250103 話しが面白い人は何をどう読んでいるのか 話が面白い人って周りにいませんか。喫茶店で隣の席から聞こえてくる会話でも、会議でのプレゼンでも、何かこう行きつけられてしまう人。同じ本を読んだはずなのに、その人が語ると何倍も面白く聞こえる。その違いは一体どこにあるのかなんて考えたことありませんか。単純に知識が豊富なだけではなく、何か物事の見方そのものが違うような、そんな感覚がします。 その味方の秘密に迫る一冊であります。三宅香帆の「話が面白い人は何をどう読んでいるのか」について解説していきます。 実はその秘密は単なる読書量ではなく本の読み方、もう少し言えばインプットした情報を自分の中でどう解釈するかにあるということになります。速読術や多読術のようなテクニックの話ではありません。読んだこと、見たこと、聞いたこと、すべてを自分の言葉で語れる面白い話のネタに変えるためのいわば鑑賞の技術について書かれています。ただの情報を消費者で終わるのではなく、自分だけの意味を見出す意味の創造者になるためのヒントを得ることができます。 この5つから、あなたの会話を、そして世界の見方すらも変えるかもしれないインプット術の核心部分を探っていきます。読書とは、話のネタ帳を作ることであります。これは、ただ情報をインプットするだけではなく、本を読みながら感じたことや、考えたことをいつでも引き出せるネタとして,ストックしていく、そういうイメージであります。そのような活動を鑑賞の技術として捉えていきます。普通、鑑賞というのは絵画や音楽を思い浮かべるかもしれませんが、この本では読書も同じであるということです。本の内容を受け身で摂取するのではなく、能動的に味わって解釈して、自分のものにしていく。その一連のプロセスが鑑賞ということになります。 読書というと、つい勉強や知識の吸収みたいに、何か正解があるようなイメージで捉えがちですが、鑑賞と捉えると、よりクリエイティブな,自由な行為に思えてきます。間違いというのはなく、自分がどう感じたかがすべてであります。情報を受け取って「知っている」で終わる人と、それを干渉して自分なりに語れるようになる人の違いが大きく分かれます。 話が、面白い話ができるという人は例外なく後者であります。では、どうすれば読んだ本を単なる知識から語れるネタに昇華させるのでしょうか。特に重要な5つのポイントを,これから説明していきます。 まず一つ目のポイントが比較することです。多くの人が無意識にやっているかもしれませんが、同じジャンルの中だけで比べるのではなく、全く関係ないありとあらゆる作品と比較せよということです。人間が得意なことは比較して組み合わせることでもあります。全く異なる領域にある2つのものを、結びつけた時に予期せぬ化学反応が起きて、新しい意味が生まれます。例えば、最近読んだビジネス書に書かれていた「組織論」と、昔見た映画に出てきた船のクルーの関係性を比較してみるとかです。ビジネス書で言っていた心理的安全性を高めるリーダーシップは、映画で船の中でやられていたことみたいに、片方だけしていても出てこない視点があります。全く違うジャンルを混ぜて新しい文脈を作り出すことで、誰も思いつかないような独自の視点が生まれます。 これがあの人の話は、切り口がユニークだと思わせる源泉にもなります。全く関係のないジャンルのもの同士を結びつけるのは、発想力が要ります。 日常的にどういうことを意識すれば、バラバラな知識が、点と点をつなぐ星座みたいに見つけやすくなるのでしょうか一つコツがあります。これは、何かに似ていないとか、常に自問自答をする癖をつけるということです。本を読んでいるとき、映画を見ているとき、誰かの話を聞いているとき、どんな,時でもこの構造のこの感情この展開前にもどこかで見たものと似ているなぁと考えることです。そのどこかの範囲を自分の専門分野とか好きなジャンルに限定しないそれだけで脳は勝手につながりを探し始めます。最初はうまくいかなくても繰り返すうちに思考の瞬発力が高まっていきます。常に似ているもの探しのアンテナを張っておくわけです。そうやって自分だけのつながりを見つけられれば、それはもう誰にも真似できない自分だけの話のネタになります。そして、そのつながりはあなただけのものだからこそ話に独創性が出て、人が惹きつけられるということです。比較することで独自の視点が生まれる。 その視点をどうやって深みのある話にすれば良いのでしょうか。単なる思いつきで終わらせないために、そこで重要になるのが2つ目のポイント、抽象化するということです。物語の具体的なあらすじや出来事から、より大きなテーマや教訓、普遍的なパターンを抜き出す作業になります。非常にラディカルで興味深い視点があって、抽象化は読者の仕事であり、作者には真似できないものでもあります。作者には作品に込めたかったテーマというものを確かにあるはずです。読者がそれを完全に無視して自分の解釈だけを押し付けるのは、果たして鑑賞と呼べるのでしょうか。作者の意図を汲み取る努力は重要です。ただ、本が言いたいのは、作者はあくまでも具体的な物語を作り出すプロであって、その物語から人生とは何かとか、愛とは何かといった普遍的な意味をどう吹き出すかは、最終的には読み手に委ねられるということです。 例えば、ある物語を読んで、「これは夢を追う若者の挑戦と挫折の物語だ」と要約する人もいれば、「いや、これは変わりゆく社会と、それに合う古い価値観と対立の物語だ」と要約する人もいます。どっちも間違いではありません。むしろその解釈の違いこそが面白いということになります。抽象化は自由なものであり間違いはないとあります。なぜなら私たちは自分の人生経験や価値観というフィルターを通してしか物語を読むことができないからです。そのフィルターを通して物語から自分だけの教訓を引き出す。このプロセスそのものが鑑賞の醍醐味であり、あなたの言葉に深みを与える源泉にもなります。つまり、本の内容を誰かに話す時も、ただあらすじをなぞるのではなく、この本で読んで色々考えたけど、私は結局人は変わりたいと願いながらも,変われない自分をどこかで愛しているという話だと思ったんだよというように、自分なりの抽象化されたテーマを語ることが大事になります。それができれば話は一気に立体的になります。単なる情報の伝達から、あなたの思想や人間性を伝えるコミュニケーションに変わる。聞き手は本の情報だけではなく、あなたのものの見方そのものに興味を抱くようになりますから、話が面白くなります。 そして3つ目は 「発見する」です。これがまた面白い視点であります。書かれていないこと、不在を読むことこそ批評の醍醐味であります。これは今まで作者が書いたことが全てだと思っていましたけど、そこに不在を探すという視点はなかったですね。なんかミステリー小説の探偵みたいです。まさに探偵の視点です。作者が意図的に隠したもの、あえて語らなかった背景、セリフの裏にある本当の気持ちを読み解くということです。作者は何かを隠したがっているという少し疑いの目を持って読んでみると良いです。例えば、ある家族の物語で食卓のシーンを何度も描かれるのに、なぜか母親だけが一度も発言しないとしたら、なぜ作者はこの母親を沈黙する存在として描いたんだろうと考えてみるわけです。その不在や目が、実はその家族が抱える問題の核心を示唆しています。そうすると、読者が単なる文字を追う作業から、作者との知的ゲーム宝探しのように変わっていきます。そして、その隠されたピースを発見した時に、物語は一層輝きを増すということになります。 このシーンで主人公が黙り込んだのは、きっと子供時代のあのトラウマを思い出していたからに違いない。作中では直接描かれていなかったけど、そう考えないとあの行動つじつまが合わないぞ、といった推理です。ただ、そこで一つ疑問が湧きます。その発見が本当に作者の意図したヒントなのか、それとも単なる自分の思い込み、深読み過ぎなのか、その境界線というのはどこにあるのでしょうか。その線引きは常に曖昧ですが、一つの目安はテキストに根拠があるかです。自分の解釈を支える描写や付箋が作品の中に複数見つかるかどうか。自分だけの妄想で終わらせないためには、必ず作品の中に戻って証拠を探す作業が必要になります。たとえそれが自分の深読みだったとしても、そのプロセス自体が作品を多角的に味わう訓練にもなります。自分だけの発見は、誰かに話したくてたまらなくなる最高のネタになります。確かにこの絵が一見ハッピーエンドに見えるけど、実はラストシーンのこの小物にバッドエンドを示唆する裏設定が隠されているんじゃないかと思って、なんて話をされたら、思わず詳しく聞かせて、となります。それができると、他の人とは全く違うレベルで作品を語れるようになります。 次に、よりマクロの視点で、社会や歴史という大きな文脈で作品を捉える視点があります。セットで考えると分かりやすいです。流行と不易です。つまり、変わるものと変わらないものを両方見ることです。まず流行から見ていきましょう。これは「時代の風」を読むということです。今、なぜこの作品がこれほどヒットしているのか。この時代に生きる人々が無意識に何を求めているのか。この作品が持っている、これまでの作品にはなかった新しさはどこにあるのか。そうした同時代的な視点を持つことです。例えば、数年前に大ヒットした作品を分析して、パンデミックを経て、人々がつながりとか絆といったものを強く求めれるようになった。その渇望にこの物語がうまく応えたから人気が出たんだろうなとか、そういうふうに考えるわけです。この視点があると、作品を現代的な文脈の中で語られることができます。ただ面白かったで終わるのではなく、今の私たちにとってこの物語は,こういう意味を持つんだという、より大きなスケールで話をすることができるようになります。自分の感想が社会批評的な鋭さを持つようになるということです。 一方、もう一つの雰囲気、つまり変わらないものを見る視点とは何でしょうかこれは時代を超えて、受け継がれる普遍的なテーマや物語のパターンのことです。神話や古典がなぜ今でも読まれ、強い影響力を持つかというと、そこには人間の根源的な感情に訴えかける普遍的な物語の型が繰り返し描かれているからなんです。例えば、英雄の旅立ち、挫折と再生、禁断の恋。「親子の葛藤」といったテーマです。今、私たちが熱狂している最新の作品も、実は何百年、何千年も、前から語り継がれてきた物語のパターンを現代風にアレンジしたものに過ぎないのかもしれません。古典的なテーマを知れば知るほど、物語を読むことは面白くなります。目の前の物語が、人類が語り継いできた壮大な物語の系譜の,どこに位置するのかがわかるようになると、その面白さも倍増します。一点の点が壮大な歴史という線の上に位置づけられる、そういう感覚です。この流行と不易という時間軸における2つの視点を持つことには、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。これは会話の幅と深さを劇的に広げます。常に世代が違う人と話すときに絶大な効果を発揮します。自分の好きなものが相手の知っている古典や名作とつながるわけだから、共通の道標が生まれます。今この瞬間の流行の話をしているようでいて、その背景には数千年の不易の歴史まで理解していることを示せる。これが会話に圧倒的な深みと,説得力を与えるようになります。友好だけを追っている、人とも古典しか語らない、頭の硬い人とも違う、両者をつなぐブリッジのような役割を果たすことができるようになります。 比較、抽象化、発見、そして流行と不易、これらを意識するだけで、明日からの読書体験、世界の見方そのものがガラッと変わりそうです。単純に本を読む技術ではなく、映画を観たり、音楽を聴いたり、あるいは人の話を聞いたりしている時にも応用できる、まさに万能の鑑賞の技術と言えます。
