251012 コーチングとは
コーチングの本質を理解して、組織変革に生かしていきます。コーチングがどのように目標達成に成り立つのか、そして、どうやって組織全体を変える力になるのか、説明していきます。コーチングでは、対話を通じて、その人のものの見方や捉え方そのものに働きをかけていきます。
まず、基本的なことですが、コーチングを,どのように定義をしているか考えます。二人の間に問いを置いて一緒に考えることです。とてもシンプルな考えです。問いを前に置くということは、ただ話し合うということではなく、ゴールは何かということをはっきりさせて、目標達成をすることです。ポイントになるのが、そのために新しい視点、考え、捉え方が必要になります。行動を変えるだけではなく、その根源にある認識の部分を変えていく必要があります。
普段、上司が部下の話を聞く場面はよくありますが、新しいアイデアややる気につながる必要があります。ただ聞くような、自動的に耳を傾けるのではなく、問いを間に置いて、その問いはどういう意味があるのか、価値があるのか、上司と部下が一緒に探していく能動的な感じになります。その対話の中で、部下自身が自分の中に凝り固まっている考え方や枠組み、古い価値観や考えを一旦壊して、スクラップして、そして新しい論理、つまり新しいものの見方、捉え方、新しい価値観、これを自分で組み立て直していく、ビルドする。それを促すのがここで言う「聞く」という行為になります。スクラップアンドビルドを対話で起こします。少し遠回りに聞こえるかもしれませんが、何か答えをすぐに,与えてしまう方が早いかと思われてしまいます。ティーチング、つまり教えることに比べてコーチングは遠回りに見えるかもしれませんが、実は早いし効果的なアプローチになります。本質的な変化、つまり捉え方そのものの変えるには答えをすぐに上げるのではなく、対話を通じて、本人が自分で考えて、気づきを与えて、それが大事になります。行動変化につながりやすくなります。結果的に見るとそれが早いし効果的に成長につながります。時間はかかっても自分で見つけた答えは腑に落ちるものです。そして納得感が違います。
コーチングは、私たちが無意識に持っている前提や当たり前だと思っている考え方、これに対してそれって本当に正しいのか、建設的に疑う手助けをすることになります。コーチングが持っている変革力であります。リーダーシップについて話しあるときに、リーダーシップと何かと聞いて答えは返ってきますが、あなたのリーダーシップはいつ更新されましたかと問われた時に答えられますか。自分の考えがいつ更新されたか、普段全然意識しないものです。しかし今の時代は環境も変わっているし、社会も組織も働く人もリーダーに求めるものはどんどん変わっていくはずです。昔うまくいったリーダーシップが、今もそのまま通用するとは限りません。コーチとの対話というのは、まさにそういう自分の中に無意識にある前提。例えばリーダーたるものはこうあるべきだという考えに光を当てたときに、それが今の状況に合っているのか問い直しをして、必要であればアップデートしていく。こういうことは一人でやるのは難しいものですが、共同作業により対話を通じて捉え直していきます。
その前提への挑戦というのが、個人レベルだけの話ではなく、組織で考えていきます。進化する組織は常に対立を超えて、お互いの前提にチャレンジしていきます。それを超えていく対話をしているものです。つまり、変化し続ける組織の強さは、そういう対話の中にあります。個人が自分の前提を問い直すだけではなく、チームや組織全体で共有されていきます。当たり前のこと、うちの部門では昔からこうやるのが普通みたいな前提に対して、しっかりと健全な形で疑問を投げかけて、それで対話を通じて乗り越えていく。これが組織で。進めていき、環境の変化に対応して進化し続けるためのエンジンになるという見方です。ただ、仲がいいだけではなく、建設的な意見のぶつかり合いが必要になります。
