あるいはチームとして成果を出して、さらにメンバーを育成していくという能力は、全く別のスキルが求められるようになります。もちろん、プレイヤーとして経験や、専門知識というのは指導の土台にはなりますけど、それだけでは不十分であり、むしろ過去の成功体験が逆に指導の足かせになることすらあります。自分ができたんだからお前もできるはずだとか、なんでこんな簡単なことがわからないんだみたいなそういう発想に陥りやすいということです。自分のやり方や価値観を一方的に押し付けてしまったり、メンバーがつまずいているポイントに共感できなかったりします。
経営者やリーダーとして真に成功するためには、単に自分の専門分野のスペシャリストだけではなく、人を育てる、事業を育てるという、そういう領域のスペシャリストになる必要があります。育成のプロとしての視点が、スキルが必要になってきます。個々のメンバーの特性を見抜いて、それぞれに合った関わり方や指導方法を選択して、彼らの内発的な動機づけを引き出して、長期的な視点で成長を支援していく、そういう能力です。自分のパフォーマンスを最大化することから、チームやメンバーのパフォーマンスを最大化することへ意識とスキルの転換が求められます。
後輩や部下の育成を任せるべきでない人物の特徴として、重要なポイントを浮かびあげてきました。1つ目は、目的なら手段を選ばず、メンバーを駒のように扱う傾向があります。2つ目は、相手を外からの力でコントロールしようとする、いわゆる外的コントロールです。例えば、批判、脅し、アメとムチなど上がります。3つ目は、短期的な成果ばかりを追い求めて人の成長という長期的な視点が欠けてしまいます。4つ目は、自分の勝ち負けに固執して組織全体の利益や他者への配慮が足りない。5つ目は、プレイヤーとしては優秀かもしれないけれども、自身のパフォーマンスにしか関心がなく、人を育てるという役割の意識やスキルが不足してしまいます。
これらの点は、誰かに育成を任せるかどうか判断する際、あるいは自分自身のリーダーシップを客観的に見つめ直す上で、非常に重要なチェック項目になります。単なる個人の性格や能力の問題として片付けるのではなく、こうしたリーダーシップが組織内で容認されたり、あるいはその短期的な成果によって評価されたりするような状況というのは、組織全体の健全性や持続可能性を脅かす非常に深刻な問題になります。人を育てられない、あるいは人を潰してしまうような組織に明るい未来がないと言っても過言ではありません。より大きな視点で見れば、日々の業務や短期的な目標達成のプレッシャーがいかに強くても、その中でいかに人を育てるかという、より本質的で長期的な視点を持ち続けて実践できるか、これこそが変化の激しい現代において、リーダーに求められる最も重要な資質の一つと言えます。