ブランド力を高める

251229 ブランド力を高める 企業が永遠のテーマとして掲げる「ブランド力」これについて説明していきます。 現在では、これほどまでに「ブランド」や「付加価値」という言葉が重要視されているのか。これには、単純に良いロゴを作ることや、キャッチャーなコピーを考えることや、そのような話ではありません。組織がどうあるべきか、その根幹が問われていることになります。 企業がブランディング戦略をどのように考えるのか。そして、経営、トップ、またはリーダーの情熱やリーダーシップ、それから社員の内なる力を引き出すインナーブランディングに関連していきます。多くの企業が自社の強みを一貫したメッセージとして伝えられていないという壁にぶつかります。 ブランドバリューチェーンについて、これはブランド構築のプロセスを分解して、自社の課題が一体どこにあるのかを可視化するためのフレームワークです。ブランドを形作る価値の源泉を大きく,3つの柱で捉えていきます。専門価値、人材価値、社会価値のの三つです。 専門価値は商品やサービスの独自性や優位性であり、いわゆる本業の強さになります。 次に人材価値です。これは従業員のスキルやエンゲージメント、つまり人の力です。 そして最後に、社会価値。企業の社会貢献性や存在意義。最近ではパーパスに近い概念です。多くの企業は、技術力、つまり専門価値は高いということを一点で突破しようとありがちです。しかし、それだけではもろくなってしまいます。 例えば、素晴らしい技術を持っていても、それを支える社員のエンゲージメントが低ければ、つまり人材価値が低ければ、いずれ技術は陳腐化して、人は離れてしまいます。逆もあります。社員の結束は固いけれど、社会的な意義を見出せない事業であると、働く誇りを持つことは難しくなってしまいます。 大切なのは、これら3つが企業のビジョンという一本の指針で連なっていくことであります。この一貫性こそが、顧客の心の中に、あの会社らしいという揺るぎない信頼感を築き上げていきます。つまり、ブランドづくりは、外に広告を打つ前に、まず社内に向けて自分たちの行動指針を作るような作業になります。専門と人材と社会という三権分立を、ビジョンという行動指針で束ねていきます。 その行動指針であるビジョンを制定して、その精神を組織全体に浸透させることは、誰の役割なのでしょうか。それを表すことが、経営トップ、またはリーダーが変われば、組織も変わるという、かなり強い意志です。 ブランドバリューチェーンは、戦略的な設計図のようなものであり、声高に叫んでいく経営トップまたはリーダーの本気というエンジンがなければ、1mmたりとも前進はしていきません。そのような関係性があります。経営トップがこの人は本気だという姿勢を見せることが最大の説得力になります。本気というのは、大声で叫んでいても伝わるものではありません。 経営トップがやるべき具体的な3つの行動があります。 1つは、会社の未来像を自分の言葉で語り続けることです。借りてきたような言葉ではなく、時にはかっこ悪くてもよく、自分の内から出た言葉で語ることが大切になります。 2つ目は、学びの機会をおろそかにせず、メンバーの成長に投資することです。口先だけではなく、有り金を使って社員の成長にかける姿勢を見せることが大事になります。 そして3つ目が、社員とのコミュニケーションを諦めない忍耐力です。コミュニケーションの一丁目1番地は、相手としっかりと向き合うことであります。これは、都合の悪い話から逃げないという覚悟の表明でもあります。 しかし、経営トップまたはリーダーが、そこまで本気でビジョンを語っても、それが現場の社員一人一人にまで浸透しなければ意味がありません。浸透させるプロセスについて、具体的な方法としては、インナーコミュニケーションまたはインナーブランディングとなる手法を発揮していきます。呼び方は違いますが、目指すところは。同じになります。 経営トップのエンジンから発揮される生み出した熱量を、どのように組織の隅々までに伝えていくか、伝わっていくかということが大事になります。 インナーコミュニケーションには、6つのステップで整理されます。認知、理解、共感、実践、評価、定着。 これは。ロジカルな話になりますが、ここで大事なことは、共感性を生むということです。心から共感して、企業がコントロールできるようになります。説明だけでは、共感は生まれません。 