公欲が持つ可能性
人間の欲求は、私欲と公欲に分けられます。私欲というのは、自分がいい思いをしたい、嫌な思いをしたくないという欲求であります。ERGの欲求は私欲に含まれます。生存欲求、関係欲求、成長欲求はいずれも私欲に含まれます。
公欲とは何ものかというと例をもとに説明していきます。道を聞かれて案内する。考えたところで自分には何のメリットもない。二度と会うことはない。にもかかわらず、教えようとします。なんとかたどり着いてもらいたいと思って教えます。なんなら自分も一緒に行きます。この動機は何なんでしょうか。自分がいい思いをしたいという動機からやっていることではありません。自分には何の見返りもない、メリットもないのはわかっている、けれどもなんとかたどり着いてもらいたいと思い一生懸命に教えるわけです。この動機こそが公欲なわけです。人間にはこのように人に喜んでもらいたい、人の役に立ちたい、社会に立ちたい。別にそこに見返りはないし、メリットもない。それもわかっているけれども、そういうふうにしたいんだという欲求があるのです。これを公欲と言います。
私欲が強すぎて公欲が弱いと、人間的信頼を得るのは難しくなってしまいます。どれだけ自分の話を聞いてくれても、どれだけ自分のことを褒めてくれても、感謝を伝えてくれても、この人は明らかに私欲が強いと公欲が弱いという人は、なかなか信頼を得るのは難しいとなります。逆に、みんなのために、世の中のためにと一生懸命頑張る人、人の面倒を見るし、別に見返りも求めてないし、そういう人は信頼を得やすいです。ただし、公欲だけっていうのも危ないわけです。私欲も大事だし、公欲も大事です。このバランスが大事になります。自分と相手のメリットは49対51くらいがいいです。相手の方が自分よりもちょっとメリットが多いんじゃないかなというぐらいがちょうどいいです。私欲と公欲のバランスが人間的信頼関係を得る上ですごく大事なところです。
この公欲が、なぜ生じるようになったのか。これは人間の本能的にかなり強い欲求になります。この欲求を抱くようになったというところに関しては、人類の歴史にその答えがあります。人類史から見た人間の脳の進化、公欲を抱くようになったというところに関しては、人類類の歴史にその答えがあります。人類の歴史は400万年から800万年と言われています。農耕牧畜が始まったのが1万年前です。ということは、人類の歴史のほとんどが狩猟で生活していたのです。よって、いまだに人間には狩猟時代の名残がかなり残っています。歴史のほとんどは狩猟だったのです。人間というのは非力な生き物です。腕力もないし、爪も鋭い牙もないし、非常に非力な生き物です。こんな非力な人間が、いろんな肉食獣がいる中で、なんとか生きながら得てきた。そして今や地球を支配するような状況になっています。なんでこんなことができるようになったかというと、その答えが分業にあります。人間という生き物は他の動物にはできないことがいくつかありますが、そのうち1つが分業です。
分業はチームを組んで1つの目的のために、それぞれの個性がバラバラに動きをすることができるこれが分業です。分業こそが人類最大の武器だったのです。そして人間は1人で生きていくことができなかったため互いに協力し合う関係を作りチームワークを発揮することで生き延びてきました。そしてチームへの貢献よりも,自らの欲を優先する個体は、チームワークを目指すため、チームから外されます。当時、チームから外されることは死を意味していました。このように、人類の歴史からチームに貢献する個体が結果として生き残ってきたということがあります。つまり、チームのため、みんなのためってやってきた個体。やってる人が結果として生き残りました。つまりみんなのため、チームのためが結果として自分のためだったのです。そうやって生き延びてくることができました。そういうふうな歴史の中で、人間の脳は誰かのためにという行為に美しさや感動を覚え、その一種を持つと脳が活性化するように進化していったということになります。みんなのために貢献することによって結果として助かってきた。こういう歴史があるので、みんなのために何かをしたい、人に喜んでもらいたい、こういう風な強い欲が生じるようになったわけです。歴史を経て、公欲が人間の本能的な欲求として備わっています。
脳の左前頭前野、おでこの部分。ここが活性化すると、集中力や論理力、想像力が高まり、幸福感を感じることが明らかになっています。
利他の心は自らの能力を上げる、人と会った時、相手の幸せを祈るという習慣は自らの可能性を引き上げることになります。情けは人のためにならず、これは情けをかけることは巡り巡って自分に返ってくるという意味ですが、脳科学的にも証明されているのです。情けをかけることによって自分の方が活性化します。しかもこれはかなり早く返ってきます。巡り巡ってどころか、もう人のために,何かをした瞬間、脳が活性化するわけです。こういうふうな個体というのを繁栄させようとしています。結局、生物の命題は種の保存です。これこそが生き物の最大の命題です。公欲がもたらす可能性は大きいです。能力も引き上げ、生命力も引き上げ、メンタルも引き上げていきます。私欲の追求ばかりしている人は病気になりやすいです。
私欲もさることながら、人に喜んでもらいたいと、社会の役に立ちたいという思いでいろんなことに取り組んでいる人は病気になりにくいです。心身ともに健康にいて、かつ高い能力を得るためには、公欲を持つことが大事なのです。
