ライフワークをもつ

ライフワークをもつ

ライフワークを持つことの重要性について説明をします。まず「マネーワーク」と「ライフワーク」という考え方があります。マネーワークはお金を稼ぐための仕事です。対してライフワークは、自らの価値観に基づき生涯をかけて行う取り組みであり、人生の満足度を高めるための仕事です。マネーワークとライフワークを使い分ける必要がありますが、ライフワークには定年退職がありません。一生かけて取り組む仕事であり、引退がないのです。

65歳以上の人口の割合の推移を見ていきますと、2025年には3,677万人だったのが、2030年には3,716万人(31.2%)、2035年には3,782万人(32.8%)、2040年には3,921万人(35.3%)と、どんどん高齢者人口と割合が増えていきます。2040年には、人口の約35%が65歳以上になります。

退職後、用事がなくなると出歩かなくなり、足腰が弱まります。足が弱まるとさらに出歩かなくなり、人との接点が減って刺激も減ります。刺激が減ると認知症になりやすくなります。そして、認知症になるとお子さんに負担がかかるのです。親の介護のために会社を辞めなければならない「介護離職」の問題が出てきます。介護離職による経済損失は8兆円と言われており、2030年には9兆円に達するとも言われています。

このような状況で、日本経済は本当に大丈夫なのかという懸念が生じます。そうならないためには、退職後も「やることがある」という状況を作ることが大事になります。やることがあって人と会い、会話をして、脳への刺激を継続しながら働き続けていくわけです。心身ともに健康な状態を維持するためにも、老後や退職後に役割を持つことが重要です。そのために「ライフワーク」を持ちましょうということになります。

ライフワークは主に3つに分けて考えています。 1つ目は、収入を生む仕事(マネーワークとしての側面)。 2つ目は、趣味。 3つ目は、社会貢献です。 この3つのどれでも結構です。生涯をかけて取り組みたいと思えることを、なるべく早いうちから見つけておくことが大事です。定年退職してから始めればいいという考えではなく、40代や50代のうちから見つけておきます。気力や体力が落ちてから新しいことを始めるのは難しいため、まだ若いうちに活動を始め、その分野における経験と人脈を築き、自分を磨いた状態で定年退職を迎えるのが望ましい状況です。

すでに定年退職された方は、今からでも粘り強く、新しいやり方や経験、人脈を重ねていきましょう。これは今後の人生を豊かに歩む上で非常に大事なことです。現在は「人生90年」と言われます。60歳で引退しても、あと30年あるわけです。人生がまだ1/3も残っているのに、やることがないという状況にならないためにも、定年後も「自分は忙しいんだ」「やることがあるんだ」という状態を維持しましょう。

また、貧困の問題についても触れます。「相対的貧困」とは、国民の可処分所得の中央値の半分以下で生活している状態を指します。2021年のデータでは、等価可処分所得の中央値は約254万円であり、その半分の127万円が相対的貧困の基準となります。単身世帯では世帯年収が約125万円未満、3人世帯では世帯収入が約220万円(月約18.3万円)未満の場合、相対的貧困に該当します。この場合、1回の食事代が100円程度になる傾向にあります。日本の相対的貧困率は15.4%で、6.5人に1人がこの状態にあります。日本は世界的に見ても貧富の差が激しく、生活が苦しい方が相当数いらっしゃるのが現実です。

次に、GDPと国際競争力の話です。日本のGDPは1980年代から2009年まで世界2位でしたが、2010年に3位となり、2023年にはドイツに抜かれて4位に落ちました。まもなくインドにも抜かれ、5位になると言われています。さらに1人あたりのGDPも、1990年の3位から2024年には36位まで下落しました。国際競争力ランキングに至っては、1990年の1位から2024年には38位まで転がり落ちるように低下し続けています。

なぜこのようになるのか、主な要因は「労働生産性を高める取り組みの遅れ」です。特にこれからはAIの進化が目覚ましく、AIをいかに業務に取り入れて自動化・効率化していくかが生産性に大きく影響します。欧米に比べて、日本はAIを使いこなしている人の割合が非常に低く、「デジタル後進国」と言われています。AIを使いこなす国とそうでない国の間には、今後さらに大きな生産性の差が生まれるでしょう。

他にも、少子化による労働力不足、市場の縮小、高齢化による社会保障費の増額、消費の停滞などが日本の衰退の要因と言われています。日本の労働生産性は1時間あたり56.8ドルで、G7の中では最下位です。OECD 38カ国中の平均は76.5ドルであり、日本は29位と大きく下回っています。

生産性が低い原因としては、無駄な会議や非効率な報告資料の作成が多いことが挙げられます。「本当にこれだけの人数が参加する必要があるのか」と疑問に思うような会議や、結論が出ないまま次回に持ち越される会議が多すぎます。また、内部向けの報告資料に過度なデザインや体裁を求める文化も問題です。内容が明確であれば十分なところに時間をかけても、付加価値は生まれません。こうした古い慣習を簡素化し、DX(デジタルトランスフォーメーション)や自動化を進める必要があります。

さらに、日本には「良いものを安く売ろうとする」傾向があります。手間とコストをかけたものを安く売れば、利益は出ません。GDPは企業の付加価値(売上総利益)の合計ですから、利益が出なければGDPも増えません。良いものは高く売る努力が必要です。欧米の国々は「ブランド」を構築して高く売る技術に長けていますが、日本人は作る技術はあっても、価値を高く見せる努力が苦手です。ここにはまだ伸びしろがあります。

組織のあり方も重要です。上司の言う通りにするだけでなく、より効率的な方法を考えるべきです。デンマークでは上司と部下がフラットなパートナー関係にあり、目的のために最善の意見を出し合います。そこで重要なのが「心理的安全性」です。これは自由闊達に意見が言える環境のことです。Googleの研究でも、業績の良いチームは心理的安全性が確保されていることが分かっています。

上司がデジタルに疎く、AIも使わずに「今まで通りの方法でやれ」と部下の意見を封じるような旧態依然とした組織では、生産性は上がりません。

最後に、少子高齢化の影響についてです。合計特殊出生率が2.07を下回ると人口は減少しますが、日本は1.26です。また、高齢化率において日本は世界1位と言えます。モナコが35.7%で数値上は1位ですが、人口規模が違いすぎるため、大きな国の中では日本が突出しています。

高齢者は消費を控える傾向があるため、国内需要が減り、景気に悪影響を与えます。それにもかかわらず、60歳以上が保有する金融資産の割合は、2035年には70%を超えると予測されています。富の7割を高齢者が持ち、若い世代が少ない資産でやりくりしている状況です。

現在、子供の9人に1人が貧困に苦しみ、企業の半数で後継者が不在、GDPも国際競争力も下がり続けています。このままでは孫の世代の日本は決して明るくありません。

だからこそ、少しずつでもできることを始めるのが重要です。まずは日本の現状を知り、周囲に伝えてください。現状を知らなければ必要性を感じられません。その上で、自分ならどのようなライフワークを持ちたいか、情報を集めてイメージをまとめておく必要があります。

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