カルチャーブックやビジョンマップを作成して、ぼんやりしていた会社の思いに、くっきりとした輪郭を与えていきます。カルチャーブックは、企業の行動指針をまとめた冊子でありますが、それを配布しただけでは、ただの分厚い紙切れになってしまいます。重要なのは、その作成プロセスに社員を巻き込むことです。ある企業の例で、素晴らしいカルチャーブックを作ったのに、半年後には誰も読んでないという実情もあります。原因は、そこに書かれた挑戦を称えるという言葉とは裏腹に、実際に挑戦して失敗した社員が評価されない人事制度が残っていたからです。言葉と実態が乖離してしまっていました。 ビジョンマップというのは、社員一人一人が、会社がこうなったらいいなとか、自分はこうなりたいという夢や希望を付箋に書き出して、大きな模造紙に張り出すワークショップです。これを行うと、経営トップが思っている会社の未来と、社員が望む未来の間に、驚くほどのギャップがあることがわかったりします。そのギャップを、対話を通じて埋めていくというこのプロセス自体が、社員にとって自分もこの会社を作っている一員なんだという強烈な当事者意識、つまり共感を育むわけです。 ただビジョンを共有するだけではなく、そのビジョンが実現した先に、自分の幸せな未来もしっかりと描けるか、そこまでつなげることができて、初めて人は自ら動こうと思うのかもしれません。 それでも、まだハードルはあります。ビジョンに共感しても、日々の業務に追われる中で、新しい挑戦をすることに恐れてしまう。失敗したら評価が下がるかもしれないと思ってしまう。だからこそ、変化を恐れず、失敗を許容する文化の醸成と、そのための人事制度の刷新が不可欠になってきます。 これには、経営トップの覚悟が再び問われることになります。企業では、新しい挑戦を評価しようとしても、結局は短期的な売上目標を達成した社員の方が、高く評価されてしまいがちです。評価項目にいくら売上を上げたかだけではなく、どれだけ価値ある失敗をしたか、といった指標を加えるくらいの抜本的な変革が必要になります。価値ある失敗の数、それくらいやらないと、誰もリスクを取らなくなるものです。 デジタル化の台頭により、この覚悟の重要性を強調していきます。デジタル技術の陳腐化は、あまりにも早いものであります。だから、一度やれば十分というものではありません。経営トップが、自分はデジタルに疎いと認め、若手の意見に耳を傾け、彼らに権限を委譲する。そして、彼らの失敗を許容する。これができない企業は、あっという間に時代に取り残されると警鐘を鳴らしていきます。意思決定の難しさもあります。 情報が多すぎても少なすぎても判断は鈍ります。過去の成功体験が、今の正しい判断を邪魔することもあります。そこで、解決策として提案されるのが、仮説思考の訓練であります。これは、単に思いつきで行動することとは違います。例えば、新しいAI技術を使えば、顧客サポート業務をどのように効率化できるかという仮説を立てる。次にそれを,まとめ上げて、社内やお客様に話してみるのです。すると、そのアイデアは良いけど、リスクはないかとか、それなら、このような技術の方が良くないかとか、フィードバックがもらえます。この小さな検証を繰り返すことで、仮説の精度が徐々に上がっていきます。大きく失敗する前に、小さく軌道を修正していき、それが変化の速い時代における意思決定の方法でもあります。 ブランドを強化するブランディングというのは、結局自分たちは何者で、どこへ向かうのかという一本の壮大な物語を、社内外に対して手を変え、ひねを変え、語り続ける営みでもあります。そして、その物語は、経営陣だけで作るのではなく、社員一人一人の小さな挑戦や、失敗して、そこからの学びによって、より豊かになっていくものでもあります。その物語の核となるのが、ブランドパーパス、つまり事業の存在意義であります。かつては、「顧客のため」という視点が中心でもありましたが、現在では、それだけでは足りません。社会や地域、世界規模といったより広い視点に立って、我々が存在する意味は何かを語る必要があります。 このパーパスが明確であればあるほど、社員は日々の業務に大きな意味を見出すことができます。その物語をより具体的に組織の形として示していくのが未来の組織図という考え方にもなります。企業のストーリーには当然始まり、つまり創業のきっかけがあり、目指す姿があるわけです。