Author: wp-dsqzluv
新年のご挨拶
新年あけましておめでとうございます。 昨年の振り返り:成長への飽くなき探求 昨年は、自らの成長が関係者への推進力になるとの信念のもと、内なる変革に邁進した一年でした。 私自身の話し方に磨きをかけ、考えを的確に言葉にするトレーニングを重ねると同時に、アンガーマネジメントや経営心理学といった新たな分野の学びも始めました。こうした内省から得た知見は、自分の中だけに留めるのではなく、広域経済連携の発展のために関係者の皆様とも共有しています。 また、学んだことを実践に移し、事業連携に不可欠な人的リソースの底上げを目指して「キャリアコンサル制度」を導入いたしました。これにより、関係者の一人ひとりが持つ課題に、より深く向き合う環境整備を進めております。各種イベント活動に足を運び、社外活動にも精力的に取り組む中で、常に実体験の感覚を肌で感じ、自らの存在意義を問い続けてまいりました。 こうした内面と現場での経験を通じて、成長の鍵は常に「人」にあると再認識いたしました。その確信を胸に、本年は新たなテーマを掲げたいと思います。 2026年のテーマ:「人との出会いと繋がり」 今年のテーマは「より人に会う」こと 本年は、人との「出会い」と「繋がり」を何よりも大切にする一年にいたします。 私たちの目指す未来:幸福への貢献 私の全ての活動は、関わる皆様を幸福へと導くためのものです。その実現のため、自ら率先して、社内外で「馬が合う関係作り」を進めてまいります。強固な信頼関係こそが、個人と組織の持続的な成長の礎となると確信しているからです。 結びの言葉 結びに、皆様のより一層のご健勝とご発展を心よりお祈り申し上げます。 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。 市川 敦士
ブランド力を高める
251229 ブランド力を高める 企業が永遠のテーマとして掲げる「ブランド力」これについて説明していきます。 現在では、これほどまでに「ブランド」や「付加価値」という言葉が重要視されているのか。これには、単純に良いロゴを作ることや、キャッチャーなコピーを考えることや、そのような話ではありません。組織がどうあるべきか、その根幹が問われていることになります。 企業がブランディング戦略をどのように考えるのか。そして、経営、トップ、またはリーダーの情熱やリーダーシップ、それから社員の内なる力を引き出すインナーブランディングに関連していきます。多くの企業が自社の強みを一貫したメッセージとして伝えられていないという壁にぶつかります。 ブランドバリューチェーンについて、これはブランド構築のプロセスを分解して、自社の課題が一体どこにあるのかを可視化するためのフレームワークです。ブランドを形作る価値の源泉を大きく,3つの柱で捉えていきます。専門価値、人材価値、社会価値のの三つです。 専門価値は商品やサービスの独自性や優位性であり、いわゆる本業の強さになります。 次に人材価値です。これは従業員のスキルやエンゲージメント、つまり人の力です。 そして最後に、社会価値。企業の社会貢献性や存在意義。最近ではパーパスに近い概念です。多くの企業は、技術力、つまり専門価値は高いということを一点で突破しようとありがちです。しかし、それだけではもろくなってしまいます。 例えば、素晴らしい技術を持っていても、それを支える社員のエンゲージメントが低ければ、つまり人材価値が低ければ、いずれ技術は陳腐化して、人は離れてしまいます。逆もあります。社員の結束は固いけれど、社会的な意義を見出せない事業であると、働く誇りを持つことは難しくなってしまいます。 大切なのは、これら3つが企業のビジョンという一本の指針で連なっていくことであります。この一貫性こそが、顧客の心の中に、あの会社らしいという揺るぎない信頼感を築き上げていきます。つまり、ブランドづくりは、外に広告を打つ前に、まず社内に向けて自分たちの行動指針を作るような作業になります。専門と人材と社会という三権分立を、ビジョンという行動指針で束ねていきます。 その行動指針であるビジョンを制定して、その精神を組織全体に浸透させることは、誰の役割なのでしょうか。それを表すことが、経営トップ、またはリーダーが変われば、組織も変わるという、かなり強い意志です。 ブランドバリューチェーンは、戦略的な設計図のようなものであり、声高に叫んでいく経営トップまたはリーダーの本気というエンジンがなければ、1mmたりとも前進はしていきません。そのような関係性があります。経営トップがこの人は本気だという姿勢を見せることが最大の説得力になります。本気というのは、大声で叫んでいても伝わるものではありません。 経営トップがやるべき具体的な3つの行動があります。 1つは、会社の未来像を自分の言葉で語り続けることです。借りてきたような言葉ではなく、時にはかっこ悪くてもよく、自分の内から出た言葉で語ることが大切になります。 2つ目は、学びの機会をおろそかにせず、メンバーの成長に投資することです。口先だけではなく、有り金を使って社員の成長にかける姿勢を見せることが大事になります。 そして3つ目が、社員とのコミュニケーションを諦めない忍耐力です。コミュニケーションの一丁目1番地は、相手としっかりと向き合うことであります。これは、都合の悪い話から逃げないという覚悟の表明でもあります。 しかし、経営トップまたはリーダーが、そこまで本気でビジョンを語っても、それが現場の社員一人一人にまで浸透しなければ意味がありません。浸透させるプロセスについて、具体的な方法としては、インナーコミュニケーションまたはインナーブランディングとなる手法を発揮していきます。呼び方は違いますが、目指すところは。同じになります。 経営トップのエンジンから発揮される生み出した熱量を、どのように組織の隅々までに伝えていくか、伝わっていくかということが大事になります。 インナーコミュニケーションには、6つのステップで整理されます。認知、理解、共感、実践、評価、定着。 これは。ロジカルな話になりますが、ここで大事なことは、共感性を生むということです。心から共感して、企業がコントロールできるようになります。説明だけでは、共感は生まれません。 カルチャーブックやビジョンマップを作成して、ぼんやりしていた会社の思いに、くっきりとした輪郭を与えていきます。カルチャーブックは、企業の行動指針をまとめた冊子でありますが、それを配布しただけでは、ただの分厚い紙切れになってしまいます。重要なのは、その作成プロセスに社員を巻き込むことです。ある企業の例で、素晴らしいカルチャーブックを作ったのに、半年後には誰も読んでないという実情もあります。原因は、そこに書かれた挑戦を称えるという言葉とは裏腹に、実際に挑戦して失敗した社員が評価されない人事制度が残っていたからです。言葉と実態が乖離してしまっていました。 ビジョンマップというのは、社員一人一人が、会社がこうなったらいいなとか、自分はこうなりたいという夢や希望を付箋に書き出して、大きな模造紙に張り出すワークショップです。これを行うと、経営トップが思っている会社の未来と、社員が望む未来の間に、驚くほどのギャップがあることがわかったりします。そのギャップを、対話を通じて埋めていくというこのプロセス自体が、社員にとって自分もこの会社を作っている一員なんだという強烈な当事者意識、つまり共感を育むわけです。 ただビジョンを共有するだけではなく、そのビジョンが実現した先に、自分の幸せな未来もしっかりと描けるか、そこまでつなげることができて、初めて人は自ら動こうと思うのかもしれません。 それでも、まだハードルはあります。ビジョンに共感しても、日々の業務に追われる中で、新しい挑戦をすることに恐れてしまう。失敗したら評価が下がるかもしれないと思ってしまう。だからこそ、変化を恐れず、失敗を許容する文化の醸成と、そのための人事制度の刷新が不可欠になってきます。 これには、経営トップの覚悟が再び問われることになります。企業では、新しい挑戦を評価しようとしても、結局は短期的な売上目標を達成した社員の方が、高く評価されてしまいがちです。評価項目にいくら売上を上げたかだけではなく、どれだけ価値ある失敗をしたか、といった指標を加えるくらいの抜本的な変革が必要になります。価値ある失敗の数、それくらいやらないと、誰もリスクを取らなくなるものです。 デジタル化の台頭により、この覚悟の重要性を強調していきます。デジタル技術の陳腐化は、あまりにも早いものであります。だから、一度やれば十分というものではありません。経営トップが、自分はデジタルに疎いと認め、若手の意見に耳を傾け、彼らに権限を委譲する。そして、彼らの失敗を許容する。これができない企業は、あっという間に時代に取り残されると警鐘を鳴らしていきます。意思決定の難しさもあります。 情報が多すぎても少なすぎても判断は鈍ります。過去の成功体験が、今の正しい判断を邪魔することもあります。そこで、解決策として提案されるのが、仮説思考の訓練であります。これは、単に思いつきで行動することとは違います。例えば、新しいAI技術を使えば、顧客サポート業務をどのように効率化できるかという仮説を立てる。次にそれを,まとめ上げて、社内やお客様に話してみるのです。すると、そのアイデアは良いけど、リスクはないかとか、それなら、このような技術の方が良くないかとか、フィードバックがもらえます。この小さな検証を繰り返すことで、仮説の精度が徐々に上がっていきます。大きく失敗する前に、小さく軌道を修正していき、それが変化の速い時代における意思決定の方法でもあります。 ブランドを強化するブランディングというのは、結局自分たちは何者で、どこへ向かうのかという一本の壮大な物語を、社内外に対して手を変え、ひねを変え、語り続ける営みでもあります。そして、その物語は、経営陣だけで作るのではなく、社員一人一人の小さな挑戦や、失敗して、そこからの学びによって、より豊かになっていくものでもあります。その物語の核となるのが、ブランドパーパス、つまり事業の存在意義であります。かつては、「顧客のため」という視点が中心でもありましたが、現在では、それだけでは足りません。社会や地域、世界規模といったより広い視点に立って、我々が存在する意味は何かを語る必要があります。 このパーパスが明確であればあるほど、社員は日々の業務に大きな意味を見出すことができます。その物語をより具体的に組織の形として示していくのが未来の組織図という考え方にもなります。企業のストーリーには当然始まり、つまり創業のきっかけがあり、目指す姿があるわけです。この目指す姿の絵、つまり未来のビジョンを、具体的な組織図のレベルまで落とし込んで描いてみることです。五年後、十年後、我々の会社はどんな部署ができていて、社員はどんな役割を担って、どのような表情で働いているのか。この未来図を共有することで、経営者も社員も現在地からたどり着くとこまでの道のりを具体的にイメージできるようになります。自社のストーリーを他人ごとではなく、自分ごととして語れるようになるということです。それができれば、どんな時代や環境の変化があろうとも常に社会や顧客が満足する付加価値を提供し続けられることになります。そのような企業は、永続への道を開くことができます。これが、戦略論とリーダー論における共通した結論ということになります。 ブランディングとは、まず、経営トップがエンジンとなって未来を語る覚悟を決めることから始まります。そして、その情熱をインナーブランディングという仕組みを通じて組織全体に浸透させ、社員一人一人が挑戦と,価値ある失敗をできる文化と評価制度を整える、その結果として生まれる一貫した行動こそが、社会からの信頼と共感、つまり、本物のブランド力を築き上げる、ということになります。
