苦しい状況にある人へのアドバイス
苦しい状況にある人には、その状況に対する意味づけを変えてあげると、そのために次の過程の質問を使うという方法があります。
「人生は学ぶべきことを学ぶために、
必要な事が起きるものだとしたら、
何を学ぶためにこと事が起きたと思いますか?」
人生は学ぶべきことを、学ぶべき必要なことが起こるものとしたら、仮定を置きます。何を学ぶためにそのことが起きたと思いますかと質問をします。大変な目に遭ってどうしようと、半分パニックみたいな状況になり、その状況では論理的な思考ができないので、話が前に進みにくいです。その時に、まず感情の状態を整えてあげなければなりません。感情の状態を整えるためにこんな質問をします。そして、その答えを本人が考えて話して、その答えに納得できた時に、苦しい状況に対する意味付けが変わるわけです。
この質問は、ポジティブな意味付けにしてくださいという意味付けを、強制的に変える質問なのです。仮定がそもそもポジティブな意味付けしかできない仮定なのです。よって、この質問をすることによって、本人は強制的にポジティブな意味付けをせざるを得ないんです。そして、そのポジティブな意味付けの意味を話してくださったら、そう思われるのであれば、きっとそうなる。きっとそうなのだと思いますよとする。あなたがそういうことを学ぶために、わざわざこんな大変なことが起きてくれているんだと思いますよとする。その意味付けを後押しするわけです。必要な学びが得られると、その状況であることを必要性がなくなるため、状況が大きく改善することがあります。

事例
私は非常に貴重な体験をしております。独立して間もない頃、会計の仕事も多く手がけていました。 ある会社からM&Aの話があり、地方のある会社を買収したいので、その会社のデューデリジェンス(財務調査)をやってほしいと依頼されたのです。その会社が本当に健全な会社なのかを調査してほしいという依頼でした。
私が調査をしたところ、その会社の決算書は財政状態が非常に良く、大きな利益が出ていました。借金はなく、潤沢な資金があります。なぜこれほど立派な会社を売却しようとするのか不思議でした。その会社には5億円の預金がありましたが、売却希望価格も5億円だというのです。5億円の貯金がある会社を5億円で売るというのは、通常では考えられません。買う側は借金もなく5億円の現金が手に入るわけですから、絶対に失敗がありません。売る側からすれば、その4倍、5倍の金額でも十分に売れるはずなのです。
理由を確認したところ、事情が分かりました。その会社の社長はまだ50代前半とお若い方でしたが、がんにかかり、余命宣告を受けていたのです。もう時間がありませんでした。だからこそ、早く会社を売却して従業員の面倒を見てほしいと考えていたのです。あまり高い金額をつけると買い手がなかなか現れないため、誰が見ても得だと思える金額を提示したとのことでした。「自分はもうすぐ亡くなるからお金をもらっても仕方がない。家族が食べていけるだけのお金はあるから、それよりも良い会社に買ってもらって、ちゃんと従業員の面倒を見てほしい」という状況だったのです。
私が財務調査に伺った際、余命宣告をされた社長とヒアリングを行い、様々なお話を聞きました。調査を終えた時、その社長から「先生、ちょっとこちらに来てもらえますか」と呼ばれました。何事かと思い、会議室を出て裏の自動販売機の前に連れて行かれました。 2人きりになった際、50代前半でリーゼント姿の、かつては血気盛んだったであろう雰囲気の社長は、末期がんで歩くのも声を出すのも辛そうなほど痩せ細っていました。
その方に、「先生、あんたの名刺に心理カウンセラーと書いてあるが、これは本当か」と尋ねられました。「本当です。そういう資格を持っています」と答えると、「だったらあんたに聞きたい。俺はがんになった。余命も幾ばくもないと言われている。どうすればいい」と聞かれたのです。
その質問をされた時、私の心に浮かんだ答えは一つでした。 「社長、あなたがその若さでわざわざがんになったことには、必ず意味があります。そのがんから何かを学びなさいということです。そして、もし必要な学びが得られたなら、もうがんで居続ける必要はなくなるので、克服できる可能性もゼロではないと思います。まずは、なぜがんになったのか、学ぶべきことがあるはずだと考えられた方がいいです」と伝えました。
その時、社長の目に光が宿るのが見えました。目に輝きがぐっと増してきたのです。そして社長は私の顔を見てこう言いました。「俺は若い頃からやんちゃをしてきて、怖い人間もいっぱい見てきた。でもな、あんたみたいな怖い人間は初めて見た」と言われました。どういう意味かは分かりませんでしたが、そのように言われたのです。
その後、財務調査は終わり、無事に買収が成立しました。 それから数年後、その会社を買い取った企業から別の財務調査の依頼がありました。担当の方とお話ししていると、「藤田さん、数年前にあの会社の買収調査をお願いしましたよね。実は、あの時の売却側の社長、がんが治ったらしいですよ」と教えてくれたのです。驚いて詳しく聞くと、今は別の会社を立ち上げて社長業に復帰しているとのことでした。
あの時、社長の目に光が宿ったのを私は確かに見ました。もしかすると、私の話を聞き入れてくださったのかもしれません。 当時は本当にもう間もなく亡くなるのではないかというお顔をされており、目に光などありませんでした。しかし、私があの話をした時、目に光が戻ったのです。「学ぶべきことを学ぶ。なぜがんになったのか、そこには必ず学ぶべきことがあるはずだ」と深く考え、その理由を見出した先に、がんを克服するという出来事が起きたのかもしれないと感じています。