ビジネスにおいて公欲が大きく影響するところは営業であります。営業提案を受けるとき、お客様はこちらのため、思って勧めているのか、自分が儲けたいから勧めているのか、これを見極めようとします。おすすめですと言っているけど、本当に自分のことを思って勧めてくれているのか、あなたが儲けたいから勧めてくれているのか、どちらかなとシビアに見極めようとしませんか。そしてこの人は私欲、大なり公欲の人だと自分の利益のためなら嘘を言うという風に思われると、途端に信頼はなくなります。そう思った人の言葉って、もう聞く耳を持たないと思います。まるで影響力がなくなるわけです。逆にこの人は公欲大なり私欲の人だと自分の利益のために嘘を言う人ではないと思われると強い信頼を得ます。目の前の利益より信頼を積み上げた人は結果としてより大きな利益を得ることになります。またお客様からリピートされ紹介が広がりやすくなります。
管理職について
この人選をする上でも公欲の強さはよく見極める必要があります。自分のメリットのために権限を利用する。部下の手柄を自分の手柄にしようとする。自分になびく部下を高く評価する。問題が起きたときに責任逃れをしようとする。一方で公欲が強い管理職の傾向は会社の成長のために権限を行使する。部下の手柄を立てさせ,部下を引き立てる。会社の成長に貢献した部下を高く評価する。問題が起きた時に逃げずに毅然と対応する。
私欲が強い人を高い地位につけると組織は衰退します。仕事ができてかつ私欲が強い人。こういった人が組織を衰退させるケースがすごく多いです。多くの会社が同じような過ちを犯すわけです。仕事ができるからといってそういった人を昇進させてその人が私欲が強いとこういうふうな働き方をして部下がどんどん離れていって組織を崩壊させるとよくある話です。
公欲を強くするためにはどうすればいいか。公欲の強さはある意味生まれ持ったものがあります。これをいきなり強くするのはなかなか難しいかもしれませんが、何のために公欲を強くしたいのか。それは思いやりある行動を取るために公欲を強くしたいということになります。
公欲を強くするアプローチではなく、思いやりのある行動を取れるようにすれば良いのです。公欲が強い人は、自然と思いやりのある行動を取り、信頼を得ます。公欲自体を強くすることは難しいですが、思いやりのある行動を取れるようになると、思いやりのある行動を取るには、ニーズや気持ちを察する洞察力、そして相手の立場に立って考える想像力、気持ちに寄り添う共感力、そして行動に移す行動力が必要です。公欲を強くすることが難しくても、洞察力、想像力、共感力、これはアンテナを張り続けることで鍛えられます。見つける力、つまりどっかこの人いいところはないかなという、そういうアンテナを張り続けるといいところが目につくようになります。それと一緒です。この人は今どういうことを求めているのかなとか。どんな気持ちなのかなとか、そういうことにアンテナを張ると、そうすると洞察力、想像力、共感力が鍛えられます。そしてこの人はこういうことをしてほしいんだなと、こういうことをすると喜んでくれるだろうなというふうなことを見つけられたら、それを行動に移さなければいけないのです。行動力は感情を克服し、行動に移す経験を積むことにあります。成功体験を得ます。そしてセルフイメージを変えることで鍛えられます。日本人は奥ゆかしいところがあるので、こういう風な洞察力、想像力、共感力を発揮して、こういう風なことをしてあげたら喜ぶんだろうなということを思いつくことは得意であり、行動に移して思いやりのある行動を取ります。思いやりがある行動が1回でも取れたら、その後はすごくやりやすくなります。そういう体験がその後の行動を誘発するわけです。それで雰囲気も変わっていきます。行動力を身につけることも意識していきます。
公欲のレベルがあります。レベル1家族、レベル2部下やお客様、レベル3会社、レベル4業界、レベル5社会。こんなふうにレベルの高さが公欲にあります。事実として感じている公欲はどのレベルにあるのか。より大きな公欲を持つことで脳が活性化するのです。さらに成長にもつながります。富の地位を得て私欲を満たすほど心身の健康のためにはより大きな公欲、イコール志になります。社会を良くしたいというのは志です。これが必要になってきます。人の喜びを願う姿勢、公欲に基づくビジョン。これは人を惹きつけ、それを示す人のもとには人が集まります。こういった人は共感を得ます。人の喜びを願う姿勢、そして公欲に基づくビジョン。人のために、社会のために、こういうことをやっていきたいと。これ、まさに必要なレベル。そういうふうに共感を得ると、いろんな人が助けてくれます。
こういうふうな公欲が持つ力があります。今の公欲のレベルよりも上のレベルの公欲を持つことは、自分自身の可能性を広げます。脳が活性化して、そしてメンタルも強くなって、多くの人の共有・協力も得られます。自分の可能性を広げます。そして目標は自分だけでなく、周囲にも良い影響を及ぶように設定すると、この目標を達成することによって自分がこんなメリットが得られる。だから達成したいという目標設定の仕方はちょっともったいないです。そうではなく、この目標を達成すると自分がこんなメリットが得られるし、周りの方もこんなメリットが得られるという目標設定の仕方をすると脳が活性化します。周りの人の協力も安いです。そういう目標設定の仕方をすることをお勧めします。視座を高く、今の公欲のレベルよりも上の公欲のレベルを目指します。そうすることが自分自身の能力を引き上げ、より大きなスケールで物事を教えることができるようになります。多くの人から共感を得ると、その結果、自分の可能性を引き上げることになります。視座を高く、公欲のレベルというところまで意識していけば良いです。