個人の視点が変わり、チームの対話も深まり、その先に組織全体の変革がある。では、具体的にそれはどのような形で表れていくのか。単に新しい仕組みを作ることや、システムを入れることではありません。そういう目に見える変化だけではありません。組織の中のコミュニケーションを変えることこそが、コーチングが目指していくことになります。組織を変えるというのは、どうしても新しい制度やルールやITツールや、そういうハード面に目が行きがちですが、ここで大事なのは組織の中で毎日交わされるコミュニケーションの目的そのものを一人一人で変えていくということです。コミュニケーションの目的を変えるとは、例えば,会議で発言するときのことを考えてみてください。その目的が、単に自分の意見を通したいだけなのか、それとも、いろんな人の意見を引き出しして、もっと良い結論にたどり着きたいのか、あるいは上司に報告するのか、または義務だから仕方なくやっているのか。しっかりと状況を伝えて必要なサポートをもらうことなのか。本当の目的は何なのか、何のためにコミュニケーションを取るのか,という意識が変われば、おのずとコミュニケーションの取り方、つまり何をどうやって、どれぐらいの頻度で伝えるのか、みたいな量と質が変わってくるはずです。目的が変われば、行動が変わってくることになります。一人一人のコミュニケーションの変化が積み重なり、組織全体の雰囲気や文化、風土が変わり、最終的に業績にも直結していきます。表面的な行動を直すのではなく、その行動を生み出している根本的な動機や意識レベルを変えていこうとしている。だからこそ、単なる仕組みやシステム導入だけでなく、もっと本質的で長続きする変化へ仕向けていきます。
コミュニケーションの目的に注目していきます。コミュニケーションでは具体的にどんな要素で成り立っているのか。考えていきます。コミュニケーションは情報、要望、提案、質問の4つに整理していきます。特に力を入れているのは明快に要望することです。明快に問いかけをすることです。つまりコミュニケーションの目的を何か曖昧にしないではっきりと相手に伝えて伝えるということが大事です。
例えば。相手に何かしてほしい時に、これについてあなたはどう考えていますかというように、遠回しの言い方に含みを持たせるのではなく、ストレートに、もちろん丁寧に伝えること、明快に伝えることが大事です。目的が曖昧だと、コミュニケーションに弊害が引き起こされます。目的がはっきりしないと、受け取った方は、この人本当に何が言いたいのだろうかと、何を期待しているのだろうかと余計なマインドリーディングつまり損得や推測が働いてしまい、これが実は結構な負担になってしまいます。そして誤解を招いたり、コミュニケーションのすれ違いを生む原因になってしまいます。逆に目的が明確であれば、受け手はその。要望なり問いかけになり、どう答えるのかに集中できる。結果として心理的負担も減るし、誤解も少なくなる。これが組織の中の心理的安全性、つまり誰もが安心して意見を言ったり、疑問を投げかけたり、助けを求めたりできる状態を高めることにつながります。一方的な上意下達みたいなコミュニケーションはかえって心理的壁を作ってしまいます。コーチングは、その反対の考え方と言えるでしょう。
心理的安全性が高まると、よりオープンで建設的な対話がしやすくなります。それが先ほどの前提への挑戦にもつながってくるわけです。ですから、明快な要望、明快な問いかけ、これが意図の分かりやすいコミュニケーションの基本であり、健全で進化し続ける組織を支える大事な要素になります。
コーチングというのは、単に目標達成のテクニックやスキルというよりは、少し深いレベルで変化を促すプロセスであります。問いかけや対話をきっかけにして、私たち自身がとらわれている前提という囲いみたいなものに気づいて、そこから抜け出して新しい景色を見ることになります。そういう内面的な,深掘りがあります。そしてその個人の内面の変化が組織の場で現れてコミュニケーションの目的そのものを問い直すきっかけになって、結果として明快な要望や明快な問いかけみたいに具体的な行動の変化につながっていきます。その連鎖反応が組織全体の心理的な安全性を育てて変化に強い進化し続けるための土台を作っていきます。
そのように組織を発展していきます。組織でのクリアなコミュニケーション、特に明快な要望や、明快な問いかけ、心理的安全性を高めて組織を元気にするという話をしました。思い込みや推測、マインドリーディングなど、これを意識的にちょっと横に置いといて、代わりにあなたにこうしてほしいだとか、これについてどう思うみたいな明快な要望や明快な問いかけを今よりもほんの少しだけ増やしてみたらよいです。そこで、関係性や物事の進み具合、あるいは自分自身の気持ちにどのような変化が生まれる可能性があるので試してみます。