なぜ、あの社長には優秀な人材が集まるのか
251229 なぜ、あの社長には優秀な人材が集まるのか 人材を惹きつけるリーダーシップと組織文化について説明していきます。 超一流のリーダーは、人が集まりたくなる舞台を作ることを意識します。普通は逆に考えます。まず優秀な役者を探して、その人たちに合った舞台を考える。しかし、私は逆の考えです。先に舞台を作り、それが大事になります。この逆転の発想が何を意味するのかを説明していきます。 リーダーの最も重要な仕事は、未来づくりと仲間づくり、この2つに集約されます。リーダーが語る未来のビジョンについて、こんな未来を実現したいんだという思い。それに対して周りがどう心を動かされるか。そこが全てということになります。この人の夢を応援したいや、この会社とならなんか面白いことができそうだとか、そういう感情的な共感が人を惹きつける力になるというわけです。ロジックで説明するのではなく、感情で共感してもらうことになります。 自分が今いる組織を思い浮かべてみてください。リーダーはWhyなぜやるのかを語っていますか。それともHowどうやるのかという指示をばかりをしていますか。その違いは大きいものです。日々の仕事の楽しさに直結します。要点は、Howの前にWhyを伝える重要性です。つまり、我々の存在意義や社会に対する約束、それを共有することで仕事がただのタスクではなくなります。自分が参加している壮大な物語の一部へと変わります。 その時、人は自律的に、そして創造的に動き始めます。そのストーリーに本物感を与えることが大切になり、私は創業時の精神を大切にして、社会や顧客からの信頼に応え続ける、そういう一貫した姿勢をもちます。口先だけの美辞麗空はすぐに見抜かれてしまいます。行動が伴わないWhyは、いわば空虚なスローガンしかありません。日々の小さな意思決定の中に、そのWhyがしっかりと反映されているか、その積み重ねが揺るぎない信頼になり、つまり本物感を創出するということになります。Whyで感情に訴えるのが一番であります。その思いをどうやって具体的に形にして、社内外の優秀な人たちを巻き込んでいきます。 自社の商品を売る前に、まず価値観を共有する仲間を集めるための魅力的な場面や物語を創造する戦略です。商品も売る前に仲間を集めます。その場のテーマを、社会課題というより大きな視点から捉えていきます。例えば、地域の過疎化を繰り止めたいとか、未来の子どもたちのために持続可能な環境を作りたいとか、誰もがそれは大事だと思えるテーマで舞台を作ります。 その舞台が魅力的であれば、同じ問題意識を持つ人々が、顧客や社員やそういう垣根を越えて自然と集まってきます。そして、その集まった人たちの前で、自社がこの課題、我々ならこう解決できますと主役として登場していきます。先に、観客と,共演者を集めて、そこに満を持して主役が登場するみたいになります。社会課題への取り組みが、企業にとって短期的な利益のための本質ではなく、心からWhyに基づいていて、もしそれが本物なら、その活動は一貫性を持ちます。長期的に継続されます。人々はその一貫性を見て本物かどうか判断して、口先だけならすぐに見抜かれてしまいますから、本物かどうか試されるわけです。 ある企業が,消費者インタビューから人々は人とのつながりに飢えているという仮説を立てました。そして自社の古いという一見ネガティブな特徴を昭和の懐かしさとか人の温かさを体感できるという新しい価値、つまり新しい舞台に転換しました。これは見事な発想の転換です。弱みが最大の強みになるという素晴らしいことです。リフレーミングです。これは自社の資産を深く理解しているからこそできる芸当でもあります。さらに大きなスケールではトップ自らが感じ、良い暮らしと社会という壮大な舞台を作り上げた企業の例も挙げられています。こうなると、個々の商品をいちいち説明する必要がなくなります。その舞台に参加することで、世界観の一部になること自体が、消費者にとって価値になる企業の思想がブランドそのものになります。 次に、どうやって人の熱量を維持して高めていくのか。社員一人一人を主役として扱うことが大事になります。会社の目指す未来、つまりWhyを体現しているような人材を意図的に引き上げていきます。そしてその活躍を社内に広く共有して、あの人のようになりたいとか、ああいう働き方を目指すような具体的なロールモデルを提示するわけです。一人の英雄の物語がみんなの物語になっていきます。例えば、ある社員がお客さんのためにマニュアルにない対応をして非常に喜ばれたという話を、ただ美談で終わらせません。それを社内報の記事にしたり、全社会議で本人に直接語ってもらったりして、これが主役にするという具体的なアクションです。誰を主役として取り上げるかで、会社が本当に大切にしているという無言のでも強いメッセージになります。社員本人のストーリーを友人や知人のネットワークを通じて広げていくことも推奨していきます。これは今の時代ならではのアプローチでもあります。会社の公式発表よりも周囲の人のネットワークを通じて信頼できるという感覚は誰にでもあります。会社のメッセージをより信頼性の高い個人の物語として広めるために、これは強力な手法です。 ただ、この社員を主役にする戦略には難しさもあります。誰を主役に選ぶかという社内人事関係の問題とか、主役になれなかった社員のモチベーションをどう保つとか、その課題は必ず出てきます。そこがまさにリーダーの腕の見せ所になります。 大切なのは、特定のスタープレイヤーだけを称賛するのではなく、様々な形で貢献している多様な社員にスポットライトを当てるということです。そして、英雄の物語をあの人は特別だからで終わらせず、彼の行動は我々のホワイを体現している。皆さんもそれぞれの持ち場で実践できるはずだと。全社員の行動につなげるメッセージを発信し続けることです。そして、この文化を根付かせるために、トップがすべきこととして、こだわりと割り切りを考え抜き、日々の対話でしっかりと浸透させることが重要であります。トップダウンの命令だけではなく、対話を通じた丁寧な浸透が大切であります。これもWhyの共有に通じます。こだわりは会社の根幹であるWhyや価値観、絶対に譲れない部分です。割り切りというのはそれ以外をHOW、つまり具体的なやり方の部分です。Whyには徹底的にこだわることをして、HOWは現場の社員を信頼して大胆に任せる。そのメリハリが、社員の当事者意識とクリエイティビティを引き出す上で非常に重要になります。 これらすべてを実践できるリーダーには、一体どんな資質が求められるのでしょうか。どんな状況でもブレない一貫性と、やはり本物感です。そしてもう一つ非常に重要なのが「人間くさいHow」という表現です。人間くさいHow、洗練されたスマートなHowではなく、これは人の意識や,行動にどう働きかけるかという非常に人間的なアプローチの重要性を示しています。机上の空論や綺麗な理屈だけでは人の心は動きません。多様な価値観を持つ人々の感情の機微を察し、時にはぶつかり合いながら信頼を築き、行動を促していきます。その泥臭くて試行錯誤に満ちた生々しいプロセスこそが成果を生む鍵でもあります。つまり、完璧でスマートな戦略家であることよりも、少し不器用でも人の心に寄り添える共感力のある人間であることの方が重要であります。結局のところ、どんなに立派なWhyを掲げて、どんなに巧妙な舞台を用意しても最後の最後で多くの仲間を巻き込めるかどうかはあの人が言うなら信じてみようとか、この人と一緒なら苦労も楽しそうだと周りに思わせるその人自身の魅力にかかっています。共感と信頼の,最終的な価値はそこにあります。今の日本には、そうした力強い言葉を持つリーダーがもっと必要だと、そういう考えがあります。 まず、なぜやるのかという根源的な問いから始めて、人々が思わず参加したくなる魅力的な舞台を築きます。そして仲間になった社員たちをその物語を英雄にする。これが優秀な人材を惹きつけて離さない、リーダーシップの様態とも言えます。 自社が本気で取り組むべき社会課題、それを解決するための舞台をどう構想するのか、しっかりと考えていきます。自社の技術やブランド、人の知恵といった無形の資産を棚卸しして、それを活用して人を巻き込む新しいストーリーを。考えられないか、思考を巡らしていきます。そうやって発想を広げてみると、意外なところに舞台の種が眠っている可能性が十分あります。
251222 マネジメント力を鍛える