この目指す姿の絵、つまり未来のビジョンを、具体的な組織図のレベルまで落とし込んで描いてみることです。五年後、十年後、我々の会社はどんな部署ができていて、社員はどんな役割を担って、どのような表情で働いているのか。この未来図を共有することで、経営者も社員も現在地からたどり着くとこまでの道のりを具体的にイメージできるようになります。自社のストーリーを他人ごとではなく、自分ごととして語れるようになるということです。それができれば、どんな時代や環境の変化があろうとも常に社会や顧客が満足する付加価値を提供し続けられることになります。そのような企業は、永続への道を開くことができます。これが、戦略論とリーダー論における共通した結論ということになります。 ブランディングとは、まず、経営トップがエンジンとなって未来を語る覚悟を決めることから始まります。そして、その情熱をインナーブランディングという仕組みを通じて組織全体に浸透させ、社員一人一人が挑戦と,価値ある失敗をできる文化と評価制度を整える、その結果として生まれる一貫した行動こそが、社会からの信頼と共感、つまり、本物のブランド力を築き上げる、ということになります。

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なぜ、あの社長には優秀な人材が集まるのか

251229 なぜ、あの社長には優秀な人材が集まるのか 人材を惹きつけるリーダーシップと組織文化について説明していきます。 超一流のリーダーは、人が集まりたくなる舞台を作ることを意識します。普通は逆に考えます。まず優秀な役者を探して、その人たちに合った舞台を考える。しかし、私は逆の考えです。先に舞台を作り、それが大事になります。この逆転の発想が何を意味するのかを説明していきます。 リーダーの最も重要な仕事は、未来づくりと仲間づくり、この2つに集約されます。リーダーが語る未来のビジョンについて、こんな未来を実現したいんだという思い。それに対して周りがどう心を動かされるか。そこが全てということになります。この人の夢を応援したいや、この会社とならなんか面白いことができそうだとか、そういう感情的な共感が人を惹きつける力になるというわけです。ロジックで説明するのではなく、感情で共感してもらうことになります。 自分が今いる組織を思い浮かべてみてください。リーダーはWhyなぜやるのかを語っていますか。それともHowどうやるのかという指示をばかりをしていますか。その違いは大きいものです。日々の仕事の楽しさに直結します。要点は、Howの前にWhyを伝える重要性です。つまり、我々の存在意義や社会に対する約束、それを共有することで仕事がただのタスクではなくなります。自分が参加している壮大な物語の一部へと変わります。 その時、人は自律的に、そして創造的に動き始めます。そのストーリーに本物感を与えることが大切になり、私は創業時の精神を大切にして、社会や顧客からの信頼に応え続ける、そういう一貫した姿勢をもちます。口先だけの美辞麗空はすぐに見抜かれてしまいます。行動が伴わないWhyは、いわば空虚なスローガンしかありません。日々の小さな意思決定の中に、そのWhyがしっかりと反映されているか、その積み重ねが揺るぎない信頼になり、つまり本物感を創出するということになります。Whyで感情に訴えるのが一番であります。その思いをどうやって具体的に形にして、社内外の優秀な人たちを巻き込んでいきます。 自社の商品を売る前に、まず価値観を共有する仲間を集めるための魅力的な場面や物語を創造する戦略です。商品も売る前に仲間を集めます。その場のテーマを、社会課題というより大きな視点から捉えていきます。例えば、地域の過疎化を繰り止めたいとか、未来の子どもたちのために持続可能な環境を作りたいとか、誰もがそれは大事だと思えるテーマで舞台を作ります。 その舞台が魅力的であれば、同じ問題意識を持つ人々が、顧客や社員やそういう垣根を越えて自然と集まってきます。そして、その集まった人たちの前で、自社がこの課題、我々ならこう解決できますと主役として登場していきます。先に、観客と,共演者を集めて、そこに満を持して主役が登場するみたいになります。社会課題への取り組みが、企業にとって短期的な利益のための本質ではなく、心からWhyに基づいていて、もしそれが本物なら、その活動は一貫性を持ちます。