なぜ、あの社長には優秀な人材が集まるのか

251229 なぜ、あの社長には優秀な人材が集まるのか

人材を惹きつけるリーダーシップと組織文化について説明していきます。

超一流のリーダーは、人が集まりたくなる舞台を作ることを意識します。普通は逆に考えます。まず優秀な役者を探して、その人たちに合った舞台を考える。しかし、私は逆の考えです。先に舞台を作り、それが大事になります。この逆転の発想が何を意味するのかを説明していきます。

リーダーの最も重要な仕事は、未来づくりと仲間づくり、この2つに集約されます。リーダーが語る未来のビジョンについて、こんな未来を実現したいんだという思い。それに対して周りがどう心を動かされるか。そこが全てということになります。この人の夢を応援したいや、この会社とならなんか面白いことができそうだとか、そういう感情的な共感が人を惹きつける力になるというわけです。ロジックで説明するのではなく、感情で共感してもらうことになります。

自分が今いる組織を思い浮かべてみてください。リーダーはWhyなぜやるのかを語っていますか。それともHowどうやるのかという指示をばかりをしていますか。その違いは大きいものです。日々の仕事の楽しさに直結します。要点は、Howの前にWhyを伝える重要性です。つまり、我々の存在意義や社会に対する約束、それを共有することで仕事がただのタスクではなくなります。自分が参加している壮大な物語の一部へと変わります。

その時、人は自律的に、そして創造的に動き始めます。そのストーリーに本物感を与えることが大切になり、私は創業時の精神を大切にして、社会や顧客からの信頼に応え続ける、そういう一貫した姿勢をもちます。口先だけの美辞麗空はすぐに見抜かれてしまいます。行動が伴わないWhyは、いわば空虚なスローガンしかありません。日々の小さな意思決定の中に、そのWhyがしっかりと反映されているか、その積み重ねが揺るぎない信頼になり、つまり本物感を創出するということになります。Whyで感情に訴えるのが一番であります。その思いをどうやって具体的に形にして、社内外の優秀な人たちを巻き込んでいきます。

自社の商品を売る前に、まず価値観を共有する仲間を集めるための魅力的な場面や物語を創造する戦略です。商品も売る前に仲間を集めます。その場のテーマを、社会課題というより大きな視点から捉えていきます。例えば、地域の過疎化を繰り止めたいとか、未来の子どもたちのために持続可能な環境を作りたいとか、誰もがそれは大事だと思えるテーマで舞台を作ります。

その舞台が魅力的であれば、同じ問題意識を持つ人々が、顧客や社員やそういう垣根を越えて自然と集まってきます。そして、その集まった人たちの前で、自社がこの課題、我々ならこう解決できますと主役として登場していきます。先に、観客と,共演者を集めて、そこに満を持して主役が登場するみたいになります。社会課題への取り組みが、企業にとって短期的な利益のための本質ではなく、心からWhyに基づいていて、もしそれが本物なら、その活動は一貫性を持ちます。長期的に継続されます。人々はその一貫性を見て本物かどうか判断して、口先だけならすぐに見抜かれてしまいますから、本物かどうか試されるわけです。

ある企業が,消費者インタビューから人々は人とのつながりに飢えているという仮説を立てました。そして自社の古いという一見ネガティブな特徴を昭和の懐かしさとか人の温かさを体感できるという新しい価値、つまり新しい舞台に転換しました。これは見事な発想の転換です。弱みが最大の強みになるという素晴らしいことです。リフレーミングです。これは自社の資産を深く理解しているからこそできる芸当でもあります。さらに大きなスケールではトップ自らが感じ、良い暮らしと社会という壮大な舞台を作り上げた企業の例も挙げられています。こうなると、個々の商品をいちいち説明する必要がなくなります。その舞台に参加することで、世界観の一部になること自体が、消費者にとって価値になる企業の思想がブランドそのものになります。