マネジメント力の本質と向上法について考察していきます。マネジメント能力は生まれつきの才能だと思われがちでありますが、意識とトレーニングで身についていく技術でもあります。単なるスキル論を述べるのではなく、優れたリーダーシップの根底にあるものは一体何であるか、その本質について探っていきます。 世間では、KPIやフレームワークと。という話が多くありますが、最終的に行き着く結論が「人間理解」つまり「情の深さ」というとても人間味臭い要素であります。そもそも、才能であるか、技術であるか、この議論がよく展開されていきますが、マネジメントは人を介して行う技術であると定義できます。単にプロジェクトを管理するということとは、少し,次元が違う話になります。技術である以上は向上させられるということも前提としてあります。 まず、人のことをよく知らなければ始まることではありません。つまり、人間理解です。洗練された戦略論や最新ツールを学んだとしても、それを使うのも、その影響を受けるのも、結局は感情を持った生身の人間であります。人間理解の象徴として、経営の神様、松下幸之助が挙げられます。人使いの達人とまで言われた強みは一体どこにあるのか。それは、彼が持っていた独特の人間観でありました。人をどう見るかという混沌的なスタンスです。有名な逸話があります。優秀な技術者を周囲の猛反対を押し切って全く畑違いの営業部門に移動させたという話です。普通に考えたら,かなり無謀にも聞こえます。彼はその技術者の専門スキルだけを見ていなかった。その人の物事の本質をつかんで、誰にでも分かりやすく説明するのが抜群にうまいという本質的な才能を見抜いていました。これこそが単にスキルセットで人を判断するのではなく、 その人全体を深く見て、可能性を信じる人間観の現れであります。この人間観の根底にあるべきなのが、人を愛すること。さらに踏み込んでいくと愛情ということです。愛情という言葉がビジネスの文脈に出てくると、少しふわっとした精神論みたいに聞こえてしまう部分もあります。 愛情は決して感傷的な話ではありません。むしろ相手の成功を心から願って、そのためなら厳しいフィードバックも厭わないという本気の関与を指しています。その人の表面的なスキルや経歴だけではなく、その人が,内に秘めている可能性や、本人すら気づいていない強みを本気で引き出してあげたいと願うこと、その深いレベルの関心があるからこそ、その人を一方の側面だけで捉えるのではなく、人と人をつなぐ才能がある、みたいな常識を超えた本質が見えてきます。これが愛情と適材適所がつながるメカニズムになります。本気の関与という、深く相手を見ようとする姿勢そのものがマネジメントであります。そして、その人間理解を深めるプロセスで、人そのものも成長していきます。 人は考え方が変わることで、成長して人生が変わります。その考え方の変化を促す決定的な要因が2つあります。1つは、良書に触れることです。そしてもう1つが、自己能力を引き上げてくれる他者との出会い。非常にシンプルですけれど、志をついています。注目すべきは、どちらも自分以外の外部からの刺激であるということです。人は自分の中だけで考えていてもなかなか変われません。自分の殻を壊してくれるような本や人との出会いこそが成長の起爆剤になるというわけです。 マネージャー自身もこうした出会いを求め続ける必要もありますし、同時に部下にとっての自己能力を引き上げてくれる他者に自分自身がならなければならないということでもあります。これはなかなかタフな役割です。学び続けるものであり、同時に他者を生かすものでなければなりません。その両輪が求められるわけです。 そうした個人の成長を支える全体像として、マネジメント力が育まれるプロセスを3つの要素に分解していきます。資質、環境、そして本人の選択、この3つです。資質は、生まれ持った才能や性格、そして後天的に伸ばせる部分も含まれるとされるのが救いであります。次に環境、特に周りに目標を達成してくれるような優れた人がいるかどうかが重要であります。そして最後が本人の選択。どんな道を選ぶかという意思決定です。 資質、環境、選択、この3つはどう関係し合っているのか考えていきます。植物を育てることに例えると分かりやすいかもしれません。資質は種みたいなものです。もともとポテンシャルでもあります。そして環境は土壌や天候です。豊富豊かな土壌で太陽の光を浴びれば、種はよく育ちます。選択はどの土壌にその種をまくかとか、毎日水をやるかという農夫、その行動そのものであります。 多くの人は良い環境に恵まれないと言って嘆きますけど、良い本を手に取ることや、誰に会うか決めることや、そういう日々の小さな選択こそが自分の環境を主体的に作り出すということになります。良い選択を続ければ環境が良くなり、それが自分の質をさらに引き出してくれるというポジティブな循環がうまくいきます。逆に、悪い選択が悪い環境を呼んで、せっかくの資質を腐らせてしまうということもありえます。 これらのすべての土台に、やはりその人の人間観が透けて見えることになります。結局、出発点に戻ってきます。非常に美しい構造です。どんな本を選択するか、どんな人を素晴らしい環境だと感じるか、そのすべてに人をどう,見ているかという、その人の哲学が反映されます。だからこそ、小手先のテクニックではなく、まず自分自身の人間観を磨くことが重要だというメッセージにつながってきます。優れたマネジメント力を持つ人物とは、突き詰めれば情の深い人であり、情という言葉が結論に出てくるのは、なぜなのでしょうか。なぜなら、人は理屈だけでは動かないという、絶対的な事実に基づいているからであります。人は正論だけを言われても心が動きません。最終的には、「この人についていきたい」とか「この人のためなら頑張れる」って思わせる人間的な魅力、つまり情に引き継げられて、この情の深い人と人っていう言葉をもう少し分解すると、先ほど話した、また本気の関与ができる人ということになります。 情というのは、ただ優しいとか、感情的ということではありません。むしろ、相手の成長を心から願うからこそ、時には厳しいことも言う。部下の失敗を自分の責任として引き受ける部下が、本当にやりたいことのために、組織の壁を壊してでも道を作ってあげようとする。そういった相手に向けられた熱量のある働きかけそのものが情であります。この熱量こそが、人を惹きつける求心力の源泉であり、マネジメント力の鍵を握ると結論付けています。そう考えると、目指すべきリーダー像は、生まれ持った資質があって、それに甘んじることなく、良書や人との出会いを選択して、良い環境に身を置いて、学びによって資質を高め続ける。そして、そのすべての行動の根底に、人への愛情、そこから生まれてくる情の深さがあります。才能だけでも、後天的な学習だけでも、その両方を統合して人間的な深みへと昇華させていきます。それが真のマネジメントの道です。 才能か、技術かという二元論的な問いから始まった探求は、最終的に愛情や情の深さという人間的な本質へたどり着きました。マネジメント力とは、人をどう動かすかという操作的な技術ではなく、人をどう愛し、どう関わるかという自分自身の生き方そのものが問われる営みであります。
幸せ経営のすすめ
251201 幸せ経営のすすめ 企業の幸せ経営について説明していきます。最近、どの企業からも人手不足や人が辞めてしまうという話題をよく聞きます。人的資本経営という言葉も、よく聞かれるようになりました。この「幸せ経営」について解説していきます。ポイントとなるのが「幸せだから成功する」ということです。普通は逆の考えを持ちがちです。「成功したら幸せになれる」、その逆転の発想になるというのが今回のテーマのポイントになります。 これは単なる精神論ではなく、Googleやマサチューセッツ工科大学(MIT)での最先端の組織研究による膨大なデータをもとにたどり着いた、極めて戦略的なアプローチとなります。なぜ幸せが成功につながるのか、その内容を解き明かしていきます。今、経営の世界でなぜ「幸せ」という言葉が重要になっているのか、それは企業を取り巻く環境が根本的に変わっているからです。企業は採用が難しくなり、人材が流動化している環境に置かれています。つまり、企業は選ばれる側になってしまっています。そうなると、従業員にとって、この会社で働き続けたいと思ってもらうことがとても重要になります。それに加えて、人的資本経営という流れがあります。投資家は、あの会社は従業員という資本をどれだけ大切にして成長させているのか、という視点で企業を評価するようになります。 だからこそ、従業員のエンゲージメント、つまり仕事への熱意や貢献意欲がとても重要な経営指標にもなります。そのエンゲージメントを高めるには3つの視点があります。1つ目は仕事のプロセスです。自分で工夫したり、ある程度の裁量権を持って仕事を進めることができるかということです。2つ目は人間関係です。組織やチームの中で良好な関係を保つことが大事です。そして3つ目は仕事の意義です。自分の仕事が誰かの役に立っているという実感や使命感、責任感が大事になります。この3つが満たされると、人は仕事に集中できるということになります。 そして、このことが「幸せだから成功する」という話に関連してきます。ハーバード大学のショーン・エイカー氏は、幸福優位性(ハピネスアドバンテージ)を提唱しました。幸福感の高い従業員は、そうでない従業員に比べて生産性が30%、創造性は3倍も高いというデータがあります。このデータから、従業員が幸せを感じられるチームづくりというのがとても重要になります。Googleの調査では、生産性の高いチームの条件について、個人の能力やスキルの高さは、実はそれほど重要な要素ではないということがわかりました。Googleが突き止めた5つの条件のうち、圧倒的に重要である第一位の要素が「心理的安全性」です。 心理的安全性は、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授の定義では、「このチームなら対人関係のリスクをとっても安全だと感じられる共有された信念」のことであります。「こんなことを言ったらバカにされる」とか「失敗したら怒られる」など、そういう不安を感じずに安心して発言したり、挑戦したりできる状態のことです。心理的安全性が低い職場では、人は無意識に4つの不安から自分を守ろうとします。「無知だと思われたくないから質問しない」「無能だと思われたくないからミスを報告しない」「邪魔だと思われたくないから意見を言わない」「ネガティブだと思われたくないから懸念を伝えない」。良かれと思って黙っていたり、隠してしまったりすると、チームとしては成長することはできません。良いチームほどミス報告の件数が多いという事実もあります。これは心理的安全性の高さを表しています。ミスを報告しても罰せられない、むしろ「よく報告してくれたね、学びの機会としよう」と捉えられる文化があります。 次に、心理的安全性がどのようにビジネスの結果に結びつくのか説明していきます。これはMITのダニエル・キム教授が提唱した「成功循環モデル」となります。このモデルは組織が良い結果を生み出すための因果関係を表しています。組織の良い状態は、第一に人間関係の質からスタートします。まず、お互いを尊重し合って、心理的安全性の高い関係性を築きます。すると、多様な意見が飛び交ってアイデアが生まれます。思考の質が高まります。そして、「みんなでやってみよう」という主体的で協力的な行動の質につながり、結果として「良い結果の質」が生まれることになります。良い結果が出ると、チームへの信頼や誇りが生まれて、さらに関係の質が高まります。このように好循環に入っていきます。心理的安全性があらゆる成果の出発点になります。 この心理的安全性と関係の質において注意点もあります。厳しい意見を言わなくなって、逆にパフォーマンスが落ちてしまうということも懸念されます。心理的安全性と仕事の基準の高さ、この2つは両立させて考えなければなりません。エドモンドソン教授は「心理的安全性は馴れ合いとは違う」と明確に言っています。