長期的に継続されます。人々はその一貫性を見て本物かどうか判断して、口先だけならすぐに見抜かれてしまいますから、本物かどうか試されるわけです。 ある企業が,消費者インタビューから人々は人とのつながりに飢えているという仮説を立てました。そして自社の古いという一見ネガティブな特徴を昭和の懐かしさとか人の温かさを体感できるという新しい価値、つまり新しい舞台に転換しました。これは見事な発想の転換です。弱みが最大の強みになるという素晴らしいことです。リフレーミングです。これは自社の資産を深く理解しているからこそできる芸当でもあります。さらに大きなスケールではトップ自らが感じ、良い暮らしと社会という壮大な舞台を作り上げた企業の例も挙げられています。こうなると、個々の商品をいちいち説明する必要がなくなります。その舞台に参加することで、世界観の一部になること自体が、消費者にとって価値になる企業の思想がブランドそのものになります。 次に、どうやって人の熱量を維持して高めていくのか。社員一人一人を主役として扱うことが大事になります。会社の目指す未来、つまりWhyを体現しているような人材を意図的に引き上げていきます。そしてその活躍を社内に広く共有して、あの人のようになりたいとか、ああいう働き方を目指すような具体的なロールモデルを提示するわけです。一人の英雄の物語がみんなの物語になっていきます。例えば、ある社員がお客さんのためにマニュアルにない対応をして非常に喜ばれたという話を、ただ美談で終わらせません。それを社内報の記事にしたり、全社会議で本人に直接語ってもらったりして、これが主役にするという具体的なアクションです。誰を主役として取り上げるかで、会社が本当に大切にしているという無言のでも強いメッセージになります。社員本人のストーリーを友人や知人のネットワークを通じて広げていくことも推奨していきます。これは今の時代ならではのアプローチでもあります。会社の公式発表よりも周囲の人のネットワークを通じて信頼できるという感覚は誰にでもあります。会社のメッセージをより信頼性の高い個人の物語として広めるために、これは強力な手法です。 ただ、この社員を主役にする戦略には難しさもあります。誰を主役に選ぶかという社内人事関係の問題とか、主役になれなかった社員のモチベーションをどう保つとか、その課題は必ず出てきます。そこがまさにリーダーの腕の見せ所になります。 大切なのは、特定のスタープレイヤーだけを称賛するのではなく、様々な形で貢献している多様な社員にスポットライトを当てるということです。そして、英雄の物語をあの人は特別だからで終わらせず、彼の行動は我々のホワイを体現している。皆さんもそれぞれの持ち場で実践できるはずだと。全社員の行動につなげるメッセージを発信し続けることです。そして、この文化を根付かせるために、トップがすべきこととして、こだわりと割り切りを考え抜き、日々の対話でしっかりと浸透させることが重要であります。トップダウンの命令だけではなく、対話を通じた丁寧な浸透が大切であります。これもWhyの共有に通じます。こだわりは会社の根幹であるWhyや価値観、絶対に譲れない部分です。割り切りというのはそれ以外をHOW、つまり具体的なやり方の部分です。Whyには徹底的にこだわることをして、HOWは現場の社員を信頼して大胆に任せる。そのメリハリが、社員の当事者意識とクリエイティビティを引き出す上で非常に重要になります。 これらすべてを実践できるリーダーには、一体どんな資質が求められるのでしょうか。どんな状況でもブレない一貫性と、やはり本物感です。そしてもう一つ非常に重要なのが「人間くさいHow」という表現です。人間くさいHow、洗練されたスマートなHowではなく、これは人の意識や,行動にどう働きかけるかという非常に人間的なアプローチの重要性を示しています。机上の空論や綺麗な理屈だけでは人の心は動きません。多様な価値観を持つ人々の感情の機微を察し、時にはぶつかり合いながら信頼を築き、行動を促していきます。その泥臭くて試行錯誤に満ちた生々しいプロセスこそが成果を生む鍵でもあります。つまり、完璧でスマートな戦略家であることよりも、少し不器用でも人の心に寄り添える共感力のある人間であることの方が重要であります。