次に、どうやって人の熱量を維持して高めていくのか。社員一人一人を主役として扱うことが大事になります。会社の目指す未来、つまりWhyを体現しているような人材を意図的に引き上げていきます。そしてその活躍を社内に広く共有して、あの人のようになりたいとか、ああいう働き方を目指すような具体的なロールモデルを提示するわけです。一人の英雄の物語がみんなの物語になっていきます。例えば、ある社員がお客さんのためにマニュアルにない対応をして非常に喜ばれたという話を、ただ美談で終わらせません。それを社内報の記事にしたり、全社会議で本人に直接語ってもらったりして、これが主役にするという具体的なアクションです。誰を主役として取り上げるかで、会社が本当に大切にしているという無言のでも強いメッセージになります。社員本人のストーリーを友人や知人のネットワークを通じて広げていくことも推奨していきます。これは今の時代ならではのアプローチでもあります。会社の公式発表よりも周囲の人のネットワークを通じて信頼できるという感覚は誰にでもあります。会社のメッセージをより信頼性の高い個人の物語として広めるために、これは強力な手法です。

ただ、この社員を主役にする戦略には難しさもあります。誰を主役に選ぶかという社内人事関係の問題とか、主役になれなかった社員のモチベーションをどう保つとか、その課題は必ず出てきます。そこがまさにリーダーの腕の見せ所になります。

大切なのは、特定のスタープレイヤーだけを称賛するのではなく、様々な形で貢献している多様な社員にスポットライトを当てるということです。そして、英雄の物語をあの人は特別だからで終わらせず、彼の行動は我々のホワイを体現している。皆さんもそれぞれの持ち場で実践できるはずだと。全社員の行動につなげるメッセージを発信し続けることです。そして、この文化を根付かせるために、トップがすべきこととして、こだわりと割り切りを考え抜き、日々の対話でしっかりと浸透させることが重要であります。トップダウンの命令だけではなく、対話を通じた丁寧な浸透が大切であります。これもWhyの共有に通じます。こだわりは会社の根幹であるWhyや価値観、絶対に譲れない部分です。割り切りというのはそれ以外をHOW、つまり具体的なやり方の部分です。Whyには徹底的にこだわることをして、HOWは現場の社員を信頼して大胆に任せる。そのメリハリが、社員の当事者意識とクリエイティビティを引き出す上で非常に重要になります。

これらすべてを実践できるリーダーには、一体どんな資質が求められるのでしょうか。どんな状況でもブレない一貫性と、やはり本物感です。そしてもう一つ非常に重要なのが「人間くさいHow」という表現です。人間くさいHow、洗練されたスマートなHowではなく、これは人の意識や,行動にどう働きかけるかという非常に人間的なアプローチの重要性を示しています。机上の空論や綺麗な理屈だけでは人の心は動きません。多様な価値観を持つ人々の感情の機微を察し、時にはぶつかり合いながら信頼を築き、行動を促していきます。その泥臭くて試行錯誤に満ちた生々しいプロセスこそが成果を生む鍵でもあります。つまり、完璧でスマートな戦略家であることよりも、少し不器用でも人の心に寄り添える共感力のある人間であることの方が重要であります。結局のところ、どんなに立派なWhyを掲げて、どんなに巧妙な舞台を用意しても最後の最後で多くの仲間を巻き込めるかどうかはあの人が言うなら信じてみようとか、この人と一緒なら苦労も楽しそうだと周りに思わせるその人自身の魅力にかかっています。共感と信頼の,最終的な価値はそこにあります。今の日本には、そうした力強い言葉を持つリーダーがもっと必要だと、そういう考えがあります。

まず、なぜやるのかという根源的な問いから始めて、人々が思わず参加したくなる魅力的な舞台を築きます。そして仲間になった社員たちをその物語を英雄にする。これが優秀な人材を惹きつけて離さない、リーダーシップの様態とも言えます。

自社が本気で取り組むべき社会課題、それを解決するための舞台をどう構想するのか、しっかりと考えていきます。自社の技術やブランド、人の知恵といった無形の資産を棚卸しして、それを活用して人を巻き込む新しいストーリーを。考えられないか、思考を巡らしていきます。そうやって発想を広げてみると、意外なところに舞台の種が眠っている可能性が十分あります。

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