高い基準を求めつつも、そこに向かうプロセスにおいて挑戦を歓迎するということが大事になります。短期的にはうまくいかないことでも挑戦し続けて、やがて成功につなげることが大事です。その両輪があって初めて組織は学び、成長していくことになります。だからこそ、まず土台として人間関係の質を高めることが戦略的に重要になります。 自分のチームの関係の質が良いか悪いか、客観的に判断するのは難しいと思われます。感覚だけに頼っていると改善の方向性も分かりません。そこで紹介されたのは、「幸せデザインサーベイ」のようなツールです。これは従業員の幸福度やエンゲージメントという目に見えにくいものを、定量的に見える化するためのアンケート調査です。組織の状態をコミュニティ、コミュニケーション、チームパフォーマンスの3つの側面から調査いたします。そして個人の状態を体とマインドの2つの側面から、合計5つの要素を測定します。匿名で回答できるので、従業員も本音を出しやすいといいます。さらに調査して終わりではいけません。調査だけして出てきた課題に何のフィードバックもアクションもなければ、従業員は「どうせやっても無駄だ」という失望を感じ、状況は悪化しかねません。だからこそ、見える化して、フィードバックして、対話をして、アクションを起こす。このサイクルを回し続けることが何よりも重要になります。サーベイの結果をチーム全員で共有して、自分たちのチームの強みや課題について認識し合う。対話をして具体的に行動につなげる。このような緻密な繰り返しが、少しずつ組織の体質を変えていくことになります。 導入事例の紹介もありました。埼玉慈恵病院やヤオコーのような企業は、まさにこのサイクルを実践しています。共通することは、人材教育はコストではなく投資だという考え方です。人をコストと考えるのではなく、価値創造の源泉として考え、あらゆる施策に表れていきます。メジャーリーガーの大谷翔平選手の話がありました。目標設定において、誰かの役に立ちたい、チームを勝利に導きたいという利他の心が根底にあるという分析です。 ただ「スキルを身につけろ」と言われるのと、「このスキルを身につければ、もっとチームを助けられるよ」と言われるのとでは、モチベーションは全然違います。つまり、スキルというノウハウを教える前に、まず「なぜ・何のためにやるのか」という動機を教え、火をつけることが重要だということです。これは経営も全く同じで、理念や使命感、社会にどう貢献したいかという利他の心を経営の基盤に置くことが、従業員の心を動かし、エンゲージメントを高める上で不可欠になります。 モノの満足から心の満足へという社会の変化とも一致します。そして、この心を起点にするというのは、経営者が全従業員と面談して一人一人の心に真摯に耳を傾けるとか、出てきた課題に必ず対応する、そういう非常に具体的なアクションにもつながります。それは、「会社はあなたのことを見ています」という強力なメッセージになって、信頼関係、つまり成功循環モデルの起点である関係の質を定期的に高めていくことになります。 人手不足という外部環境の変化があり、個人の幸福度が生産性を上げるという研究、そして、Googleも突き止めた心理的安全性があり、それがMITの成功循環モデルの出発点になっている。そのように関連します。そして、そのすべての根底にあるのは、「人をどう見るか」という経営の哲学やポリシーにつながっていきます。 これは企業の経営者や幹部の話だけではなく、一人一人が自分のチームや部署でできることもあるはずです。理念や使命感というと少し壮大に思われるかもしれませんが、もっと身近なレベルで考えることができるはずです。日頃からほんの小さなタスクにおいても、「それが誰かのためである」とか「これをやるとチームが少し前に進むはずだ」というように、意識的に誰かの役に立つという視点と結びつけることが大切です。仕事への取り組み方や自分自身の気持ちに小さな変化が生まれれば、そこから周囲の関係の質を変える一歩になるはずです。
コーポレートウェルビーイング
251111 コーポレートウェルビーイング 従業員の幸福感と企業の成長をどのように結びつけていくのか考えていきます。コーポレートウェルビーイングという言葉について、なぜ今の時代にこれほど注目されているのか、それが会社やそこで働く社員にとってどのような意味を持つのか、説明していきます。これは単なる健康診断や福利厚生の話ではありません。もう少し本質的で、未来を見据えた戦略の話になります。 コーポレートウェルビーイングは、体の健康や心の元気だけを意味するものではありません。もっと広い概念があります。もちろん、身体的な健康や、精神的な健康(精神病にならないための予防的な健康)は、土台として非常に重要です。しかし、コーポレートウェルビーイングは、それに加えて、日々の仕事や生活における心の豊かさ、つまりポジティブな感情ややりがい、自己実現といった幸福感、これらがウェルビーイングに含まれます。 重要なのは、これが個人の問題にとどまらないということです。一人一人の従業員が健康で幸せであること、これが大事になります。それが集まって組織全体として活気があって、お互いを尊重し、心理的に安全で共通の目標に向かって前向きに進んでいける状態を指します。つまり、会社組織全体が健康で幸福度の高い状態であり、これこそが真のコーポレートウェルビーイングであると考えます。個人の総和以上のものがそこにあるという考え方に基づいています。 個人レベルの話と、組織全体のカルチャーや雰囲気の話、その両方が組み合わさっています。一人一人の人が元気であっても、組織がギスギスしていたら、それはウェルビーイングとは言えません。会社の制度は立派でも、個々の従業員が燃え尽きていたり、疎外感を感じていたりすれば、それも問題であります。この両輪がうまく回って初めて、コーポレートウェルビーイングが実現すると言えます。 この考え方が今注目されている背景には、時代の変化もかなり大きく影響しています。以前のように、とにかく経済成長や物質的な豊かさを追求するだけでは、何か満たされないものを感じる人が増えているということがあります。経済が成長して、基本的な生活が満たされるようになると、人々は次なる価値、つまり精神的な充足感や自己実現、社会とのつながり、そのようなものを求めるようになります。 働き方においても、単純にお金を稼ぐ手段としてだけではなく、自己成長や社会貢献の場として意味合いを重視する人が増えています。グローバルな視点で見ても、SDGs(持続可能な開発目標)の中で、「働きがいも経済成長も」や「すべての人に健康と福祉を」といった目標が掲げられているように、人間の幸福や健康を経済活動の中心に捉えようという大きな流れがあります。企業も社会の一員として、こうした価値観を無視できなくなっているというわけです。 そしてもう一つ、現代社会特有のストレス要因の増加があります。変化の速さ、情報過多、先行き不透明感といったメンタルヘルスに影響を与える要因は本当にたくさんあります。こうした中で、企業が従業員の心身の健康を支えることの重要性が、かつてないほど高まっていると言えます。 企業側から見て、このコーポレートウェルビーイングに取り組む具体的なメリットとして、従業員の健康が大事であり、この考え方が単なる良いことではなく、戦略であるということが挙げられます。最も直接的なのは、やはり生産性や創造性への影響です。心身ともに健康で仕事にやりがいを感じている従業員は、集中力も高まります。新しいアイデアも生まれやすくなります。 実際に様々な調査で、従業員の幸福度と企業の業績との間には、正の相関関係があることが示されています。例えば、ある調査では、従業員のエンゲージメント(仕事への熱意や貢献意欲)が高い企業では、そうでない企業に比べて収益性が20%で、生産性が17%高いというような結果も出ています。単純に社員が元気だと雰囲気が良くなるという話ではありません。 人材の獲得と維持、この面でも大きなメリットがあります。現代の特に若い世代は、給与や待遇だけではなく、企業の価値観や働きがい、心身の健康への配慮といった点を重視して、就職先を選ぶ傾向があります。ですから、ウェルビーイングへの取り組みを積極的に発信している企業は、優秀な人材を惹きつけやすくなりますし、既存の従業員の定着率を高める効果も期待できます。離職率が下がれば、当然採用や再教育にかかるコストも削減できます。 加えて、社会的な評価、いわゆる企業価値の向上にもつながります。投資家もESG投資(環境、社会、ガバナンスを重視する投資)の流れの中で、企業が従業員をどのように扱っているか、その健康や幸福にどれだけ配慮しているか、これを重要な判断材料の一つとして見るようになっています。つまり、ウェルビーイングへの取り組みというのは、社会からの信頼を得て、長期的な企業価値を高める上で不可欠な要素となりつつあります。 従業員の幸せを考えることが、単なるコストセンターではなく、生産性向上、人材確保、企業価値向上といった具体的なリターンを生む未来への投資になるというわけです。これは経営層にとってとても重要な視点です。まさに従業員の幸福を起点に企業の経済価値と社会価値の向上を両立させる未来志向の経営戦略です。この言葉がコーポレートウェルビーイングの本質をよく表しています。 そして、現代の多様性という観点も、このウェルビーイングを考える上で欠かせない要素となります。働き方に対する価値観もライフスタイルも本当に人それぞれであります。多様性の尊重は、コーポレートウェルビーイングの根幹に関わるテーマであります。 性別、年齢、国籍、性的指向、障害の有無といった属性の多様性はもちろんのこと、その人が持つ価値観、キャリアプラン、ライフステージ(例えば、育児・介護といった)の違いにも目を向けて、それぞれが自分らしく能力を発揮できる環境を整えていくことが求められます。画一的な制度や働き方を押し付けるのではなく、柔軟な選択肢を用意することが重要になってきます。 例えば、リモートワークやフレックスタイム制度の導入、副業の容認、育児や介護と両立しやすい支援制度などです。単に制度をつくるだけではなく、それが気兼ねなく利用できる職場の雰囲気、そうした文化を醸成することが必要不可欠です。 同時に、メンタルヘルス問題への対応もますます重要度を増していくことになります。これも多様性の一環とも言えます。現代社会において、メンタルの不調を抱える人というのは増加傾向にあり、これは企業にとって大きな課題です。重要なのは、早期発見と早期対応、そして予防です。ストレスチェックの義務化はもちろんですが、それだけではなく、従業員が気軽に相談できる窓口を設置することも大切です。 社内の相談員だけではなく、プライバシーに配慮した外部の専門機関(EAP:従業員支援プログラム)といったものと連携して、カウンセリングを受けやすい体制を整えることも有効です。管理職の方が、部下のメンタルヘルスの変化に気づいて適切に対応するための研修、ライフケア研修、これも重要です。