結局のところ、どんなに立派なWhyを掲げて、どんなに巧妙な舞台を用意しても最後の最後で多くの仲間を巻き込めるかどうかはあの人が言うなら信じてみようとか、この人と一緒なら苦労も楽しそうだと周りに思わせるその人自身の魅力にかかっています。共感と信頼の,最終的な価値はそこにあります。今の日本には、そうした力強い言葉を持つリーダーがもっと必要だと、そういう考えがあります。 まず、なぜやるのかという根源的な問いから始めて、人々が思わず参加したくなる魅力的な舞台を築きます。そして仲間になった社員たちをその物語を英雄にする。これが優秀な人材を惹きつけて離さない、リーダーシップの様態とも言えます。 自社が本気で取り組むべき社会課題、それを解決するための舞台をどう構想するのか、しっかりと考えていきます。自社の技術やブランド、人の知恵といった無形の資産を棚卸しして、それを活用して人を巻き込む新しいストーリーを。考えられないか、思考を巡らしていきます。そうやって発想を広げてみると、意外なところに舞台の種が眠っている可能性が十分あります。

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251222 マネジメント力を鍛える

マネジメント力の本質と向上法について考察していきます。マネジメント能力は生まれつきの才能だと思われがちでありますが、意識とトレーニングで身についていく技術でもあります。単なるスキル論を述べるのではなく、優れたリーダーシップの根底にあるものは一体何であるか、その本質について探っていきます。 世間では、KPIやフレームワークと。という話が多くありますが、最終的に行き着く結論が「人間理解」つまり「情の深さ」というとても人間味臭い要素であります。そもそも、才能であるか、技術であるか、この議論がよく展開されていきますが、マネジメントは人を介して行う技術であると定義できます。単にプロジェクトを管理するということとは、少し,次元が違う話になります。技術である以上は向上させられるということも前提としてあります。 まず、人のことをよく知らなければ始まることではありません。つまり、人間理解です。洗練された戦略論や最新ツールを学んだとしても、それを使うのも、その影響を受けるのも、結局は感情を持った生身の人間であります。人間理解の象徴として、経営の神様、松下幸之助が挙げられます。人使いの達人とまで言われた強みは一体どこにあるのか。それは、彼が持っていた独特の人間観でありました。人をどう見るかという混沌的なスタンスです。有名な逸話があります。優秀な技術者を周囲の猛反対を押し切って全く畑違いの営業部門に移動させたという話です。普通に考えたら,かなり無謀にも聞こえます。彼はその技術者の専門スキルだけを見ていなかった。その人の物事の本質をつかんで、誰にでも分かりやすく説明するのが抜群にうまいという本質的な才能を見抜いていました。これこそが単にスキルセットで人を判断するのではなく、 その人全体を深く見て、可能性を信じる人間観の現れであります。この人間観の根底にあるべきなのが、人を愛すること。さらに踏み込んでいくと愛情ということです。愛情という言葉がビジネスの文脈に出てくると、少しふわっとした精神論みたいに聞こえてしまう部分もあります。 愛情は決して感傷的な話ではありません。むしろ相手の成功を心から願って、そのためなら厳しいフィードバックも厭わないという本気の関与を指しています。その人の表面的なスキルや経歴だけではなく、その人が,内に秘めている可能性や、本人すら気づいていない強みを本気で引き出してあげたいと願うこと、その深いレベルの関心があるからこそ、その人を一方の側面だけで捉えるのではなく、人と人をつなぐ才能がある、みたいな常識を超えた本質が見えてきます。これが愛情と適材適所がつながるメカニズムになります。本気の関与という、深く相手を見ようとする姿勢そのものがマネジメントであります。そして、その人間理解を深めるプロセスで、人そのものも成長していきます。 人は考え方が変わることで、成長して人生が変わります。その考え方の変化を促す決定的な要因が2つあります。1つは、良書に触れることです。そしてもう1つが、自己能力を引き上げてくれる他者との出会い。非常にシンプルですけれど、志をついています。注目すべきは、どちらも自分以外の外部からの刺激であるということです。人は自分の中だけで考えていてもなかなか変われません。自分の殻を壊してくれるような本や人との出会いこそが成長の起爆剤になるというわけです。 