組織の量的成長と質的成長
この組織の成長を考えるときに、多くの人は売り上げを伸ばすこと、利益を上げること、社員数を上げること、これが組織の成長だというふうに考える人もいるわけです。ただ、組織の成長というのは、売上、利益、社員数といった量的成長と組織風土や一体感など質的成長の両方から考えなければなりません。
なぜかというと、質的成長が十分でないまま、量的成長を進めていくと、一体感やチームワークのない組織が出来上がってしまいます。その結果、人間関係が希薄で、組織の雰囲気も悪く、上司は部下の面倒を見ないため、離職率が上がります。また、円滑なコミュニケーションが取りにくいため、業務効率が悪くなり、生産性や効率も悪くなります。こういう離職率が高くて、生産性や利益率が悪い、そのような組織が出来上がってしまうと、このような組織を経営することは大変になってしまいます。しかしながら、このような組織を作ってしまい苦しんでいる経営者というのは、世の中多いものです。
これらを考慮した上で、組織の成長像を明確にし、それに必要な各自の役割を伝えます。この量的成長と質的成長の両方から、組織の成長像を明確にします。そして、各自に、必要な役割を伝えます。こういうふうな組織の成長をしていかなければいけないわけです。
組織市民行動
この質的成長を考える上で、組織市民行動という言葉が非常に重要になります。これは公式の職務ではなく、評価に直接つながるものではないが、組織の成長に必要な行動ということであります。具体的に言うと、直接の部下ではない人に仕事を教えて育てます。直接の部下に仕事を教えるというのは、公式の職務です。そうではなくて、例えば違う部署の部下に仕事を教える、そして育てるということをやります。これは公式の職務ではないわけです。評価に直接つながるものではないでしょう。けれども、組織の成長には必要なことでもあります。
あるいは担当外のことでも大丈夫と言葉をかけて伝える。必ず入社した人が寂しい思いをしないように気遣うことや、後輩が仕事を進めやすくするためマニュアルを作る。メンバー同士の親睦を深めるイベントを企画する。こういうふうなことというのは公式の職部ではないわけです。あなた、これやってくださいと、言われるようなことでもありません。だから評価に直接つながることでもありません。
でも、組織の成長に必要な行動であります。このようなことを組織市民行動と言います。
こういう組織市民行動の有無が業績や生産性、離職率に大きく影響することがアメリカの研究で分かったのです。1980年代、アメリカで「組織市民行動」という言葉がブームになりました。なぜかというと、いろんな学者が研究した結果、業績の鍵を握るのは、この「組織市民行動」だということがわかったのです。
その「組織市民行動」という言葉が、アメリカから日本に、入ってきたわけですが、古き良き時代の日本では、こんな言葉が必要ではなかったのです。なぜかというと、当たり前にやってきたわけです。困った時はお互い様と言って、みんなが助け合いながら仕事をしてきた。この当たり前なことだったのです。こんな当たり前にやっていることを、組織市民行動とか、こんな言葉はいりません。なぜなら、みんなやっているんです。それが古き良き時代の日本企業だったのです。
ところが、欧米流の仕事の仕方、例えば縦割りだとか、自分たちのチームでやるというような形がどんどん入ってきて、縦割りだの、自分は自分の仕事さえすればいいとか、周りの人が困っていても、知らないとか、こういうふうな働き方がですね、だんだん浸透をしてきました。組織市民行動が薄れてきています。
今、組織が見直しされています。組織市民行動が根付いているという文化は、良い文化が根付いていることになります。組織市民行動の促進というのは、上位者の率先した実行が重要になります。この組織市民行動をいかに根付かせるのかということが、この質的成長を考える上で大事になります。組織市民行動が根付くというものが質的成長だとも言えます。