不調を個人の問題として片付けるのではなく、組織全体の支えとして予防していくという意識を持つことが求められます。 コロナ禍を経て、私たちの働き方や価値観は大きく揺さぶられてきました。多くの人が「本当に大切なものは何か」「自分にとって幸せは何か」ということを問い直すきっかけになったように感じます。この経験はコーポレート・ウェルビーイングの考え方にどのように影響を与えていくのでしょうか。それは非常に大きな影響を与えたと言えます。 リモートワークの普及や働き方が物理的に変化しただけではなく、孤独感や将来への不安を感じている人が増えた一方で、家族との時間や地域とのつながりの大切さを再認識する機会にもなりました。ここから興味深い点なのですが、個人の幸せについて考えることから一歩進んで、組織として幸せって何だろうという問いに向き合う動きが加速しています。これが集合的ウェルビーイング(コレクティブウェルビーイング)と呼ばれる考え方です。 パンデミックという共通の困難を経験したことで、私たちはチームとして、この組織としてどんな状態を目指したいのか、どんな価値観を共有して、どんな関係性を築いていきたいのかといった、より共同体的な視点が重要視されるようになりました。集合的ウェルビーイングは、個人の幸せの単なる合計ではなく、チームや組織全体としての良好な状態ということになります。これは新しい視点でもあります。 どんな状況でも助け合い、支え合える関係性があるか、あるいは組織の目標達成と個々のメンバーの成長や幸福感がうまく連動しているかといった問いに、自信を持ってイエスと言えるような状態を目指すということです。これはトップダウンで強制できるものではなく、日々のコミュニケーションや協力の中で、メンバー自身が主体的に築き上げていくものになります。 その集合的ウェルビーイングや個人のウェルビーイングを育む上で鍵となる要素は、コネクションが重要です。つまり、つながりです。人間は社会的な生き物ですから、他者との有効な関係性の中で、安心感や帰属意識を得ます。職場においても、上司や同僚との間に信頼関係があり、互いに尊重し合える、そういうつながりを感じることは、ウェルビーイングに非常に大きな基盤となります。どんなに仕事が面白くても、人間関係が最悪だったりすると、つらい状況です。 でも、そのつながりをどうすれば育まれるものでしょうか。飲み会を増やせばいいみたいな単純な話ではありません。本質的なつながりを育む土台として、まず不可欠なのが、心理的安全性(サイコロジカルセーフティー)の確保です。これはチームの中で自分の意見を言ったり、質問したり、間違いを指摘したり、失敗を認めたりしても、罰せられたり、恥をかかされたり、人間関係が悪くなったりしないと、メンバーが信じている状態のことです。この安心感があるからこそ、本音の対話が生まれ、建設的な議論が可能になり、結果として強いつながりが生まれると考えられます。自由に発言できないとか、失敗が許されないような雰囲気では、表面的な付き合いはできても、本当の意味での信頼関係やつながりはなかなか生まれません。 心理的安全性を土台とした上で、共通の価値観の醸成も重要になってきます。私たちは何を大切にして、どこに向かっているのかという組織としての目的や価値観が明確であって、それがメンバーに共有されて共感されていることも、これも一体感やつながりを生む上で欠かせません。 さらに健全な多様性の受容(違いを認め合って、それぞれの強みを活かせる環境)や、感謝と称賛の文化(互いに貢献を認め合って感謝の気持ちを伝え合う習慣)があり、これらが相互に作用し合ってポジティブなつながりを育んでいくと考えられます。 日々のコミュニケーションの質が問われます。互いの意見や感情に敬意を払って、しっかりと耳を傾けられているか、相手の成功や成長を自分のことのように喜べるか、困っている人がいたら自然に手を差し伸べられるか、といった相互尊重と相互貢献の姿勢が基本です。 また、意識的にウェルビーイングについて対話する機会を持つことも有効です。最近どんなことにやりがいを感じているか、何か困っていることやサポートが必要なことがないかといった会話を、上司と部下、あるいはチームメンバー同士で定期的にかつオープンに行えるかどうか、こうした対話を通じて互いの状況や価値観への理解が深まり、必要なサポートにもつながりやすくなります。 加えて、ウェルビーイングを多角的に捉える視点も忘れてはなりません。仕事上のやりがい(キャリアウェルビーイング)だけではなく、良好な人間関係(社会的ウェルビーイング)、それから経済的な安定(経済的ウェルビーイング)、心身の健康(身体的ウェルビーイング)、そして地域社会とのつながり(地域社会のウェルビーイング)、こういったさまざまな側面が相互に関連しあって、個人の総合的な幸福感を形作っていきます。企業としても、これらの側面を考慮に入れた支援を考えることが望ましいです。 こうした文化や仕組みを組織の中に根付かせていくためには、やはりリーダーの役割が非常に重要です。リーダーには具体的にどのような行動や姿勢が求められていくのでしょうか。リーダーの役割は極めて重要です。組織のウェルビーイングを高める上で、リーダーはいくつかの異なる性質を持つ必要があります。 一つ目は、設計者(アーキテクト)としての役割です。ウェルビーイングが育まれるような組織構造、制度、プロセス、そして物理的な環境をデザインするという役割です。心理的安全性が保たれるチーム運営のルールづくりや、多様な働き方を支援する制度設計などが必要です。 二つ目は、教師(ティーチャー)としての役割です。ウェルビーイングの重要性をメンバーに伝え、その価値観を組織文化として浸透させていく役割です。自らがウェルビーイングについて学び続けて、その知識や考え方をメンバーと共有し、対話を促す、そういった姿勢が求められます。 そして三つ目が執事(スチュワード)、あるいはサーバントリーダーとしての役割です。メンバー一人一人に寄り添って、彼らの成長や活躍を支援し、奉仕する姿勢です。メンバーの声に耳を傾け、彼らが能力を発揮しやすいように、障害を取り除いて働きやすい環境を整え、権威を振りかざすのではなく、支えるリーダーシップです。これら多面的な役割を状況に応じて使い分けながら、組織全体のウェルビーイング向上を牽引していくことが期待されます。 設計者、教師、執事、リーダーには、本当に多様な能力や、深い人間理解が求められる時代になってきています。 全体を振り返って、これは単に従業員に優しくしようという話ではなく、個人の幸福感を起点としながら、組織全体の生産性、創造性、そして最終的に企業価値そのものを高めていくという、極めて戦略的なアプローチです。 重要なことは、理想論やスローガンで終わるのではなく、そのためにこれから何をするのか、つながりを核とした心理的安全性、共通価値観の浸透、そしてオープンの対話といった具体的な要素を、日々の業務や組織運営の中で着実に組み込んで実践し続けていくことが不可欠になります。一朝一夕に実現するものではなく、継続的な努力が求められる取り組みです。 コーポレートウェルビーイング、これは単なるトレンドワードとして消費するのではなく、これからの時代の働き方、そして組織のあり方を考える上で、非常に深く示唆に富んだ概念であるということを改めて感じていただけるのではないでしょうか。 職場やチームでは、意識的に他のメンバーの立場や視点、感情(共感的な姿勢)を理解しようと努める機会はどのくらいあるのでしょうか。そうした共感的な姿勢、あるいはその欠如がチーム全体の雰囲気や孤独感に影響します。日々の忙しさの中で、立ち止まって考える機会もないかもしれませんが、この問いが職場をより良くしていくためのきっかけとなります。
世界経済動向
251106 世界経済動向 世界経済を一言で言うのであれば、不確実性の中で底堅く推移する世界経済、不確実性の中で、底堅く推移する世界経済。このような言い方ができると考える。IMFの発表した最新の世界経済見通し、10月14日に発表された最新によると、世界の成長率は2024年は各国ともインフレ圧力の抑制を図り、3.3%で、今年2025年は3.2%ということである。4月時点の発表が2.8%、7月が3.0%だったのが、さらに10月では上方修正されている。この背景にあるのが、追加関税が当初想定されていた水準を下回ったこと。それと、関税導入前の駆け込み需要というこれでの貿易の増加、何よりも心配されていた報復関税の応酬といった最悪の事態が回避されたこと。そして、AI市場の拡大というのも、成長を後押ししている。 国別に見ると、アメリカはこの伸びは鈍化するものの、まず堅調に推移する。ヨーロッパと日本は回復。中国は引き続き減速、インド・ASEANは引き続き高成長を維持し、2026年、世界の成長率は3.1%としている。各国とも不確実性の中で、柔軟な対応を取っており、国によって濃淡はあるものの、全体としては底堅く推移すると見立てている。 これはアメリカが設定した追加関税の税率であるが、各国の交渉の末、当初想定された関税率を下回る水準となっている。日本とEUの自動車関税も15%に落ち着いている。また、中国とはレアアースの輸出規制をめぐって一悶着あったものの、輸出規制の延期ということで、アメリカの100%追加関税は回避された。一方で、アメリカは関税交渉と引き換えに、日本やEU、韓国といった国から巨額の対米投資のコミットメントを獲得している。こうした形に落ち着いてはいるものの、この貿易摩擦というのは、依然として不安定な状況なので、今後とも注視が必要である。 それと、先日もあったが、カナダで完全に批判的なコマーシャルが流れたとして、10%追加課税が発表された。関税政策というのは、トランプ政権において対外交渉の最大の武器となっている。 こうした中で、アメリカ以外の国々で経済連携が活発化している。アメリカ抜きの連携である。アメリカ抜きの連携の中でも、下から2番目のCPTPP(TPP)は、EUだとか、ASEANの加入に向けて連携を強めている。一昨日もフィリピンとUAEが加盟申請する発表もされていたし、今、加盟申請中の国でも8カ国ある。今後、さらに拡大すると考えられる。票の下から、主要国の状況はどうかということであるが、各国とも政策対応によって底堅い経済成長としている。とは言っても、濃淡はあるということである。 主要各国の状況において、政治や経済も動いているので、若干変化していく部分もある。まず、アメリカは、アメリカの経済成長を常に下支えしているのが、GDPの7割を占める個人消費で、これが引き続き、堅調に推移すると見ている。足元では、雇用の伸びというのは減速しているものの、消費は堅調で、特に非耐久財とサービス、この2つの支出が増えている。7月にはBBAという減税法案も成立し、景気を押し上げる効果も期待できる。FRBが9月、10月と2会合連続で政策金利を引き下げたものの、それでも上限値で4.0%である。アメリカの中立金利は3%程度と言われているため、金利を引き下げるという政策余力も持っている。