マネージャー自身もこうした出会いを求め続ける必要もありますし、同時に部下にとっての自己能力を引き上げてくれる他者に自分自身がならなければならないということでもあります。これはなかなかタフな役割です。学び続けるものであり、同時に他者を生かすものでなければなりません。その両輪が求められるわけです。 そうした個人の成長を支える全体像として、マネジメント力が育まれるプロセスを3つの要素に分解していきます。資質、環境、そして本人の選択、この3つです。資質は、生まれ持った才能や性格、そして後天的に伸ばせる部分も含まれるとされるのが救いであります。次に環境、特に周りに目標を達成してくれるような優れた人がいるかどうかが重要であります。そして最後が本人の選択。どんな道を選ぶかという意思決定です。 資質、環境、選択、この3つはどう関係し合っているのか考えていきます。植物を育てることに例えると分かりやすいかもしれません。資質は種みたいなものです。もともとポテンシャルでもあります。そして環境は土壌や天候です。豊富豊かな土壌で太陽の光を浴びれば、種はよく育ちます。選択はどの土壌にその種をまくかとか、毎日水をやるかという農夫、その行動そのものであります。 多くの人は良い環境に恵まれないと言って嘆きますけど、良い本を手に取ることや、誰に会うか決めることや、そういう日々の小さな選択こそが自分の環境を主体的に作り出すということになります。良い選択を続ければ環境が良くなり、それが自分の質をさらに引き出してくれるというポジティブな循環がうまくいきます。逆に、悪い選択が悪い環境を呼んで、せっかくの資質を腐らせてしまうということもありえます。 これらのすべての土台に、やはりその人の人間観が透けて見えることになります。結局、出発点に戻ってきます。非常に美しい構造です。どんな本を選択するか、どんな人を素晴らしい環境だと感じるか、そのすべてに人をどう,見ているかという、その人の哲学が反映されます。だからこそ、小手先のテクニックではなく、まず自分自身の人間観を磨くことが重要だというメッセージにつながってきます。優れたマネジメント力を持つ人物とは、突き詰めれば情の深い人であり、情という言葉が結論に出てくるのは、なぜなのでしょうか。なぜなら、人は理屈だけでは動かないという、絶対的な事実に基づいているからであります。人は正論だけを言われても心が動きません。最終的には、「この人についていきたい」とか「この人のためなら頑張れる」って思わせる人間的な魅力、つまり情に引き継げられて、この情の深い人と人っていう言葉をもう少し分解すると、先ほど話した、また本気の関与ができる人ということになります。 情というのは、ただ優しいとか、感情的ということではありません。むしろ、相手の成長を心から願うからこそ、時には厳しいことも言う。部下の失敗を自分の責任として引き受ける部下が、本当にやりたいことのために、組織の壁を壊してでも道を作ってあげようとする。そういった相手に向けられた熱量のある働きかけそのものが情であります。この熱量こそが、人を惹きつける求心力の源泉であり、マネジメント力の鍵を握ると結論付けています。そう考えると、目指すべきリーダー像は、生まれ持った資質があって、それに甘んじることなく、良書や人との出会いを選択して、良い環境に身を置いて、学びによって資質を高め続ける。そして、そのすべての行動の根底に、人への愛情、そこから生まれてくる情の深さがあります。才能だけでも、後天的な学習だけでも、その両方を統合して人間的な深みへと昇華させていきます。それが真のマネジメントの道です。 才能か、技術かという二元論的な問いから始まった探求は、最終的に愛情や情の深さという人間的な本質へたどり着きました。マネジメント力とは、人をどう動かすかという操作的な技術ではなく、人をどう愛し、どう関わるかという自分自身の生き方そのものが問われる営みであります。

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幸せ経営のすすめ

