聞き手の役割、効用
どのようなところに人間的な信頼を感じるか?この問いに対する答えは3つの分類にたどり着きます。この3つの内容をきちんと見出している人は、人間的信頼を得ることが統計的に明らかになっています。一貫性がある、根源的欲求を満たしてくれる、公欲が強い、この3つの要素を満たしてくれる人に対しては、信頼をえるとともに、ポジティブな感情を抱く傾向にあります。
根源的欲求とは、生存欲求、関係欲求、成長欲求となります。これは、人間が根源的に抱く、かなり強い欲求であります。
生存欲求は、安心安全に生きていきたい。現代社会では、お金が大きく関係します。関係欲求は、良好な関係を築きたい。人から認めてもらいたい欲求であります。成長欲求は、自分の能力を上げ、苦手を克服し、創造的、生産的であったり、さらなる可能性を追求したいという欲求です。
クレイトン・アルダファが提唱したERG理論の内容になります。これはマズローの欲求段階説をさらに深化発展させたものであります。
関係欲求は認めてほしいという欲求です。具体的には、関心を持ってほしい、気にかけてほしい、話を聞いてほしい、共感してほしい、褒めて評価してほしい、こういうことを一言で認めてほしいということになります。その相手を認める行動として、挨拶をする、関心を持つ、覚える、相手を気にかける、話を聞く、共感する、優れた点を褒める、労をねぎらう、感謝を伝える、ということがあります。返報性というものがあり、自分を認めてくれない人を認めることは難しいです。相手から認められたいなら、先に相手を認めるということが大事になります。
関係を築く上で、相手の話しを聴く(≒聞く)ことが大事になります。その聴き方としては、2つの意識と6つの聴き方で話を聴いていきます。話の場を作っていき、6つの聴き方を丁寧にやっていくと、だんだんと相手が安心して、心を開ける場ができてきます。そして、聴き方を丁寧にやっていくと、自分自身の心の状態が変わっていきます。今まであまり相手の話に興味がないと思っていたような状況でも、本当に興味が湧いてきたりします。本当に相手の話が聴きたくなったりします。相手の話を深く々,とにかく聴いていく中で、相手の話している内容の情景が思い浮かびやすくなります。相手のその時の気持ちが伝わってくるようになります。そして、このような聴き方をしていると、自分の心の状況に変化が訪れます。そういったことを通じて、自然と安心して心を開ける場ができてきます。この場ができると、今まで話してくれなかったようなことがどんどん出てくると、今まであまり会話が弾まない人がずいぶん弾むようになります。
好子と嫌子。これは行動分析学の言葉であります。好子というのは、行動の直後に出現すると、その行動を強化する刺激や出来事です。うなずき、笑顔、同意、共感、褒める、感謝、このようなものです。そして、嫌子。行動直後に出現すると、その行動を弱化させる刺激や出来事です。無表情、無視、しかめっ面、否定、怒り、苛立ち。このようなものを嫌子といいます。この「好子」と「嫌子」を使って、聴き手として、話し手に対して影響力を発揮することになります。聴き手が「嫌子」を出すと、会話に弾みようがなくなります。話し手も、話す気が失せてしまいます。聴き手が「好子」を出したり、「嫌子」を出すことによって、話し手が自分のペースで話しているうちはよいのですが、だんだんしゃべれなくなってしまいます。これが、聴き手が持つ影響力になります。よって、聴き手は「好子」と「嫌子」を意図的に出すことによって、話し手に対して影響力を発揮するというようなことができるようになるわけです。そしてこの影響力はかなり強くなります。話し手は、聴き手のリアクションにものすごく影響を受けます。
この「好子」と「嫌子」を意図的に活用していきます。特に「好子」です。会話が弾むかどうかの条件を握るのは聴き手になります。聴き手が「嫌子」を出すと、会話は弾みようがなくなります。よって、聴き手が話し手の発言に対して、笑うか、共感する。どちらかのリアクションを取ると、会話が弾むという状況が生まれます。よって、会話が弾むかどうかというのは、あくまでも聴き手のリアクションにかかっています。話し手が何を話すかではなくなります。聴き手がどういうリアクションを取るかで、会話が,弾むかどうか決まります。ですから、会話が弾むかどうかの主導権を握るのは、聴き手であり、この主導権を握り、質問で相手の話を引き出し、「好子」を出して、相手の話すという行動を強化していくわけです。それによって、聴き手として会話を弾ませるというようなことができるようになります。