したがって、今後とも、個人消費を中心として、底堅く成長すると見ている。 心配なのは、次の中国である。不動産不況が続いている中で、景気刺激策として、消費拡大へ向けた補助金の政策というのを打ち出しており、これは一定の効果が出ているものの、年内で一巡すると見られている。EV減税というのも年内で終了する。足元で販売台数が伸びていたこともあって、2026年の自動車販売台数は急減速する可能性がある。そのため、個人消費の成長は鈍化していくものと見られるので、内需の成長が見込まれないことから、経済成長は減速すると見ている。 ヨーロッパは回復基調にある。自動車産業は、関税の影響を受けて、その影響が大きいドイツ、このドイツの成長は低下している。第2四半期では、マイナス成長に転落している。しかし、以前のように、ドイツがEU経済を牽引しているという状態ではないため、ヨーロッパ全体としては、緩やかな回復と見ている。その背景にあるのが、インフレの鈍化、そして実質賃金が上昇していることである。政策投資だとか、金利引き下げが個人消費の回復に寄与しており、こうしたことが内需を支えていくと見ている。 グローバルサウスはというと、インドである。インドの名目GDPは、日本を抜いて第4位になる見通しで、人口は昨年、中国を抜いて世界一である。世界経済の中でも重要な存在になっており、中東だとか、ASEANとの経済連携や協調、この動きも加速している。引き続き高成長を維持すると見ている。 ASEANはポスト中国として成長しているが、国によってばらつきがある。内需主導型のフィリピン、インドネシアは引き続き高成長、外部依存、外需依存の強いマレーシア、タイ、シンガポールは減速している。ベトナムも外需依存が高いが、足元では力強い成長を見せている。ただし、ベトナムは対米輸出の依存度が30%と高いため、今後の成長リスクとなる可能性があり、注視しておく必要がある。 世界経済のリスクを3点にまとめる。1点目は、広範囲の関税引き上げや高い相互関税の影響である。貿易政策の不確実性指数の推移より、相互関税が発表された4月には、急激な不確実性の高まりを見せていたものの、その後、各国との交渉合意が進むにつれ、低下している。これはトランプ政策の不確実性も相まって、まだ高い水準になっている。また起こり得るのではないか。 企業業績への影響ということであるが、最も大きい輸出品目である自動車の影響が大きい。自動車関連は、日本の対米輸出の総額における3分の1を占めている。そのため、日本経済への影響が大きい。各自動車メーカーの4月、6月の影響額で、合計すると、四半期で約8,000億円の影響が出ている。追加関税が15%に落ち着いたとはいえ、自動車各社への影響は避けられないし、円高に振れてくると、業績への影響も拡大すると見ている。 世界の貿易量、成長率であるが、これまで急ブレーキがかかっている。輸出企業を中心に、ビジネスモデルの転換だとか、サプライチェーンの見直しを検討していく必要があると考えている。 2つ目のリスク、国家間の武力紛争、そして誤情報、偽情報である。ロシア・ウクライナ侵攻、ガザ・イスラエル紛争に加えて、今年に入って、タイとカンボジアの国境紛争が再び激化したが、ここは和平合意をした。しかし、こうした紛争が日本企業に影響を及ぼすケースが今後も考えられるため、対岸の火事と捉えることなく、有事の際の対応というものをマニュアル化しておくことが必要である。いつ火の粉が飛んでくるかわからない。 それと、誤情報や偽情報である。特に気をつけないといけないのが、AIによる情報のねつ造である。AI動画は怖い。一目見ただけでも見分けがつかなくなってきている。以下は短期的・長期的リスクの深刻度のランキングである。特に短期的リスクについては、こうしたリスクを認識するということだけではなくて、企業が解決すべき社会課題として捉える、このような考えも必要になってくるのではないかと思う。 3つ目は、その下からあるが、気象異常、気象や激甚災害ということで、グラフにあるように、ここ数年、自然災害による経済損失は拡大している。大地震などもそうであるが、自然性そのものを事前に止めることは難しいため、いかに被害を少なくするかということが大切になってくる。ここも、企業が社会課題として捉えて解決していく分野でもあり、政府も力を入れている。例えば、国土強靭化だとか、防災減災、このような分野である。したがって、こうしたマーケットは拡大していくと考えている。 世界経済の潮流ということで、5つにまとめている。まず、この物価・消費の潮流について、消費者物価指数の変化率であるが、アメリカ、イギリス、ドイツは、関税の影響もあって、緩やかな上昇を見せているが、その他の国は低下トレンドにある。日本も2%台に低下している。世界のインフレ率は、2025年は4.2%、2026年は3.6%に低下すると見られている。これは、2023年が6.8%、2024年が5.8%だったため、世界的な金融引き締めだとか、サプライチェーンの見直しが功を奏しており、今後も先進国を中心に、インフレ率は目標水準にまで低下していくと見立てている。 一方、この消費はどうかというと、これは二極化が進んでいる。消費の二極化というのは、高価格帯の商品やサービスの支出が増える一方で、生活必需品では、節約志向が高まって、低価格帯の商品の需要が高まる、このような現象である。そのため、中間価格帯の商品は売れにくくなる。その背景にあるのが、所得格差の拡大ということで、これは地域別の国民所得シェアを示しているが、北米だとか、中東地域の格差が大きいというイメージが湧いてくる。しかし、実際は、世界全体から見ると、そうでもない。このグラフの青色と、左のグレーの棒グラフを比べてみると、わかるが、一番右に世界とあるように、世界全体で見たときも、この所得格差は大きいのである。したがって、所得格差は世界的な課題でもある。 所得格差の拡大というのは、消費に回るお金が一部に集中して、全体としての消費が伸び悩む原因にもなると同時に、政治不安にも気がつきやすいため、経済全体としても歓迎されるものではない。 開発と投資の潮流。日系企業へのASEANへの生産移管が進んでいる。理由は日本国内における人手不足ということであるが、この図表を見ると、中国への移管が72件に対して、ASEANが289件であり、圧倒的に上回っている。また、中国からASEANにシフトした企業が176件ある。これには関税対策というのもある。いずれにしても、チャイナリスクを回避するという点でも、ポスト中国としてのASEANの存在感が高まっている。 このデータは、日系企業の進出企業の営業利益の状態を国別で示したものであり、青色の部分が黒字企業である。中国への進出企業は、黒字企業が6割を切っており、業績が厳しくなってきている。逆に日系企業で数多く進出しているアジアの国で言うと、黒字企業が多いのが、台湾とインドとインドネシアとマレーシアである。黒字企業は7割を超えている。利益が出せる国へ投資する、このような考え方も必要になってくると考える。 もう1つは、クロスボーダーM&Aである。コロナショック以降、このクロスボーダーM&Aによる海外進出は、再び増加している。2024年の実績を見ると、アメリカが213件と最も多く、次いでシンガポールの51件、またヨーロッパだとか、ASEAN、中南米の企業買収も10%以上伸びている。クロスボーダーM&Aの目的は、国内市場が成熟化している中で、海外にマーケットを求めるということである。昨年も申し上げたが、グローバルで見れば、日本のGDPはわずか5%、残りの95%は日本の外にある。したがって、クロスボーダーM&Aという新しい経営技術を取り入れて、海外転換に取り組んでいただきたいと考えている。 金融財政の潮流について、終わりが見えてきた利下げ局面、増える公的債務とある。現在、主要国の政策金利は、インフレ率の低下に伴って、引き下げの局面にある。まず、アメリカは、今年に入って、しばらく据え置かれていた。FRBは9月0.25%、10月0.25%と連続して引き下げを決定し、現在上限値で4.0%になっている。今の状態だと、12月の会合では引き下げないのではないかと思うが、金利というのは、物価だとか、雇用と連動しているため、こうしたところが落ち着いてくると、金利は下げられる。ただ、問題は、パウエル議長、FRBのパウエル議長の任期が来年の5月に迫っているため、その後のトランプの影響力が強くなる可能性がある。彼は低金利を志向しているため、FRBに対して、金利引き下げを強く要請している。そのため、FRB議長交代後に急激な金利引き下げの実施があると、為替にも影響を引き起こすため、注視しておく必要がある。EUは、昨年の秋から今年の6月にかけて利下げを7回行っており、現在、政策金利は2.15%である。インフレも落ち着いているため、利下げ局面も終わると見られている。 中国は、不動産市況の低迷と景気対策から、緩やかな引き下げを行って、現在3%である。今後も景気動向を見ながら追加緩和の可能性がある。下にあるのが、公的債務、世界の公的債務であるが、これが増えている。裏返せば、積極財政が行われる。したがって、そのリターンを増やしていくことが大切である。例えば、企業の利益、あるいは個人の所得が増えて税収が増える、このようなことが求められるのである。 産業・技術の潮流とあるが、この分野には、成長の突破口となるビジネスチャンスが埋もれている。まずは、このAI市場。AI市場は今後急拡大すると見られている。これは、かつてのパソコンだとか、スマートフォンのように「あったらいい」から、「なくては困る」ツールになってくる。このAIと切り離せないのが、半導体とデータセンターである。半導体は、AI向けのロジック半導体と、データセンター向けのパワー半導体のどちらも伸びてくる。それと、AIの普及に伴って、需要が急増するのが、今申し上げたデータセンターである。今、建設ラッシュである。データセンターは、AIの処理能力の要求に応えるために、大量の電力が必要になってくる。それと、発熱量がすごい。 データセンターは電力を大変大量に消費する。一方では、クリーンな電力の使用を求められる。そこへ太陽光パネルだとか、蓄電池を設置して、データセンターの電力を再エネで賄うことができる。AIだとか、このデータセンターに一見なんら関係のないような企業にも、ビジネスチャンスがある。 成長するこのAI市場、自社の成長に取り込むキーワードは、半導体、電力、電気、データセンター、このあたりである。こうした周辺にチャンスの発見がある。 再生可能エネルギーについて、ペロブスカイト太陽電池が今、注目されている。薄っぺらいシートで、ふにゃふにゃっと曲げられる、そのような太陽電池である。積水化学工業がリードして事業化を進めているが、すでに大阪の梅北地下駅には設置されているし、先般の大阪・関西万博の会場にも、西口ゲートのあたりに設置はされていた。これが、いよいよ量産化に入る。量産化に入り、2040年には4兆円の市場になると言われている。それと、脱炭素エネルギーという点では、原子力発電が、ペロブスカイト太陽電池とともに、高市政権のエネルギー政策として挙げられている、原子力発電に関わるマーケットにチャンスがある。 電気自動車のEVは伸び悩んでおり、PHVが主である。自動車メーカーは、すでにPHVだとか、ハイブリッドに戦略を転換している。EVはやはり価格面とこの充電インフラの問題が大きい。自動運転では、今年の9月の25日、つい先日であるが、トヨタのウーブンシティが開業した。これは自動運転の実証都市である。豊田章男会長の長男が個人として仕切っている。e-Paletteという自動運転に対応したモビリティで、すでに販売もされている。ここも今後成長していく可能性がある。 協働ロボット 労働・雇用の潮流ということであるが、人手不足というのは、世界の課題である。日本だけではない。主要な7カ国において、日本の生産年齢人口の減少幅が圧倒的に大きいのがわかる。青色の折れ線グラフである。一方、グローバルサウスはというと、インドは引き続いて増加し、2050年では、日本の生産年齢人口の約20倍の規模である。下の方の表で見るとわかりやすいが、インドとアフリカ以外の国は、2040年あたりで頭打ちになってくる。そのため、インドやアフリカというのが、今後、魅力的な労働マーケットになってくると考えている。 この世界経済は、不確実性を抱えながらも、各国の柔軟な対応によって底堅く推移していく、底堅く推移する。不確実性が常態化している中だからこそ、変化を恐れず、むしろ、その変化の波に乗るために、創造性、行動力という経営者、リーダーシップが、私たち経営者に求められている。