251201 幸せ経営のすすめ 企業の幸せ経営について説明していきます。最近、どの企業からも人手不足や人が辞めてしまうという話題をよく聞きます。人的資本経営という言葉も、よく聞かれるようになりました。この「幸せ経営」について解説していきます。ポイントとなるのが「幸せだから成功する」ということです。普通は逆の考えを持ちがちです。「成功したら幸せになれる」、その逆転の発想になるというのが今回のテーマのポイントになります。   これは単なる精神論ではなく、Googleやマサチューセッツ工科大学(MIT)での最先端の組織研究による膨大なデータをもとにたどり着いた、極めて戦略的なアプローチとなります。なぜ幸せが成功につながるのか、その内容を解き明かしていきます。今、経営の世界でなぜ「幸せ」という言葉が重要になっているのか、それは企業を取り巻く環境が根本的に変わっているからです。企業は採用が難しくなり、人材が流動化している環境に置かれています。つまり、企業は選ばれる側になってしまっています。そうなると、従業員にとって、この会社で働き続けたいと思ってもらうことがとても重要になります。それに加えて、人的資本経営という流れがあります。投資家は、あの会社は従業員という資本をどれだけ大切にして成長させているのか、という視点で企業を評価するようになります。   だからこそ、従業員のエンゲージメント、つまり仕事への熱意や貢献意欲がとても重要な経営指標にもなります。そのエンゲージメントを高めるには3つの視点があります。1つ目は仕事のプロセスです。自分で工夫したり、ある程度の裁量権を持って仕事を進めることができるかということです。2つ目は人間関係です。組織やチームの中で良好な関係を保つことが大事です。そして3つ目は仕事の意義です。自分の仕事が誰かの役に立っているという実感や使命感、責任感が大事になります。この3つが満たされると、人は仕事に集中できるということになります。   そして、このことが「幸せだから成功する」という話に関連してきます。ハーバード大学のショーン・エイカー氏は、幸福優位性(ハピネスアドバンテージ)を提唱しました。幸福感の高い従業員は、そうでない従業員に比べて生産性が30%、創造性は3倍も高いというデータがあります。このデータから、従業員が幸せを感じられるチームづくりというのがとても重要になります。Googleの調査では、生産性の高いチームの条件について、個人の能力やスキルの高さは、実はそれほど重要な要素ではないということがわかりました。Googleが突き止めた5つの条件のうち、圧倒的に重要である第一位の要素が「心理的安全性」です。   心理的安全性は、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授の定義では、「このチームなら対人関係のリスクをとっても安全だと感じられる共有された信念」のことであります。「こんなことを言ったらバカにされる」とか「失敗したら怒られる」など、そういう不安を感じずに安心して発言したり、挑戦したりできる状態のことです。心理的安全性が低い職場では、人は無意識に4つの不安から自分を守ろうとします。「無知だと思われたくないから質問しない」「無能だと思われたくないからミスを報告しない」「邪魔だと思われたくないから意見を言わない」「ネガティブだと思われたくないから懸念を伝えない」。良かれと思って黙っていたり、隠してしまったりすると、チームとしては成長することはできません。良いチームほどミス報告の件数が多いという事実もあります。これは心理的安全性の高さを表しています。ミスを報告しても罰せられない、むしろ「よく報告してくれたね、学びの機会としよう」と捉えられる文化があります。   次に、心理的安全性がどのようにビジネスの結果に結びつくのか説明していきます。これはMITのダニエル・キム教授が提唱した「成功循環モデル」となります。このモデルは組織が良い結果を生み出すための因果関係を表しています。組織の良い状態は、第一に人間関係の質からスタートします。まず、お互いを尊重し合って、心理的安全性の高い関係性を築きます。すると、多様な意見が飛び交ってアイデアが生まれます。思考の質が高まります。そして、「みんなでやってみよう」という主体的で協力的な行動の質につながり、結果として「良い結果の質」が生まれることになります。良い結果が出ると、チームへの信頼や誇りが生まれて、さらに関係の質が高まります。このように好循環に入っていきます。心理的安全性があらゆる成果の出発点になります。   この心理的安全性と関係の質において注意点もあります。