話し手として会話を弾ませるというのは、なかなか大変なことです。頭の回転の速さや、知識の豊富さや、話の上手さなど、いろんな要素が求められます。しかし、聴き手として会話を弾ませるということは、相手が喜ぶ質問をして、その質問に対して答えてくれた内容に対して、「好子」を出すわけです。共感したり、相づちを打ったり、同意したり、褒めたりします。そして、その発言に対して、「好子」を出し、発言するという行動を強化した上で、さらに質問をし、話を掘り下げていきます。これを繰り返していくわけです。そうすると、話し手はどんどんしゃべってくれます。そして、会話が弾むという状況を意図的に作れるようになるわけです。
それに、会話を弾ませる方が、「好印象を持たれやすい」と、深い関係を築きやすくなります。自分が話したい話を引き出してくれて、その話を興味津々に聞いてくれて、さらに質問でその話を掘り下げてくれる。さらにその話を興味津々に聞いてくれる。こういう人はすごく好印象を持たれますので、こういう人と話をしてくれると楽しくなります。
自分の話を一切聞いてくれない。相手が一方的にずっとしゃべってくる。こういった人と、「好子」がでた話の聴き方をしてくれる人と、どちらの人とまた会いたいと思いますか。「好子」がでる聴き方をしてくれる人と思います。このような話の聴き方、会話の弾ませ方ができると、また会いたいと言われるようになります。そういうふうな状況になると、人脈がすごく広がっていきます。
一方、話し手として会話を弾ませることしか考えていないことは、一線を画す。何か沈黙が気まずいから、話をしなければ、そんなふうに考える人は多いわけですが、会話を弾ませなければ、沈黙が気まずくなり、どうするかというと、何か話さなければならないと思うのです。
話すという方法で会話を弾ませるのも、一つのアプローチですが、聴くという方法で会話を弾ませるというのも、もう一つのアプローチとしてあるわけです。そのために、質問をします。相手に話しそうになります。ですから、話し手としても聴き手としても会話を弾ませられるようになるというのが理想なわけです。
ただ、会話を弾ませるというと、自分が何かをしゃべらなければいけない。
何かしゃべるネタがないからと、頭の中で検索しても、なんだか出てこないと、出てこないと沈黙、そして沈黙が気まずい。これが続くと、人間関係が苦手みたいになってしまいます。そうではなく、相手にしゃべってもらえばいいのです。そして、その話に対して「好子」を出せばいいのです。それでまた、その質問で、さらに相手の話を掘り下げていきます。こういうふうな会話の弾ませ方の方が、楽なのです。楽であり確実です。自分が良いリアクションも、取れば、会話が弾むという状況が生まれるわけです。
このアプローチを知っていれば、話し手としても、聴き手としても、会話が弾むという状況を作れることになります。会話を弾ませる力が高まると、様々な人と,関係を深められるようになり、ビジネスの可能性も大きくなります。こういうふうな状況を意図的に作れるようになると、皆さんの可能性はすごく広がっていきます。ビジネスの可能性は、人脈に比例することもあります。幅広い人脈を持つ人というのは、いろんな話がきます。いろんなチャンスを手にしていくわけです。そういうふうな状況を作るためにも、聞き手として会話を弾ませること、この方法を知っているとできるようになっていけばよいです。
この聴き方を意識してください。この聴き方を今後、人生でできるのと、一切やらなくなるという人生では、今後の人生の展開、それから人間関係、全く違った結果になると思います。それくらい大事なことでもあります。今後も継続して、実践して、そして習慣に持っていくことです。習慣というのは、そのような聴き方を自然とすることです。そういうふうな習慣が身につくと、今後の可能性はどんどん広がっていきます。