ブレークスルー戦略
251105 ブレークスルー戦略、揺るぎない成長への意思 経営の原則は、大局眼、小局着手である。ここ数年の経営環境を振り返る。コロナウイルスの収束宣言が出された2023年から翌年の2024年にかけて、日本経済は失われた30年といわれるデフレ経済の長いトンネルから抜け出して、インフレ経済への移行と、新しい30年サイクルへ向けての大きく舵を切っている。 この間、企業は脱コロナの掛け声のもとで、経営のスタイル自体を見直し、コロナ禍で失った顧客を取り戻した。賃金を上げながらも、コストアップを価格転嫁で吸収し、そして円安の後押しもあって、上場企業の業績は過去最高益を連続して更新している。 2023年度は、新しい成長に向けて、自己革新能力を発揮せよということで、新バリューチェーン戦略、すなわちコロナ後における新しいバリューチェーンの変革を提言した。2024年度は、ジャパンクオリティで世界をリードしていこうという、クオリティリーダーシップ戦略、すなわち日本企業の卓越した価値をブランディングしていこうという提案である。2025年度は、湧き上がる未開のマーケットに積極果敢に踏み込んでいこう、こんな意味を込め、フロンティア戦略を提言した。 そして、今年、2025年、トランプ2.0で幕を開けた。トランプ関税の発動で、保護主義へと大きく舵を切って、為替変動だとか、WTOの機能不全、そしてG7の影響力の低下、地政学的なリスクというのも招いた結果、世界の不確実性はコロナショックを上回る水準となる。 トランプの一言、あるいはつぶやきで世界が動く。そんな不確実性の高い経営環境と言える。こういった経営環境下にあるにもかかわらず、各国の柔軟な対応によって、インフレの緩やかな低下、AI技術の活用と市場の成長、グローバルサウスの拡大、そしてグローバルサプライチェーンの再構築といったように、多極化、多角化で対応しながら、全世界は底堅く、緩やかなプラス成長を維持している。 グラフでもう一ついただきたいのが、この赤色の点線である。これは、1990年から、現在までの不確実性指数のアベレージである。このアベレージがリーマンショック以降、ほぼ平均値を上回っている。すなわち、不確実性が常態化している、常に不確実な時代である、こんなふうにも言えるのである。 日本は円安とこの物価上昇の後押しもあって、名目GDPは、昨年には600兆円の大台を突破した。この600兆円というのは、2015年、当時、安倍首相が掲げたアベノミクス、新3本の矢の第一の矢として、目標設定をされたものなのである。それからもう10年経っている。300兆円から500兆円までは10年を要していなかったが、600兆円の突破には30年以上の長い年月をかけた。 では、物価はどうかというと、原材料の高騰といったコストプッシュが引き起こした、過度なインフレの状態から、需要喚起型のデマンドプルへとインフレ率も低下し、適度なインフレへと移行しつつある。 また、今年の春闘では、34年ぶりの高水準になった。そして、実質GDPも5四半期連続のプラス成長回復を維持している。新政権も発足し、株価も5万円を突破した。不確実性を乗り越えるこの強い経済への政策に期待が高まっている。 一方では、この労働力人口の減少による人手不足が常態化し、さらに加速していく。今後、金利ある世界から金利が上がる世界へ加速していく。そして消滅都市が加速していく。日本経済は、コロナ後のすでに起こっている未来への大転換途上にある。このように言えるのであり、不確実性というのが常態化している中、そして、大転換の途上にある経済環境において、私たち経営者の価値観として求められるのが、揺るぎない成長への意思である。 今、経営者は揺るぎない意思を持って成長していく覚悟が求められている。ユニクロの柳井会長は、こんなふうに言っている。「成長なくば、死も同然。」非常にインパクトのある言葉ではある。この先が見えないから、立ち止まって様子見をするだとか、目先の対応に終始するといった現状維持の経営というのは、衰退を意味する。企業経営というのは、成長するか、衰退するかの二択である。不確実な時代だからこそ、長期的な視点を持ちながら、未来を切り開くための、確固たる成長への意思、これが必要なのだと考えている。 そして、この経済の大転換途上においては、これまでとの連続性を持った成長というのを思考するのではなくて、非連続な成長に向けた戦略思考へのマインドセットの大転換、これが求められる。したがって、企業が持続的な成長を実現するには、これまでの常識を超えるレベルでの非連続な変化によるブレークスルーが不可欠である。このブレークスルーの鍵は、新しい経営技術を取り入れる勇気と、自社らしさを進化させることへの戦略的実装にある。そのために、どのようにブレークスルーを起こすのか。その実現に向けて、何へ投資して、誰と組むのか。そして、どこに突破口を生み出すのか。この3つの問いと向き合っていただき、経営の中核そのものを変える決断と実行という経営者リーダーシップを発揮していく。そして、持続的成長に向けて、非連続の変化を起こしていく。
よい職場の雰囲気をつくる
251103 よい職場の雰囲気をつくる チームのパフォーマンスや職場の雰囲気を、あるシンプルな法則で改善できる、まさにそれを可能にするフレームワークである成功循環モデルについて説明をしていきます。これを知れば、明日からの仕事がきっと変わるはずです。一度は考えたことあるのではないでしょうか。どうやったら、職場の雰囲気がもっと良くなり、働きやすくなるかということです。これはリーダーだけではなく、チームの一員なら、誰でも抱え、なかなか答えの出ない悩みでもあります。この問いに答えを示す理論があります。それが成功循環モデルということになります。組織にポジティブな変化をもたらすための、シンプルで、しかも裏付けのある、とても効果的な考え方のフレームワークであります。このモデルを提唱したのは、組織開発の専門家、ダニエル・キムであります。この理論のポイントは、とてもシンプルで、成功しているチームにはある共通点があるということを挙げております。 その共通点は、4つの大事な質が関わってきます。まるで歯車みたいに、がっちり噛み合って、お互いをどんどん高め合っていき、好循環が生まれる状態になります。逆に言うと、多くの組織がうまくいってない状況においては、この歯車のどこかがかみ合っていない、悪循環に陥ってしまうという状況にあります。 その良いサイクル、好循環を生み出す4つの質は、まず一つ目は、全ての土台になるのが関係の質であります。お互いをよりリスペクトして、信頼し合えるかということです。 2番目が成功の質です。安心できる関係があるからこそ、生まれる、前向きで、良いアイデアが創出されます。 3番目は、そのアイデアをただの思いつきで終わらせないための行動の質です。 4番目は、これらが積み重なって生まれる、目に見える成果、結果の質です。 この4つの要素が、成功への鍵を握っていることになります。この4つの質が、バラバラにあるのではなく、順番があり、前の質が次の質を高めていくということになります。この流れ、方向性を理解することが、このモデルを使いこなすための第一歩となります。まず、良い人間関係を築くことです。これが、心理的な安全性や信頼の土台を作るということになります。そうすると、メンバーがビクビクしないで、安心してどんどん新しい良いアイデアを出せるということになります。そして思考の質が上がっていくことになります。良い考えが浮かんだら、それは自然と良い行動につながっていきます。そして質の高い行動を行えば、当然質の高い結果も生まれてきます。結果が出たら、チームのモチベーションも上がり、さらに人間関係も良くなっていきます。 これが無限に成長し続ける、好循環の出来上がりになります。このモデルが示す一番大事なことは、結局、一番の起点が、組織の中における人と人の関係の質であるということです。多くの組織において、どうしても結果を出さなければならない状況にあります。でも、良い結果というのは、良い人間関係という土壌があって初めて実る果実のようなものです。いきなり結果から入ろうとすると、このサイクルで考えると、うまく回ることにはなりません。 このサイクルは、経営者自身やマネージャーだけが回すものではありません。私たち一人一人、自分自身から始めることができるものです。皆さんの職場にもいると思います。いつも周りから信頼されて、良いアイデアをポンポン出して、率先して行動して、しっかりと結果を出す人。そういう人たちは、このモデルのことは知らなくても、感覚的にこの成功のサイクルを自分で回して、チーム全体の良い流れを作る中心人物になっていることが多いです。 あなた自身はどんなスタンスで仕事をしていますか。周りの人たちとの関係の質を良くするために、明日からできることは何だと思いますか。チームの思考の質を上げるために、会議でどんな一言が言えるでしょうか。そして、自分自身の行動の質をどうやって高めていきますか。全部、あなた自身の選択に関わっていくことになります。これらを難しく考える必要は全然ありません。この大きな成功のサイクルは、普段、周囲の人に声をかける、ちょっとした前向きな一言から始まることもあります。会議で出たアイデアに、「それいいね」と声をかけること、そこから始まることもあります。職場の未来を変える力は、どこか遠くにあるのではなく、今日、あなたが起こすたった一つの小さなポジティブな行動の中に、もうすでにあります。