厳しい意見を言わなくなって、逆にパフォーマンスが落ちてしまうということも懸念されます。心理的安全性と仕事の基準の高さ、この2つは両立させて考えなければなりません。エドモンドソン教授は「心理的安全性は馴れ合いとは違う」と明確に言っています。高い基準を求めつつも、そこに向かうプロセスにおいて挑戦を歓迎するということが大事になります。短期的にはうまくいかないことでも挑戦し続けて、やがて成功につなげることが大事です。その両輪があって初めて組織は学び、成長していくことになります。だからこそ、まず土台として人間関係の質を高めることが戦略的に重要になります。   自分のチームの関係の質が良いか悪いか、客観的に判断するのは難しいと思われます。感覚だけに頼っていると改善の方向性も分かりません。そこで紹介されたのは、「幸せデザインサーベイ」のようなツールです。これは従業員の幸福度やエンゲージメントという目に見えにくいものを、定量的に見える化するためのアンケート調査です。組織の状態をコミュニティ、コミュニケーション、チームパフォーマンスの3つの側面から調査いたします。そして個人の状態を体とマインドの2つの側面から、合計5つの要素を測定します。匿名で回答できるので、従業員も本音を出しやすいといいます。さらに調査して終わりではいけません。調査だけして出てきた課題に何のフィードバックもアクションもなければ、従業員は「どうせやっても無駄だ」という失望を感じ、状況は悪化しかねません。だからこそ、見える化して、フィードバックして、対話をして、アクションを起こす。このサイクルを回し続けることが何よりも重要になります。サーベイの結果をチーム全員で共有して、自分たちのチームの強みや課題について認識し合う。対話をして具体的に行動につなげる。このような緻密な繰り返しが、少しずつ組織の体質を変えていくことになります。   導入事例の紹介もありました。埼玉慈恵病院やヤオコーのような企業は、まさにこのサイクルを実践しています。共通することは、人材教育はコストではなく投資だという考え方です。人をコストと考えるのではなく、価値創造の源泉として考え、あらゆる施策に表れていきます。メジャーリーガーの大谷翔平選手の話がありました。目標設定において、誰かの役に立ちたい、チームを勝利に導きたいという利他の心が根底にあるという分析です。   ただ「スキルを身につけろ」と言われるのと、「このスキルを身につければ、もっとチームを助けられるよ」と言われるのとでは、モチベーションは全然違います。つまり、スキルというノウハウを教える前に、まず「なぜ・何のためにやるのか」という動機を教え、火をつけることが重要だということです。これは経営も全く同じで、理念や使命感、社会にどう貢献したいかという利他の心を経営の基盤に置くことが、従業員の心を動かし、エンゲージメントを高める上で不可欠になります。   モノの満足から心の満足へという社会の変化とも一致します。そして、この心を起点にするというのは、経営者が全従業員と面談して一人一人の心に真摯に耳を傾けるとか、出てきた課題に必ず対応する、そういう非常に具体的なアクションにもつながります。それは、「会社はあなたのことを見ています」という強力なメッセージになって、信頼関係、つまり成功循環モデルの起点である関係の質を定期的に高めていくことになります。   人手不足という外部環境の変化があり、個人の幸福度が生産性を上げるという研究、そして、Googleも突き止めた心理的安全性があり、それがMITの成功循環モデルの出発点になっている。そのように関連します。そして、そのすべての根底にあるのは、「人をどう見るか」という経営の哲学やポリシーにつながっていきます。   これは企業の経営者や幹部の話だけではなく、一人一人が自分のチームや部署でできることもあるはずです。理念や使命感というと少し壮大に思われるかもしれませんが、もっと身近なレベルで考えることができるはずです。日頃からほんの小さなタスクにおいても、「それが誰かのためである」とか「これをやるとチームが少し前に進むはずだ」というように、意識的に誰かの役に立つという視点と結びつけることが大切です。仕事への取り組み方や自分自身の気持ちに小さな変化が生まれれば、そこから周囲の関係の質を変える一歩になるはずです。

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